ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第06号、退学処分には復学規定を

2006年03月28日 | 教育関係
教育の広場、第06号、退学処分には復学規定を

(2000年10月23日発行)

 (2000年)10月19日付けの朝日新聞静岡版は、県立農業高校を退学処分さ
れた生徒の親が県を相手取って損害賠償の訴えを起こしたと報じています。

 個別的な事情が分かりませんので立ち入った批評は出来ませんが、この問
題を考える一般的な枠組みについて少し考えてみました。

 まず、その記事の中で紹介された両親の言葉は次のようになっています。
「本人の弁明を聞かず、調査が十分にされていなかった。反省する点はある
が、校長の裁量権の逸脱。家庭と協力して解決していくのが学校教育のあり
方ではないか」。

 これを読んで、私は最後の言葉にひっかかりました。これは「家庭と協力
して」とは言っていますが、実際は、要するに「悪い生徒(学ぶ姿勢の出来
ていない生徒)を良くするのが先生の仕事」という考えにつながると思いま
す。

 第04号の「学校は勉強を教える所」で述べましたように、私はこの考えに
反対です。態度の問題は家庭の仕事、勉強を教えるのが教師の仕事、という
考えです。これは確認するだけでここでは繰り返しません。

 この私の考えからしますと、現在、多くの学校で、特に退学処分の可能な
高校で、退学処分がその「悪い生徒を良くするのが先生の仕事」という間違
った世論のために躊躇されていると思います。

 ですから、この訴訟で問題になっている場合は、多分、学校がかなり我慢
して指導した末に止むなく退学処分にしたのだろうと推測します。私の考え
では、一般的には、もう少し早目に処分した方が被害が少なくて済むと思い
ます。

 次に私の考えた事は、退学処分はそれ自体が最後の目的ではなくて、やは
り本人に立ち直ってほしいのだから、立ち直って復学する手だてをきちんと
させておかなければならないということです。

 実に、日本社会ではこの「やり直しの道」が不十分だと思います。失業保
険についても、新しく何かの資格を取ったりできるように、2年間にするべ
きだという考えがあります。私はこの考えに賛成です。

 さて、退学させられた生徒を立ち直らせて復学させる方法を、と考えて思
い出したのがアメリカのやり方です。2年ほど前だったと思いますが、NH
Kで「少年法廷」というドキュメンタリーが放映されました。アメリカの多
くの州では、犯罪を犯した少年に、他の少年犯罪を裁く法廷で陪審員をさせ
、奉仕活動をさせ、反省文を書かせて、無罪扱いにして社会復帰させるとい
うのです。これで復帰した少年は他のやり方の場合より再犯率が格段に低い
というのです。そのためこれがアメリカでは広がっているそうです。

 日本でもこういうのを取り入れたらどうでしょうか。大人の陪審員制度さ
えない日本でこれをこのまま取り入れることは出来ませんが、とにかく退学
処分で終わりではなく、奉仕活動とか労働体験などをさせたり、カウンセリ
ングを受けさせたりして、復帰する道を開くことはできると思いますし、そ
うするべきだと思います。

 結論として、日本社会をもう少し公正な社会にするために次の3つの原則
を確認したいと思います。

 1、ルールを明確に定めて、そのルールを守って自由に競争するようにす
る。

 2、ルールを守らない人は処罰し、ルールを守っての競争の結果に対して
は結果責任を取らせるようにする。

 3、処罰されたり、自分で失敗した場合でも、復帰できる道を保障し、復
帰のルールを定めておく。

 私の推測では、今回の退学処分ではこの復帰のルールのなかったことだけ
が問題なのではないかと思います。