口先番長前原国家戦略担当相が東日本大震災復興予算の関連性希薄事業への流用指摘に関して10月12日閣議後記者会見で発言している。
《国家戦略相 復興予算を厳しく精査し見直す考え》(NHK NEWS WEB/2011年10月12日 16時22分)
口先「被災地の人たちの心情を考えると、極めて不誠実な対応と映るし、実際にそうだ。厳しく精査し正さなければならない、ゆゆしきことだ。政府全体として、復興予算の使われ方をしっかり精査し、別の使われ方をしていたものは見直していくことが大事だ」
だから、“口先”と言われる。「精査」は予算案を決定する段階で行わなければならない、予算案国会提出の絶対前提条件とすべき政治主導の作業のはずである。
当然、「別の使われ方」をしているものはあってはならないという厳しい姿勢で、どういう使われ方をしようとしているかの精査を政治主導しなければならなかった。
だが、再度精査しなければならないということは最初の段階で政治主導の精査作業が行われなかったか、行ったとしても、厳格に行わなかったために漏れが生じたか、そのいずれかによって官僚主導の予算編成のまま、その通り抜けを許してしまったことから、被災地外の復興とは直接関係のない事業に予算を割くいびつな復興予算となったということになるはずだ。
いわば問題は予算自体の精査だけではなく、予算案決定の段階に於いて精査の政治主導が機能していたのかどうかの“精査”であって、それを行わなければ、喉元通れば暑さ忘れた頃、再び同じことを繰返すことになる。
被災地及び被災者に対する「極めて不誠実な対応」云々は、最初の精査を問題にして言うべき発言であって、そのことすら気づかない“口先”の態度こそ、被災地及び被災者に対して「極めて不誠実な対応」だと言わざるを得ない。
昨日(2012年10月12日)の当ブログ――《復興予算流用は復興予算だけのことなのか、一種の錬金術として慣用化していないか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に流用指摘に対する官僚側の正当性の弁をインターネット記事から取り上げたが、どの発言を見ても、官僚にたぶらかされたのかどうか分からないが、精査の政治主導を機能させることができないままに官僚主導が大手を振って罷り通った印象を拭うことができない。
参考のためにここに再度取り上げてみる。もし官僚にたぶらかされたとしたら、政治主導は有名無実化することになる。
「国税庁庁舎の耐震改修費」
国税庁担当者「税務署は一般の来庁者も多いので緊急性は高いと判断した。政府方針に沿っただけ」(毎日jp)
「アジア大洋州・北米諸国との青少年交流費」
〈海外から被災地などを訪ねてもらい、風評被害の防止につなげるのが狙い。〉(MSN産経)
「国内立地推進事業費補助金」の岐阜県のコンタクトレンズ工場への支援に関して。
経産省「工場が福島県や茨城県から原料を調達していることを重視した」(毎日jp)
「沖縄国道整備費計上」について。
内閣府担当者「国土の防災・減災を進める政府の基本方針に沿った。ほかの都道府県でも同じような防災事業を復興予算で計画している」
「受刑者の職業訓練費」
〈出所した受刑者の再犯防止のため、労働需要の高まっている被災地で働けるよう小型建設機械の運転資格を取らせることが目的。〉
法務省矯正局「被災地のがれき処理に小型油圧ショベルの運転手が集められていることで、他の地域で有資格者が足りなくなっていることも考えられる。その穴を埋めることも広い意味では復興支援だ」
法務省幹部「がれき処理という被災地の復興のニーズに応えられるだけでなく、被災地や周辺地域における再犯防止も期待できる。一石二鳥の意義ある事業だ」(以上毎日jp)――
「反捕鯨団体による調査捕鯨妨害対策費」
農水省「捕鯨基地がある宮城県石巻市の復興のためにも必要」(毎日jp)
水産庁「捕鯨基地がある宮城県石巻市の復興にはクジラの安定確保が欠かせない」(スポニチ)・・・・・
被災地の全体的復興は、全体的復興の各土台となるべき除染や瓦礫撤去、集団移転、漁業・農業の再生、中小産業の復活、雇用の回復等を最優先事項として初めて成り立たせることができる。
と言うことなら、復興予算と名付ける以上、全体的復興の各土台形成に直接役立つ事業の立案と立案した事業への集中的な予算投入が必須条件となる。
だが、実際はそうはなっていなかった。集中とは反対に拡散させていた。例え拡散させていた予算金額の割合が低くても、何とも思わずに拡散をつくり出していた意識こそが問題となる。
東大日本大震災からの復興に全力投入すべき予算集中への執着心の欠如を示すことになからだ。
この予算集中への執着心欠如意識は当然、復興そのものに向けた執着心欠如意識を相互反映することになるはずだ。
このような執着心欠如の相互的な意識が官僚たちだけものではなく、例え政治主導の精査を行なっていたとしても、官僚側の流用に関わる正当性を許容し、罷り通らせていたのだから、政治家たちにしても同じ穴のムジナとしなければならない。
そして復興の各場面で遅れを見せている以上、復興に向けた全力投入とは言えない執着心欠如の意識が各遅れにつながっていると批判されても、反論はできまい。
政治家たちの復興に向けた執着心欠如意識は10月11日に行われた野党からの復興予算の不適切使途問題審議の行政監視小委員会開催の呼びかけに民主党委員全員が欠席して定足数不足で流会させた、与党としての責任放棄にも現れている。
だが、マスコミが連日報道し、国民の声を無視できなくなったからだろう、政府内にも精査・検証の発言者が出たことと参院与野党逆転状況で野党が多数を占めている関係から、民主党委員全員欠席でも定足数を満たすこととが影響した否応もなしの状況を受けてのことなのだろう、参院側が参院決算委員会開催、復興予算使途問題検証で与野党一致。この一致を受けて、これも否応もなしの状況に立たされてのことなのだろう、民主党は衆院の質疑も受け入れる方針に転じたそうだ。
何と及び腰の与党及び政府の責任なのだろうか。このような姿勢からも政治主導を窺うことはできない。官僚主導を許す一因となっているに違いない。
このような及び腰の与党及び政府の責任は被災地及び被災者だけではなく、国民全体に対する「極めて不誠実な対応」であって、このような与党や政府の「極めて不誠実な対応」を国民は見逃すはずはなく、しっかりと見ていて、内閣支持率と政党支持率に影響していくはずだ。
党代表であり、内閣の最終責任者である野田首相の指導力欠如が政治主導の機能不全、官僚主導、与党及び政府としての及び腰の責任を招いていると見なければならない。
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