新鮮野菜「トマトとオクラ」が教えてくれたこと 8月12日

8月5日発行の「週刊ダイヤモンド」は、日本国民の「食の安全」に対する、不適な挑発行為と言っても過言ではない。食品添加物や遺伝子組み換え食品、あるいは米国産牛肉等をリスクとみなす認識に、「フードファディズム」の烙印を押し、そんな消費者の認識をナンセンスだと斬り捨てているのだ。サプリメントや特定保健用食品に対する玉石混交との評価は的確であるが、味の素やコカ・コーラ、更には中国野菜を正当化する内容は、あまりにも利益第一主義である食品メーカー寄りの発言で、そこに消費者の健康への配慮は微塵も感じられない。

「動物実験で無害であることが確認された量の1/100量を『1日摂取許容量』として定め、それよりもはるかに少ない量が実際の使用基準として決められている」として、食品添加物を「悪魔フーズ」とみなす消費者の反応は過剰であると、週刊ダイヤモンドは非難する。しかし、週刊ダイヤモンドが決定的に間違っているのは、いまやありとあらゆる食品に、添加物が使用されているということを加味していない点だ。1つ1つの食材が、添加物の許容量の範囲内であったとしても、1日3食、間食や飲料も併せると、現代人は、基準値を大幅に超える添加物を、日々曝露しているのだ。

添加物や農薬・化学肥料に侵された食品の横行が、現代人にガンを激増させる大きな要因であることは、いまや否定できない事実だ。可能な限り添加物や農薬・化学肥料に侵されていない食材を摂取しようとする消費者の行為に水をさす週刊ダイヤモンドの主張は、まさに利潤追求の企業の代弁者とみなされても仕方がないものだ。旬の新鮮とれたての食材は、週刊ダイヤモンドが擁護する「味の素」を使わなくても、それだけで美味しい。化学調味料の乱用は、素材の味を引き立てるどころか、私たちの健康を明らかに阻害する。

「レモン汁や酢のほうが、歯や骨を強力に溶かす」として、コカ・コーラを飲む子どもが骨折しやすいという認識は誤っていると、週刊ダイヤモンドは主張する。更に、コカ・コーラのカロリーは100%オレンジジュースとほぼ等しいとし、コカ・コーラを飲むと「太る」という認識は迷信だとする。週刊ダイヤモンドは、多国籍企業であるコカ・コーラ社のダブルスタンダードを無視している。インドで販売されたコカ・コーラから、EU基準値の30倍を超える残留農薬や殺虫剤が検出されたこと。更に、炭酸の製造過程で発生するヘドロを、コカ・コーラはケララ州の農家に無料で配布していたが、なんとそのヘドロからは高濃度の鉛とカドミウムが検出されたという事実を、「消費者は情報に溺れている」とあえてメディアリタラシーを持ち出す以上、週刊ダイヤモンドは併せて報道しなければならなかったはずだ。

害虫をつきにくく品種改良した遺伝子組み換え食品は、農薬や除草剤の使用量が削減され、むしろ「環境にやさしい」として、週刊ダイヤモンドは遺伝子組み換え食品を正当化する。しかし、免疫力の低下やアレルギーを惹起するなど遺伝子組み換え食品の安全性は、未知数だ。遺伝子組み換え食品を摂取した世代の「子ども」への影響も、現段階ではわからない。そうである以上、食品のトレーサビリティを明確にし、遺伝子組み換えであるか否かを明示して消費者に選択肢を与えることは、絶対に必要だ。

週刊ダイヤモンドが最悪だと思うのは、「米国産牛肉というだけで危険だと判断するのは間違いだ」と主張したことだ。日本への輸出を専門としていない子牛業者に輸出許可を出したり、日本への輸出再開条件を守ることのできない検査体制の不備に問題があったにすぎず、米国産牛肉の安全性が揺らいだわけではないと週刊ダイヤモンドは主張する。鶏糞やチキンリッターなどSRM入りのレンダリングによる肉骨粉がウシに戻ることが容認され、成長ホルモンが使用される米国畜産業界の飼料規制の甘さを、週刊ダイヤモンドはまったく理解していない。たとえSRMが完全に除去されていたとしても、20ヶ月齢以下のウシの全頭検査をしない以上、日本と同等以上の安全性が確保されたとして安心して米国産牛肉を食することなどできないのだ。

米国産牛肉をはじめ食料の輸入を日本自らがストップすることは、食糧自給率40%の日本として自分で自分の首をしめるようなものだと週刊ダイヤモンドは指摘する。米国産牛肉や中国野菜の輸入を拒否することは、「食料安保」という鋭い刃が日本の喉元に突きつけられることに等しいと、週刊ダイヤモンドは主張する。しかし実際には、食料の大半を日本人は捨てている。「飽食の国・日本」の最大の課題は、食料の自立すなわち食糧自給率100%を目指すことだ。農薬や化学肥料にたよらない農業こそ、日本の農業の可能性を大きくする。他国の追随を許さない質の高い農作物は、日本人を健康へと誘うと同時に、安心・安全な無・低農薬作物は、十分な国際競争力を有することにもなるのだ。

週刊ダイヤモンドは今回の特集記事の中で、「消費者の利便性への欲求が、結果的に食の安心・安全を犠牲にしてきた。それを政府・企業・生産者に押し付けるのは、消費者のエゴだ。」との、神門善久(ごうとよしひさ)明治学院大学教授のコメントを掲載している。この言葉に、週刊ダイヤモンドの姿勢の全てが凝縮されている。食品添加物・遺伝子組み換え食品・農薬・化学肥料・米国産牛肉・中国野菜にコカ・コーラ、これら全てを肯定し、逆に注意をはらおうとする消費者を「フードファディズム」と揶揄する週刊ダイヤモンドこそ、日本の食の安心・安全に対する究極のテロリストだ。限りなく無農薬に近い農業を実践しようと努力する農家の方々への、無神経な冒涜だ。

過日、農業を営む知人が作ったトマトとオクラを、目の前で削りたての鰹節をまぶして食べた。体中のすべての細胞が生き返るほど、それはフレッシュで美味だった。毎日こんな食材に囲まれていたら、心身ともにいつまでも健康を維持できるのではないかと、しみじみ思った。添加物や農薬に頼らない、真に人と地球に優しい農業を、私は誰よりも応援したい。21世紀の日本の農業の在り方に逆行する週刊ダイヤモンドの見解は、日本の農業をおとしめるものだ。

特集記事を書いた記者に、あのトマトとオクラを食べさせてあげたいものだ。
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