ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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教育の広場、第11号、東大教授の定年延長

2006年03月22日 | 教育関係
教育の広場、第11号、東大教授の定年延長

(2000年11月15日発行)

 東京大学の教授の定年は(2000年)現在60歳だそうです。それを2001年か
ら3年ごとに1歳ずつ段階的に延長して2013年に定年を65歳にするそうです
。この提案がかなり大きな反響を呼びましたが、一応決まったようです。こ
こでこの論争を聞いた私の考えをまとめておきたいと思います。

 東大総長の提案理由は「教員の国籍、性別、年齢による分布の多様化を図
り、欧米の大学のように60歳を超える人材を活用する」ということだそうで
す。

 それに対する反対意見は、この提案理由は欺瞞で、本当の理由は、年金支
給年齢が引き上げられているのに東大教員の他大学への再就職が難しくなっ
ていることだ、と主張しています。そして、反対者たちは、定年を延長する
と「若手の登用が遅れて研究活力が低下する」という弊害を指摘していま
す。

 私もこの東大教授OBを中心とする反対者たちの推測と反対意見は正しい
と思います。しかし、私はこの反対意見を読んでいて、その反対者たちの特
に東大教授OBの人たちが、現在私立大学教授の肩書を持っていることに注
目せざるをえませんでした。

 もし年金支給年齢が引き上げられて、しかも他大学、即ち私立大学への再
就職が難しくなってきているとするならば、東大を60歳で定年退職した人は
その後どうしたらよいのでしょうか。もしここに不安があるとするならば、
これまでに首尾よく私立大学に再就職した人に、定年延長に反対する資格が
あるのでしょうか。

 又、定年を延長すると「若手の登用が遅れて研究活力が低下する」とする
ならば、東大を定年退職した人が私立大学に再就職することは、私立大学に
おける若手の登用を妨げ、私立大学における研究活力を低下させるのではな
いのでしょうか。それとも、東大の研究活力の低下は困るけれど、私立大学
の研究活力は低下してもいいと言うのでしょうか。

 とこう考えてくると、根本的な問題は60歳を超えた大学教授のあり方であ
ることが見えてきます。そして、今回も全然議論されなかったのがこの根本
問題なのです。大学教授たちの問題考察能力はこの程度だということなので
しょう。

 60歳を超えた人が教授をしていることが「若手の登用を遅らせ研究活力を
低下させる」というのはその通りでしょう。これを認めるとするならば、大
学教授は原則としてみな60歳定年にせよ、ということになると思います。そ
して、私はこの考えに賛成です。では、その人たちは定年後、どうするべき
なのでしょうか。

 まず、60歳定年にしたら当人は本当に困るでしょうか。65歳からは年金が
もらえます。額としてもかなりのものがもらえるはずです。従って、年金支
給年齢以前だけが問題です。この間はどうしたらよいのでしょうか。私見で
は、貯金と非常勤講師の給与で十分だと思います。貯金は、定年時に退職金
をもらった時点で少なくとも数千万円はあるはずです。住宅ローンは終わり
、子供はたいてい独立していますから、大してお金はかからないはずです。
これだけの貯金があれば十分でしょう。

 その上に、60歳ならまだ働けますから、大学で非常勤講師をするとよいと
思います。給与は週に2日・4コマ(1コマ=90分の授業)で年間約 120万
円くらいになりますから、貯金の目減りを防ぐことも少しは出来ます。

ここで大切な事は、他大学に教授として再就職するのではなくて、非常勤
講師になるという点です。専任の教授になると「若手の登用を妨げる」こと
は既に確認しました。ですから今回は非常勤講師になることです。そして、
出勤を週に2日以内にすることです。私の提案の一番大切な所はここです。

 なぜこういう提案をするかと言いますと、第10号で大学教員のアルバイト
を論じた中で述べましたように、それまでは週に3日以上の授業があり、教
授会もあり、その上アルバイトなどもしたりして、一人一人の学生を大切に
する「本当の授業」が出来なかったと思うからです。

定年となり、お金の心配がなくなった今こそ、そして人生の最後を迎えた
今こそ、少ない授業を一つ一つ丁寧なものにして、一人一人の学生と心の交
流をする授業にし、若い人達に本当の学問の面白さを伝えるべきだと思いま
す。

 週に2日の授業ならこれが可能なのです。学生の意見が十分に聞けます。
それをまとめた教科通信を発行できます。これは私の経験から断言できます
。お金をためることばかり考えないで、残り少ない人生を有意義に過ごすこ
とを考えたらどうでしょうか。