原発ストレステストは菅仮免に替わって原発安全判断を丸投げにするための腹黒な遠謀術数?

2011-07-07 10:35:45 | Weblog


 
 昨日(2011年7月6日)のブログ――《菅仮免首相の国民に対するお粗末な説明責任能力・お粗末な説明責任義務を見てみる - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で、古川康佐賀県知事が玄海原発再開の最終条件として菅仮免の、いわゆる安全判断を直接会談した上で求めていたのに対して菅仮免が会談に応じないでいたことを、〈「菅の顔をホントに見たくないなら、早いことここの法案を通した方がいい」と大見得を切って再生可能エネルギー特別措置法案の成立の重要性を訴え自然エネルギー派を演じた手前、古川佐賀県知事に対して自らの口から原発の安全性、今後何年にも亘る原発の必要性を説くことは不都合が生じる説明責任義務の放棄、少なくとも回避と勘繰れないわけではない。〉と書いた。

 後になって以下のニュースを知ったのだが、海江田大臣が昨日の朝(7月6日朝)、緊急の会見を開いて全ての原発に対して新たな安全基準として「ストレステスト」を行うと発表。さらに菅仮免が昨7月6日の衆院予算委で海江田経産相が6月18日に出した、運転停止中の原発の再稼働は「安全上支障がない」とした「原発安全宣言」を巡る国会質疑の中で「ストレステスト」に言及。

 《全原発にストレステスト、地元への安全PRが狙い-焦点は玄海に》Bloomberg./2011年7月6日 19時38分)

 笠井共産党政策委員長代理「海江田経産相の安全宣言はIAEA(国際原子力機関)に提出した安全対策28項目を取った上で行ったものではない」

 海江田経産相「28項目はしっかりやる。全部を直ちにというわけにはいかないが、欧州で行っているストレステストを導入してさらに多くの人に安心してもらうということだ」

 細野豪志原発担当相「少なくとも原子力安全委員会の見解が出るまでは玄海原発の判断は保留されるものと考えている」

 菅仮免保安院の判断、経産相の判断で再稼働できる法律になっているが、国民的にはそれだけでは納得してもらうことは難しいだろう。IAEAが欧州で提唱しているストレステストを含めて玄海だけでなく、全ての原発について将来的に共通のルールでチェックできるようにしてくれと指示を出した」――

 以上の情報に接して、昨日のブログの“勘繰り”が当らずとも遠からずの印象を持つに至った。

 その何よりもの根拠は菅仮免が言った「保安院の判断、経産相の判断で再稼働できる法律になっている」の言葉である。

 「保安院の判断、経産相の判断で再稼働できる法律になっている」のだから、古川佐賀県知事は両者の判断に従って再稼動を決めればいいものを、玄海原発再起動の条件に菅仮免自身の口から安全だとする判断を求めた。

 昨7月6日夜9時からのNHK「ニュースウオッチ9」でやっていたことだが、海江田経産相が「安全宣言」を出した6月18日の翌日の6月19日に菅仮免は政府インターネットテレビで次のように発言している。

 菅仮免「きちんと安全性が、確認されたものはですね、順次、イー、稼動を、おー…して、えー、いこうじゃないか。あるいはいただきたいと。まあ、そういう趣旨のことを、あの、経産大臣が、あのー、おー、言われたわけであります。

 ですから、私も、そこはまったく同じですね」――

 少なくとも海江田経産相が再稼動を要請していた玄海原発に関しては海江田経産相同様に安全だと看做していた。

 にも関わらず、菅仮免は古川知事と会って私からも安全であることを説明しますとは言わなかった。

 ここに矛盾があるが、もし古川佐賀県知事が菅仮免の判断など求めずに法律どおりに「保安院の判断、経産相の判断」、いわば海江田経産相の6月18日の「安全宣言」なる判断に素直に従って再稼動を発表していたとしたら、そのあとになって政府が「ストレステスト」といった新たな安全基準を持ち出したなら、矛盾も矛盾、滑稽なことになる。

 いわば古川佐賀県知事が「菅総理大臣がどう考えているかが(再稼動の)判断の大事なポイントだと思う」(NHK NEWS WEB)などと、あるいは「菅直人総理にエネルギーのビジョンを尋ねたい。(再稼動の)判断に必要な要素になった」(asahi.com)などと言って菅仮免に会談を求めなかったなら、出てこなかった「ストレステスト」だということである。

 裏を返すなら、「保安院の判断、経産相の判断」=海江田経産相の「安全宣言」に関与したくなかったと言うことであろう。古川佐賀県知事が求めた菅仮免との会談と菅仮免の判断は菅仮免にとっては迷惑な余計事だったのである。

 関与してもいいという姿勢があったなら、とっくに会談に応じる方針を示していたろう。安全だとする自身の判断を回避させるために「国民的にはそれだけでは納得してもらうことは難しい」という理由を設けて、「ストレステスト」なる新しい安全基準を持ち出して、自身の判断に替えて、「ストレステスト」に再稼動の判断を任せることにした。あるいは丸投げすることにしたた。

 つまり自身の判断を回避させた。

 NHK「ニュースウオッチ9」は「ストレステスト」について次のように解説している。

 EUが福島原発事故を受けて、域内のすべての原発に対して実施し、来年6月に最終報告を提出することになっていると。

 番組はEUがいつから実施したのか触れていない。調べてみたら、3月16付の「asahi.com」記事が、〈ロイター通信によると、非核化を憲法に明記しているオーストリアのベルラコビッチ環境相が3月13日、欧州の原発について耐震性などを調べる「ストレステスト」を欧州連合(EU)各国に提案する考えを示した。〉と伝えていた。

 そして昨7月6日付「MSN産経」記事が、〈欧州連合(EU)が6月から行っている同様のテストを想定したもの〉と書いている。

 こういった情報を遅くともマスコミが報道を開始した3月16日直後から原子力安全・保安院や原子力安全委員会を筆頭に政府自体が把握していなければならないはずで、どんなテストか各種情報収集していただろうことと、EUのこういった安全対策に反して海江田経産相が古川知事との会談について「5日夕方、菅総理と相談する」(NHK NEWS WEB/2011年7月5日 14時11分)と発言していたことから分かるように従来の日本の安全基準に則った原発の再稼動を策していたことを考え併せると、遅過ぎる採用であると言うよりも、予定していなかった「ストレステスト」であり、突然持ち出した「ストレステスト」ではなかったかと疑うことができる。

 持ち出すことによって生じた菅仮免に関する状況の変化は言うまでもなく古川佐賀県知事との会談の中止であり、知事に対して行わなければならなかった菅仮免の安全判断の回避である。

 〈菅総理は6日の衆議院予算委員会で、当面、古川知事と面会する考えがないことを明らかにした。〉と「TBS」(2011年7月06日18:22)記事が伝えている。

 最終的な安全判断は菅仮免に替わって「ストレステスト」が行うことになる。

 どう考えても菅仮免は自分の口から原発の必要性を同時に訴えることになる原発は安全だとする自らの判断を示すことを避けたようにしか見えない。

 このことはNHK「ニュースウオッチ9」が伝えていた昨7月6日の原子力安全・保安院の記者会見の発言も証明してくれる。

 原子力安全・保安院「緊急対策で十分安全だと考えていますが、再度安心をしていただく、ということのためにもですね、どの程度、余裕というものがあるかということをみせていく必要があります。私は安全向上活動だというふうに思っています」

 保安院が言っている「安全向上活動」とは、単に国民に「どの程度、余裕というものがあるかということをみせていく」ための政府側の「安全向上活動」、言ってみればキャンペーンであって、原発側の「安全向上活動」という意味ではないだはずだ。

 だから、従来の「緊急対策で十分安全だと考えてい」るということが言える。いわば「ストレステスト」にさして重きを置いていない。

 絶対的に必要不可欠とは看做していないにも関わらず、新しい安全基準として持ち出した。

 もし絶対的に必要不可欠と考えたテストであるなら、遅すぎる採用であり、保安院の「緊急対策で十分安全だと考えていますが」は虚偽情報の発信となる。

 こういったことからも分かる、一旦自然エネルギー派を演じた手前、原発の必要性を同時に訴えることになる原発は安全だとする自らの判断を示すことを回避するために持ち出した「ストレステスト」であり、菅仮免に替わって原発安全判断を丸投げにするための遠謀術数といったところに違いない。

 あるいは原発を唯一の争点とした解散・総選挙を考えて、自身を有利な立場に置くための腹黒な遠謀術数かもしれない。


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