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「お客様は神様」という意識は古い?

2022-10-24 20:10:54 | ビジネス

Huffpostをチェックしていたら、「時代が変わりつつあるのかな?」という印象の、記事があった。
Huffpost:注文時の「礼儀正しさ」によって値段が変わる。イギリスのカフェ、斬新な取り組みで思わぬ効果 

歌手の故三波春夫さんが「お客様は神様です」と話したことで、日本では「お客様は神様」という認識が広く定着したように思う。
三波春夫さんご自身は、多くの人が思っている意味とは違う意味で、この言葉を使われたようなのだが、言葉そのものが独り歩きをし、都合の良い解釈をされてしまった。

それが今では、暴力や金銭などを含む無理な要求などをする行為を「カスタマーハラスメント」と、呼ばれるようになった。
このような、行為そのものは要求者の自己中心的な都合であり、そのことによって企業は大きな損害を被る、という認識へとここ2、3年で変わってきている。
その背景にあるのは、「感情労働」と呼ばれる販売員や病院などの受付、コールセンターなどの仕事に携わる人たちが、心の病になってしまうことが多く、それが企業や行政にとって損害となっているからだ。

「そんなこと知ったことではない。自分はお客様で神様なのだから、自分の言うことを聞くのは当然だ」という、意識を持っているのは老若男女を問わず一定数いる。
時には「上の者を出せ!」と、要件も言わずに騒ぎ立てる輩も少なくない。
特に、若い女性が対応している時には、このようなことを平気で言う輩が目立つようだ。
このような人達の多くは「承認欲求が強いのでは?」と思ってはいるのだが、当事者となればそのような余裕などは無い。
そのような背景から登場した言葉が「カスタマーハラスメント」という言葉であり、その内容のいくつかは、犯罪行為としてみなされることも少なくはない。

これらの考え方の基本は「懲罰」を与える事によって、問題を解決していく、というものだ。
それに対して、Huffpostの記事は逆の提案になっている。
カフェで飲み物を注文するとき、丁寧な注文をすれば、その丁寧さに合わせて値引きされる、というものだからだ。
おそらく多くの人は、「値引きされる」という行為そのものは、嫌いではないと思う。
場所はカフェなのだから、自分の目の前で注文した飲み物を作ってくれる。
その過程が分かっているからこそ、値引きということが効果的なのだろう。
しかも、「丁寧な注文をする」や「丁寧な言葉を付け足す」だけで、値引かれるのだ。
注文をする客側としては、その言葉を使う抵抗感は、ぐっと下がるだろう。

逆の立場で考えてみると、「丁寧な言葉を使われる」、「丁寧な言葉をつけ加えられる」ことは、気持ちがよいはずだ。
何故なら「自分のサービスが、お客様に認められている」と、実感できるからだ。
もちろん、それだけではないと思うのだが、このような「互いに敬意を持てる関係」は、コミュニケーションを円滑にするはずだ。
コミュニケーションが円滑になれば、そこに生まれるのは「親しみと信頼」ということになるだろう。
それは企業にとって、「ブランディング」という点でも成功している、ということになる。

まだまだ日本では「お客様は神様なのだから、自分の言うことを聞いて当たり前」と思い込んでいる輩が、数多く潜んでいると感じるのだが、このような「自分の無理な主張」をしても、無理をさせた相手に対して「信頼も親しみも持てるわけではない」と思う。
「相手を自分の言いなりにさせた」という満足感だけなのでは?
そのようなことを繰り返しても、「本当の満足できるサービスを受ける」ということはできない、という社会認識を持つ時が来ているのではないだろうか?