麻黄湯の活用を!!:新型インフルエンザ、ワクチンはトップ・プライオリティか!?

新型インフルエンザワクチンは、新型インフルエンザにしか効果はありません。従って、季節型のインフルエンザ、あるいは一般的なカゼなどに対しては、なんの効果もありません。それどころか、むしろ、新型インフルエンザ以外の感染症にかかった場合、症状が悪化する恐れがあることを否定できません。

ワクチンは、予防といえども病原体であり、投与すれば生体内で免疫反応がおこります。もし季節型のインフルエンザが流行してしまったら、新型インフルエンザワクチンを接種したことによって、季節型のインフルエンザウイルスに打ち勝つだけの免疫力がなくなる場合があるのです。一般的なカゼに罹患してしまった場合も同様です。

従って、特に体力の弱い人は、新型インフルエンザワクチンを接種したために、季節型のインフルエンザや一般的なカゼが重症化しやすくなるのです。厚労省は、限られた新型インフルエンザワクチンを誰から接種していくのかその順番を検討し、日本では未承認の外国産ワクチンを輸入しようとしていますが、それが最も重要なとるべき手段であるのかどうか、また正しい方策といえるのかどうか、こうしてみると非常に疑問です。

新型インフルエンザだけが流行すると決まっていればそれで良いのですが、他に何が流行するのかわからない段階で、新型インフルエンザワクチン接種が万能であるかのように対応する厚労省の姿勢は間違っていますし、体力の弱い人に新型インフルエンザワクチンを接種する場合のリスクについて、適切なインフォメーションがなされないことも大きな問題だと思います。

そもそも健常人の場合は、新型インフルエンザや季節型のインフルエンザあるいはカゼなどにかかった時の最も効果的な対策は、家でじっとしていることです。発熱は生体防御反応のひとつであり、タミフルなどを使用して無理に解熱することは好ましくありません。厚労省は、インフルエンザに解熱剤は投与しないことと通達していますが、一方でタミフルやリレンザの使用をあおっていることも事実です。製薬会社への利益誘導ととられても、仕方がありません。

新型インフルエンザによる生活への影響を最小限に抑えるためには、電車の中など人ごみでのマスクの着用と清潔を徹底することです。そしてもし罹患してしまったら、健常人の場合は家でじっと寝ているのが、あらゆる面で得策です。

どうしても薬に頼りたければ、体質に合わせて体調を整える漢方薬を活用することが患者利益に資する確率が高いと思います。麻黄湯という漢方薬は、タミフルと同等の効果があることがわかっています。経過によっては馴染み深い葛根湯や、免疫力を高める効果のある漢方薬が、新型インフルエンザに有効です。

勿論、免疫力を高める漢方薬は、予防薬としても極めて優秀です。リスクの高いワクチンを接種するよりも、漢方薬をうまく利用することのほうが、体に優しくまたコスト面でも賢い選択といえるのではないでしょうか。例えば麻黄湯は、タミフルの1/10以下の薬価ですみます。ただし、漢方薬にも副作用があり、高血圧症など循環器疾患を持つ人や甲状腺機能に異常のある人などには麻黄湯は不適切です。漢方薬の多剤併用による過剰投与にも注意が必要です。

厚労省は、エビデンスが希薄だとして漢方薬を「医薬品」として認めようとしない傾向があります。しかし、それこそがエビデンスのない、まったく間違った認識です。漢方は、病巣だけを診るのではなく、患者さんのおかれた環境や食生活など生活全般に目をやり、崩れたバランスを元に戻し体調を整えようとする医療です。じゃぶじゃぶ水をかけて消火するのが西洋医学なら、火元を特定しコップ一杯の水で消火するのが漢方だと、日本薬科大学・丁宗鐵先生(医師)はおっしゃっています。漢方は、「病気」を治すのではなく「病人」を治す医療なのです。

民主党政権には、新型インフルエンザ対策の再考が求められます。厚労省が漢方医学者の意見にも傾聴するよう、公正中立な立場でコーディネートすべきだと思います。国民を翻弄させることのない正しい情報を適切に発信することは勿論のこと、製薬会社への利益誘導を第一義にしない国民の生活を第一に考える厚生行政へと転換していくことは、民主党に与えられた使命です。

そして更に、これまでの西洋医学一辺倒だった医療を再編成して、北里大学東洋医学研究所所長・花輪壽彦先生(医師)も提唱されているように、西洋医学と漢方とが併用する新しい日本型医療を推進していくことが必要です。特に、漢方の特性を生かし未病の段階で病気をブロックしていくことは、国民の健康を守る上でもまた医療費を抑制する上でも非常に重要なポイントになると思います。

健康を医師に丸投げしない。すなわち、街かど薬局の漢方薬なども活用したセルフメディケーションの在り方に注目し、その充実強化を図ることが、これからの日本の医療のグランドデザインの中核になるべきではないかと思います。街かど薬局の薬剤師や地域の保健師が地域住民のプライマリーケアを強力にバックアップして、国民ひとりひとりが自分の健康に責任を持ち、自己コントロールできる環境を整えていくことこそが、崩壊した医療を再建するための最重要課題であると、私は考えています。
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