私は最高に美しい瞬間を撮るカメラマンになりたくて、恋もお洒落も大好きなスイーツ巡りも断ち切って日夜奔走してる。今は24時間カメラのこと考えていなくちゃいけないんだと。
ある日先輩の代役で急遽カレンダー撮影のアシスタントをすることになりスタジオに着くと驚いた。
カレンダーの被写体って犬か猫だと思ってたのに、人間だった。それもただの人間ではない。
芸能人に疎い私だって顔くらいは知っているテレビに沢山出ている人気スターだった。
テレビで見るよりずっとずっとカッ・・・カッコいい~

いやカッコいいというより凄く綺麗な顔をしていた。
もう5分化粧に時間かければ良かっただろうかと、女なのに完全に男に負けてる自分にちと後悔する。足は長くて女の私の足より絶対に細そうだ、フン。
おまけにこのスターさんは綺麗な顔とは裏腹に口が悪く、付人が腹痛の為急にこれなくなったのもあるが。アシスタントの私を自分の付人のようにこき使いやがる。
性格悪すぎ!土台性格良かったら芸能界で上手く渡っていけないのかも知れないが。
カメラの世界も実力だけで上にいけるかといえばそうではない、やはりいろいろある。
好きな写真だけを撮っている訳にはいかないのだ。ご飯も食べなきゃいけないしね。
昼過ぎに女優Aが差し入れを持ってやってきた。あの二人付き合っているのか?
このツーショット写真を週刊誌に売り込んだらいくら貰えるだろうかと遂邪なことを考えてしまった(^^;
夕方には「私も近くで撮影しているの」と言って愛犬を抱えて女優Bがやってきた。
単に愛犬を見せたかったのか、彼の顔が見たかったのはよくわからないが。
このスターさんはあっちにもこっちにもいい顔して、どうやらかなりのチャラ男のようだ。テレビで見るクールだったり、爽やかな印象とは大分違う。
「今晩どう? 一緒に飲まない?」
「(へっ!?)けっ結構です!」
私にも声かけるなんて、なっなんて節操のない・・・
「彼女は行かないんだって」
なっなんだ、皆で行く話しか・・・そりゃそうだ、私を誘うわけないのに・・・自分がバカ過ぎて辛い
チャラ男だけど仕事になると顔付きが違う。カメラマンの注文に応じて瞬時に表情を作っていく。さすが役者だなと思う。
午後からの撮影に備えて準備をしながら、私はおにぎりをほおばっていた。
「美味そうだな~ 今インタビューうけてたからお昼まだなんだよね」
「こんなもんでよかったら食べます?」
「うん!」
女共もこんな日に差し入れにくれば喜ばれるだろうに。
「美味い!これ手作りだよね。やっぱ手作りは美味いや」
「よかったらサンドイッチもどうぞ」
「ヤッタッ」
尻尾降る子犬のように喜んで、口を大きく開けてサンドイッチを頬張る姿はちょっと可愛いかも。
「いつもお弁当持ち歩いているんだ」
「忙しいとき、いつでも食べれるようにです。」
どうしよう・・・一般ピーポーの私がスターと会話してる。 それに間近で見ると整いすぎた顔にドキドキしてなんか食べた気がしない。
「アシスタントの仕事って大変でしょ、女の子がやるには結構重労働でしょ」
「私体力には自信があるし、夢の為になら頑張れます」
「そういう夢に向かって邁進する女の子、好きだな(微笑)」
惚れてまうやろっ! あの顔でそんなこと言われたら、いや、私は自分というものをわかってる。落ち着こう。。。
「ラスト1枚・12月行きます! テーマは愛で!」
愛ってまた随分と抽象的な・・・
・・・パシャパシャ(シャッターを切る音)・・・
あっ・・・愛だ。。。
優しい空気が流れてそこに愛を感じた。周りにいるスタッフもとても穏やかな顔をしている。
チャラ男じゃなくて、この顔が本当の彼?とふと思ってしまう。
どっちでもいいや、この仕事も今日で終わりだもの。。。
「今晩どう? 一緒に飲まない?」
「あっハイ、行きます」
ただでお酒が飲めるんだもの~行かなきゃ損損。
久々にスカートなどはいて、いつもより5分長く化粧に時間かけてお洒落をした。
ちょっと痛いかも自分。でもこれでスターな彼に会うのは最後だもんね。
今日だけちょっと楽しんで、最後の眼の保養をして明日からはまた仕事頑張ろう~。
「こちらへどうぞ」
個室に案内された、スターともなると個室でなきゃ人目が気になってゆっくり飲めないよね。
「お待たせっ」
「他の皆さんはまだですか?」
「君と僕の二人だけど」
「はっ?」
「君の夢の話をもっと聞きたいなと思ってね」
これは夢かうつつか幻か・・・
ここから始まるのか? スターと私の恋・・・無いか。
それか弄ばれるだけなのか?私の身体・・・てそんなナイスバディじゃないし(^^;
どっちでもいい、いやどっちもないかも知れないけど。
だけど・・・もっともっとあなたのことが知りたい!
私なら、あなたの最高に美しい瞬間を撮れるはず、ううん撮りたい。
「ねえ、僕のこと好き?」
いきなり聞くか! やっぱりチャラ男だ。
「素敵な被写体だと思います」
思わずツンデレてしまった

ちょっと好きになりかけてるのに。
「よく言われるんだよね、顔だけの男って」
「それはつい見惚れちゃう顔してるから、内面見る暇がないんだと思います」
「やっぱ君って面白いね(笑)じゃあ飲もう!」
「はいっ!」
・・・ここから始まる私の恋

・・・ になるといいな
ううん、スターな彼との恋なんて有り得ないと思うけれど、誰かを好きになる気持ちは愛おしいと思う。
久々にお洒落した自分はちょっと可愛いかった。
カメラの為に恋する気持を断ち切っちゃいけないんだよね。大体そんな乾いた心じゃいい写真も撮れないよ。
私に恋する気持ちを思い出させてくれて有難う! 好きだよっスターな彼さん

end
