陸自の今回の南スーダン自衛隊「日報」騒動再燃は稲田朋美を防衛大臣の地位から追い落とすための陰謀なのか

2017-03-18 12:13:05 | 政治
 
 一度沈静化した南スーダンPKO派遣自衛隊作成の「日報」騒動が再燃した。最初は陸上自衛隊内部で情報処理に関わる手続きの混乱が今以て続いているように見えたが、単なる再燃ではなく、違う目的が隠されているのではないかと疑う目になった。

 そもそもの騒動の発端は南スーダンPKO派遣自衛隊施設部隊の南スーダン首都ジュバでの日々の活動を記録した「日報」に対する「平和新聞」編集長のフリージャーナリスト布施祐仁氏による情報公開法に基づいた開示請求から始まっている。

 以下、2016年7月の南スーダン首都ジュバでの大統領派と反大統領派の激しい戦闘と戦闘以降の情報管理に関わる動向を改めて時系列で振返ってみる。 

●2016年7月 南スーダンの首都ジュバで大統領派と反大統領派が激しい戦闘行為
         現地PKO自衛隊施設部隊はその日報(活動記録)を作成、作成後、陸自の中央即応集団司令部に報告
●2016年9月末 フリージャーナリストが情報公開法に基づいて南スーダンPKO派遣自衛隊部隊活動記録(日報)の開示請求
●2016年9月、10月を中心に上記武力衝突が「戦闘行為に当たるかどうか」の国会質疑
●2016年12月2日 陸自の中央即応集団司令部は「日報」は説明資料に使った後、廃棄したとして非開示扱い。
           開示請求に対して30日以内に対応を判断する必要上、電子データ保存の統合幕僚監部までは探索せず
          〈PKO関連文書の保存期間は原則3年。例外的に「随時発生し、短期に目的を終えるもの」は適宜廃棄が認められている。〉(時事ドットコム)  
●2016年12月12日 この日を境に自衛隊南スーダンPKO派遣部隊に駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を付与
●2016年12月26日 統合幕僚監部で電子データー化された「日報」を発見
●2017年1月27日 稲田朋美へ報告
●2017年2月7日 防衛省、「日報」の存在を公表

 公表が日報発見から1カ月と10日程かかったのは「マスキング(黒塗り)処理などを行ったため」と統合幕僚監部は公表している。

 だが、日報発見から防衛省を管理・統括する責任者である防衛相の稲田朋美への報告は1カ月を要していて、既にこの時点で防衛省の情報管理に於ける混乱を見て取ることができる。

 勿論、この混乱の最終責任は防衛省を管理・統括しきれていない稲田朋美にあるのは当然である。

 防衛省が日報の存在を公表以降マスコミ報道で分かったことは、「日報」は現地南スーダン自衛隊部隊がパソコンで作成、陸上自衛隊の「指揮システム」にある掲示板にアップロード、その掲示板からアクセス権限があれば陸上自衛隊だけではなく、防衛大臣の指揮監督を受けて陸上幕僚監部、海上幕僚監部、航空幕僚監部の事務を取り纏める防衛省内に設置されている統合幕僚監部もダウンロード可能の状態になっていて、2016年12月26日に統合幕僚監部が発見した「日報」は掲示板からダウンロードしてあったデーターだと言う。

 保存期間原則3年の例外として「随時発生し、短期に目的を終えるもの」は適宜廃棄が認められている。としても、すべての情報を廃棄してしまった場合、そのときの様々な事例や経験を他の部隊やPKOの計画立案の部署等が参考とすることも学習することも不可能となってしまうばかりか、知見として確立させることもできなくなってしまう。

 いわば掲示板なりにデーターを保存することを前提とした廃棄でなければ、それぞれの部隊の経験を情報として残すことはできない。

 残すためには情報管理に関してそういった手続きが決められていなければならない。

 だが、「日報」のデータは廃棄してしまって陸自には残っていないとした。

 この辻褄の合わない出来事を見ると、次のような疑惑が自ずと浮かんでくる。2017年9月、10月を中心に南スーダン上記武力衝突が「戦闘行為に当たるかどうか」の国会質疑が激しく展開されていた時期である。この第192回国会は臨時国会であって、2016年9月26日召集、11月30日までの66日間の予定を14日延長、さらに3日延長となって、2016年12月17日に閉会している。

 この間に「日報」が公表されていたら、安倍政権は「戦闘ではなく、武力衝突」と表現していたことに対して現地自衛隊は武力衝突を「戦闘」と表現していたことから、大騒ぎになっていたはずで ある。

 2016年12月17日の閉会から9日待って2016年12月26日に発見したことにし、それからさらに1カ月待って2017年1月27日に稲田朋美に報告したことにして、さらにマスキングに時間を要したことにして11日後の2017年2月7日に日報の存在を公表した。

 いわば鎮静期間を設けたと疑うことができる。当然、安倍晋三も稲田朋美も承知していた上で政権と防衛省の連携プレーによる情報の後出し、情報隠蔽行為という見方もできる。

 でなければ、自衛隊統括の防衛省稲田朋美に対する報告が1カ月遅れというのは解せない。

 情報の後出しや情報隠蔽行為は情報管理に対する無責任な姿勢によって生み出される。行政機関によるその無責任さは当然、国民に対する無責任さを背中合わせとしている。

 このような無責任が陸上自衛隊内で再び顔を覗かせることになった。

 陸上自衛隊は「日報」を廃棄したとしていたが、実際には陸上自衛隊が日報のデータを一貫して保管していたとマスコミが伝え始めた。

 2017年3月15日付「NHK NEWS WEB」記事から見てみる。   

 記事内容を纏めると、廃棄していたとした「日報」の電子データは実際には陸上自衛隊部隊指揮司令部の複数のコンピューターに保管されていた。このことは陸上自衛隊上層部に報告され、一旦は公表に向けた準備が進められたが、これまでの説明と矛盾するために外部には公表しない判断に傾き、先月の2月にデータを消去するよう指示が出され、消去された。

 ここに最上級の隠蔽体質を見ることができるが、記事が伝えている、〈陸上自衛隊に電子データがあることが判明したのは今年1月中旬で、陸上自衛隊部隊指揮司令部の複数のコンピューターに保管されていました。〉との文言を見ると、様相が違って見えてくる。

 南スーダンPKO派遣自衛隊部隊は現在日本が参加している唯一の国連PKO活動であり、しかも2016年12月以降、駆け付け警護と宿営地共同防衛の新任務を付与さられた初めての部隊でもあり、現在もその任務を遂行中である。

 新任務付与が南スーダンの首都ジュバで大統領派と反大統領派が激しい戦闘行為を繰り広げた2016年7月以降のことであったとしても、新任務付与の議論はその当時も国会で行われていた。 

 そのような部隊のデーターを保存したかしないか、あるいは保存してあるかないかを誰一人として記憶していなかったということはあるだろうか。

 だが、廃棄をせずに保存してあったことに今年の1月中旬に判明した。

 当然、陸上自衛隊なのか防衛省なのか、いずれかが提供したこのような事実さえも疑わなければならないことになる。

 記事が伝えている下記の発言を見ると、提供したのは防衛省内部の人間のようである。

 防衛省幹部の1人(NHKの取材に)「日報の電子データは陸上自衛隊の司令部もダウンロードし、保存していました。しかし、『いまさら出せない』となり、公表しないことになった経緯があります。いま現在、司令部のデータは消去されたと聞いています」

 陸上自衛隊トップの岡部俊哉陸上幕僚長(NHKの取材に)「日報の電子データが残っていたという話は聞いていない。司令部を探したうえでなかったという部下の報告を信じるしかない」

 防衛省幹部の1人が言っていることには矛盾が存在する。陸上自衛隊は一旦は廃棄したと公表した。例えデーターを廃棄せずに陸上自衛隊内に保存されていたとしても、2016年12月26日に統合幕僚監部で電子データー化された「日報」が発見され、公表するという経緯を踏んでいるのだから、内々に保存し続ければ済むことである。

 何も電子データの存在が判明したから、公表に向けた準備を進めた、公表したら従来の説明と矛盾することになって公表を中止した、ついでにデータまでパソコンから消去するという経緯を取る必要はまったくないはずである。

 大体が公表に向けた準備を一旦は進めたという説明自体が胡散臭い。公表すれば、従来の説明と矛盾することは初めから理解できることであり、理解しなければならない。いわば公表は従来の説明と矛盾することを最初から覚悟しなければならないし、その覚悟を公表の前提としていなければならない。

 ところが、どのような覚悟も前提としていなかった。データーの存在に気づき、公表の準備を進めた、公表した場合、従来の説明と食い違う、だから、公表を中止し、データまで消去した。

 大の大人の常識に反する、覚悟も何もなっかたことになるこのおかしな経緯は情報管理に対する無責任な姿勢が生み出す情報の後出しや情報隠蔽行為と見るだけでは片付かない。

 防衛大臣の稲田朋美は大方と同じく陸上自衛隊内の上記経緯をあるまじき情報隠蔽行為と見たのだろう、特別防衛監察の実施を指示した。

 ネットで調べると、特別防衛監察は防衛相直属の防衛監察本部が独立した立場で防衛省・自衛隊の全ての組織の不正や不履行を調査し、取締まる監察業務を役目としていると言う。

 当然、陸上自衛隊内で「日報」に関してどのような情報管理が行われていたのか、そのことに不適切な対応はなかったか、洗いザラ取調べることになるから、最初に「日報」が発見され、公表されたときの経緯と同じく政権と防衛省の連携プレーによる情報の後出し、情報隠蔽行為ではないかという疑った見方はできなくなる。

 もしも陸上自衛隊の情報管理に関わる極めて不適切な姿勢が曝露されることになった場合、行政組織としての防衛省の最高責任者であると同時に陸海空の三自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣の下で統合幕僚長を通じて自衛隊全体を統括する防衛大臣の責任に関わってくることになる。

 稲田朋美は「改善すべき点をしっかりと改善していくのが私の責任だ」と述べて、辞任を否定したとマスコミは伝えているが、辞任することにならなかったとしても、特別防衛監察の取り調べが情報管理上の妥当性を対象とする以上、稲田朋美の防衛大臣としての防衛省や自衛隊に対する統率力の程度を、あるいは人心掌握能力を否応もなしに暴くことになる可能性を考えなければならない。

 答がそこに行く着くだろうことは誰もが予想できることで、この予想から考え得るのは陸上自衛隊は稲田朋美を防衛大臣の地位から追い落とすために仕組んだおかしな経緯ではないかという疑いである。

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