安倍晋三の質無視の「実体経済の中で最も大切なのは雇用」と言うトンチキ(2/28参院予算委対小川敏夫)

2017-03-06 11:17:22 | 政治

 2月28日午後1時からの参院予算委員会をNHK総合の中継で見ていたら、民進党参議院議員会長の小川敏夫が2013年に物価安定目標2%・2年程度内の達成を掲げていた日本銀行の参考人として出席していた黒田日銀総裁に対して今以て達成できていないのではないかと追及、安倍晋三に日銀総裁の責任はどう取らせるのか尋ねた。

 その答弁の中で安倍晋三は小賢しいばかりの得意顔で雇用の質を無視、「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」とトンチキな発言をしていた。

 小川敏夫は自身の国会質疑を秘書にやらせているのだろうか、あるいは速記録を取り寄せたのか、文字起こした質疑の遣り取りを何日か後に「小川敏夫 オフィシャルサイト」に載せている。その「ページ」から発言録を利用することにした。文飾は当方。
  
 小川敏夫「安倍総理、平成25年、安倍総理が総理になられたときの予算委員会でお尋ねしたところ、安倍総理はこういうふうに言っているんですよ。今回は明確に日本銀行に責任として、責任が生ずるんですよ、できるだけ早い時期に達成できなければ日本銀行の責任なんですよと2%の物価目標について言っていらっしゃる。

 できるだけ早い時期に達成できなければ日本銀行の責任だと。しかし、4年経ってもできていませんし、いつ達成できるとも言っていません。日本銀行の責任はどうやって取らせるんですか」

 安倍晋三「そのときも申し上げていると思いますが、責任というのはまさにこれは説明責任であります。(発言する者あり)いや、これは、説明責任というのは、これは、これは国際的な常識であります。言わば中央銀行が負う説明責任でありまして、言わば政府に対して説明責任を負っているということでありまして、政府の立場としては、日本銀行総裁のこの2%物価安定目標に対する遅れについての説明については了としているところであります。

 と同時に、と同時に、この2%の物価安定目標に向かってこの異次元の緩和を行っていくということは、2%という目標を達成すると同時に、実体経済に働きかけているということが大変大切です。

 実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね。民進党政権時代は10万人雇用が減っていた。しかし、我々はこれ、結果、金融政策によって170万人これ雇用は増えました。170万人雇用増えましたね。

 そして、長い間正規雇用もなかなか増えないではないかと言われておりましたが、これが今、何と、一昨年、昨年合わせて、一昨年、ずっと減っていた正規雇用が8年ぶりに、8年ぶりにプラスになった。これは、人口が減少している中では私は快挙ではないかと思いますが、これ、2年間で、2年間で何と77万人正規雇用が増えたんですよ。先ほど、皆さんのときは10万人減っていたと言いましたが、正規雇用は皆さんのときは55万人減っていたんですよ。55万人減っていたところから77万人増えたということでありまして、まさに――」

 (発言する者あり)これ、後ろの方々はもうバックベンチからどんどんどんどん、何だかこれ、テレビを御覧の方々は聞こえないかもしれませんが、すごいヤジでうるさいんですが、よっぽど私にこういう反応をされたくなかったんだと思いますけれども。言わば、2%の安定目標に、これは勿論しっかりと金融政策を進めていただき達成していただきたいと……(発言する者あり)

 山本一太委員長「静粛に願います」

 安倍晋三「達成していただきたいと思いますが、同時に、実体経済に金融政策を働きかけをしていくということも私たちは重視をしているところでございます」

 小川敏夫「今、総理が雇用のことをおっしゃられたんでこの表を出しますけど、実質賃金、安倍政権になってから下がっているんですよ、今年ちょっと上がっただけで。それから、世帯主収入、これもかなり下がっているんですよ。消費支出、がた減りですよ。上がっているのはエンゲル係数だけ。ひどい状態じゃないですか」

 小川敏夫はパネルを示して、その統計によって安倍晋三が自慢している雇用が個人生活の豊かさに役立っていないことを指摘している。

 NHKの中継ではパネルの統計ははっきり見えたが、パソコンに残しておいたYouTubの動画では小さくて読めない。小川敏夫のオフィシャルサイトにアクセスしても、民進党のサイトにアクセスしても載っていない。

 小川敏夫のツイッターの2月28日の投稿を覗くと、載っているには載っていたが、十分な拡大図とはならない。民進党は所属議員が国会質疑で政府を追及するために示したパネルの画像をサイトに1ページを設けて、そこに纏めて載せて、自由に閲覧し、利用できる情報提供のサービスぐらいはすべきだろう。

 一部の議員は自身のサイトにリンクさせる形で情報提供しているが、民進党サイトの1ページに纏めて、リンクが必要な場合はリンクの形で載せておけば、探す面倒が省ける。こういった情報提供が支持拡大に繋がるささやかキッカケとならない保証はない。

 仕方ないから、ネットから各情報を探して、小川敏夫がパネルで示したと思われる、それに近い統計をここに載せることにした。賃金に関係する統計は「厚労書」のサイトから、消費支出に関係する総務省統計は「総務省統計局」サイトからそれぞれの統計を利用することにした。


 小川敏夫が「上がっているのはエンゲル係数だけ。ひどい状態じゃないですか」と言っているエンゲル係数とは家計の消費支出に占める飲食費の割合のことだが、実質賃金は安倍晋三がアベノミクス3本の矢の経済好循環をかしましく言い立てる割には上昇と言える上昇を見せていない中にあって異次元の金融緩和を受けた株高・円安が高額所得者や大企業の懐をなお一層豊かにしたものの、株に縁のない一般生活者は円安による物価高と消費税8%増税の直撃を受けて生活上必要不可決な食費だけが増え、なお一層生活の困窮を受けざるを得ない状況に置かれていることがエンゲル係数に現れているということなのだろう。

 小川敏夫はこの点を集中的に攻めるべきだったが、最初の追及、森友学園疑惑に時間を費やして時間不足となり、日銀の異常な国債を買入れ問題と財政の健全化に悪影響を与えることになる政府の多額な国債の発行残高を端折る形で追及して、時間切れを迎えてしまった。

 2016年9月29日エントリーの当ブログ記事に、〈経済の活性状況を伝えるどのような指標を持ってこようと、一般的な国民一人ひとりの消費活動(=個人消費)が窮屈や不自由を強いられていたなら、政治は責任を果たしていると言えるだろうか。

 消費とは物質的欲求の充足のみならず、精神的欲求の充足でもあり、それらの充足によって人間は生活に於ける自己実現の主要な一部を見い出す。いわば消費は生命の活動をも意味する。

 その消費が抑えられることは生命の十全な活動を抑えられることにもなる。〉と書いた。  

 いくら安倍晋三が安倍政権になってから、「金融政策によって170万人これ雇用は増えました」と言い立てようと、雇用の質が問題となる。

 確かに正規雇用は僅かながらに増えている。《「非正規雇用」の現状と課題》厚労省)によると、2016年正規雇用者数は2015年比+51万人に対して3355万人と増加している。

 だが、それ以前は逆に漸減傾向にあった。

 非正規雇用は例外はあるものの、ここに来て増加傾向は弱まったが、2016年の非正規雇用者数は2015年比+36万人の2016万人と最も高い数字となっている。

 非正規雇用が増えている状況での正規雇用のこの増加の原因は人手不足による囲い込みが影響した止むを得ない正規雇用採用であって、アベノミクスが実体経済を活性化させた結果の、いわば景気回復の見るべき成果を遂げた結果の正規雇用数の増加というわけでは必ずしもそうではない。
 
 大企業が安倍政権発足後史上最高益を上げていると言っても、日銀の異次元の金融緩和がもたらした株高・円安恩恵の最高益であって、為替が円高に触れると、それが株安を連れ添って、たちまち企業の利益を剥落させることになる。

 このような展開は何度も見てきているはずである。

 ここに来ての僅かな賃金上昇も、円高・株安を恐れて賃金への還元を恐れている企業に対して政府が尻を叩いて渋々上げさせた官製賃金に過ぎない。

 企業のこのような心理を一般勤労者は敏感に感じ取って、少しぐらいの賃金上昇で思い切った個人消費に走ることができない。

 こういったことが原因している長引く個人消費の低迷であろう。 

 かくこのように安倍晋三が「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」と断言し、「金融政策によって170万人これ雇用は増えました」と自慢しても、本質的には雇用の質が第一番の問題となる。雇用の質が賃金の質を決め、最終的に個人消費の動向に影響を与える。

 上記画像で挙げた個人消費の動向把握の重要な統計である家計調査での消費支出が芳しい数値を示していない以上、いわば一般国民の経済活動のそもそもの出発点となる雇用の質を問題にしないでアベノミクスの成果をいくら言い立てようと、意味は一切ない。

 要するに〈実体経済の中でも最も大切なのは個人消費の指標そのものだ〉ということにしなければならない。

 2017年1月31日付「ロイター」記事は次のように書いている。  

 〈1月31日、総務省が発表した昨年12月の家計調査によると、全世帯(単身世帯除く2人以上の世帯)の消費支出は31万8488円となり、前年に比べて実質で0.3%減少した。減少は10カ月連続。生鮮食品価格の上昇継続などが消費を抑制した。〉

 記事が末尾で、〈12月の勤労者世帯の実収入は1世帯当たり92万4920円となり、前年比で実質2.3%増と2カ月連続で増加した。名目は同2.7%増だった。〉書いていながら、一般生活者は消費行動に積極的になれないでいる。

 消費支出のこの31万8488円はあくまでも平均値であって、中央値以上を占めているであろう株高と円安で大儲けした高額所得者の消費支出を除いた場合、一般生活者の平均支出額はさらに減っていく。勤労者世帯の1世帯当たりの実収入にしても同様の傾向を取る。

 パート・アルバイト・臨時雇い・期間工といった20万円前後以下の月収入の非正規雇用の場合となると、消費支出はさらに低くなって、ギリギリの窮屈な生活を送っているはずである。

 だが、安倍晋三はこういったことを一切無視して、自慢顔に「実体経済の中でも最も大切なのは何でしょうか。それは雇用ですね」と断言し、雇用を170万に増やしたことで経済の全てが円滑な状況を迎えているかのようなパフォーマンスを演じている。

 常々「経済成長こそ私の政権の最重要課題です」と言っていながら、正味の経済状況に目を向けることができないこのトンチキさである。

 自民党は昨日、3月5日に定期党大会を開催、総裁任期を連続2期6年から3期9年に延ばす党則改正を正式決定し、安倍長期政権への道を開いた。このようなトンチキに日本の進路を長期に託す。少し考えた方がいいのではないのか。

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