GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

悪い奴が出てこない姉ちゃんの恋人

2020-11-08 20:55:00 | MUSIC/TV/MOVIE

昨今、何かにつけクレームを入れられる時代である。

それを気にして、誰からもクレームが入らないように作ったら、こんなつまらないモノができるんだよって立証するかのようなドラマが、今クール放映されてる。

 

有村架純主演ドラマ・姉ちゃんの恋人。

早逝した両親の代わりに3人の弟たちを育てるお姉ちゃん奮闘記だ。

このドラマ、イマイチ面白く無いのだ。

2話目まで見たのだが「なんで面白く無いのだろう」の理由がさっぱりわからんかった。

 

俗に言われる肝っ魂姉ちゃんを演じる有村架純。悪くない。

有村架純は可愛いし好感も持てる。嫌いじゃないし、悪くない。

【関ヶ原】の忍者(?)は微妙だったが、【ビリギャル】のヤンキーから大学受験を目指す役はいい。

【失恋ショコラティエ】や【ようこそ我が家へ】での松本潤や相葉雅紀の妹役もいい。

【思い出のマーニー】での声もいい。

ちなみに俺はSPECの時の、竜雷太と不倫してる婦人警官役の有村架純が好きだ。

まだ売れてない頃の有村架純もいいが、主役を張れる今の有村架純もいい。

 

3人の弟たちも揃ってイケメンでいい子だ。全体の会話のテンポや、林遣都と惹かれ合うストーリー展開も別に悪く無い。

なのに、全然面白くないのだ。

来週からは別に見なくていいかなってくらいだ。

いや別に、演技下手くそだなぁって嘆く俳優がいるとか、なんか脚本グダグダやんとか、こいつ見てるとイライラするわってやつもいない。ストーリー展開も「どうせこうなるんでしょ」ってオチが見えてるってほどでもないのだよ。

でも「来週も見なくっちゃ」とはならない。ただ単につまらんのだ。

 

このツマラナイ理由が、今日地下鉄に乗ってていきなりわかった。別に付近の乗客がこのドラマのことを話してたわけではない。よくある仕事場のちょっとした愚痴を友人らしき人にこぼしてた。

それでわかった。

「このドラマには悪人が誰一人いないのだ」と。

そして思った。

「これはひょっとしてクレーム対策をしっかりしたせいなのか?」と。クレームを恐れるあまり、当たり障りのないようにしたら、こんなつまらんドラマになってしまうということか。

 

※ここから先はかなりのネタバレを含みますので、まだ見てない人、録りだめして一気観しようって人はスルーしてください。

 

まず主人公の有村架純は、目の前で両親が車にひかれて死んじゃった過去を持つ。だからといって轢いた犯人を恨んでるとかの描写はない。

高校3年生で中退し、大型ホームセンターに面接に行き「弟3人を学校卒業させるまでは絶対辞めませんから」と懇願して入社、もう9年目のベテランバイトである。

職場(売り場)の人間もいい人ばかりだ。規則や規律にうるさく嫌味ばかり言う管理職・上司は出てこない。

「嫌なら辞めちまえ。これだから中卒は・・・」とか「代わりならいくらでもこのご時世いるんだぞ」などと暴言はくパワハラ上司も、「胸、また大きくなったんじゃない?彼氏と毎晩お楽しみ?」などとセクハラ発言する上司もいない。

 

有村架純の直属上司・小池栄子は面倒見がいいし「今夜は久々に飲みに行くかぁ〜」と売り場のスタッフみんなを誘ったりする(飲みニケーション)。それに対し「僕、用事あるんで」とか「私、パス」とかウザがるスタッフは誰もいない。

涙もろい紺野まひる、表情が出ない阿南敦子、存在感の薄いスミマサノリ、ハロウィンの被り物で子供に避けられ落ち込む井阪郁巳、そして那須雄登(美 少年)。

みんな「コロナのせいで(みんなで飲みに行くの)久々ですねぇ」と賛同し、和気藹々居酒屋に向かうのだ。

 

居酒屋では「俺の酒が飲めんのかぁ」とアルハラするやつもいないし、酔った勢い(のフリ)でグチをわめく酒乱もいない。みんな楽しく飲んで「コロナのせいで一時はどうなるかと思いましたね」「やっと物流が戻ってきた感じですよね」などと会話してる。

「久々の飲み会だから晩御飯は勝手に作ってね」と弟に電話入れる有村架純。何故かテレビ電話モード。弟たちは「楽しんできなよ」と物分りがいい。それをみんなで覗き込み「みんな大きくなったね」「覚えてる?私のこと」とか言ってる。それを笑顔で答えるイケメン3人弟(King&Prince高橋海人/日向亘/南出凌嘉)。

 

一方、林遣都は有村架純の勤めてるホームセンターの物流ドライバーをしている。

なんか過去に事件を起こした訳アリみたいだが、それを承知で雇ってくれた上司の藤木直人に感謝。藤木もそれを恩に着せる気など全くないようで、トラックの助手席でウケないジョークを言っている。

 

コロナで物流が止まった時、「クビを切られたりしたらどうしようとヒヤヒヤしてた」と言う林遣都。同じく有村架純も昔からの友人の奈緒に同様のことを言っていた。

しかし、この二人の勤めるホームセンターの会社は、首を切るとか雇い止めするとかどころか、臨時のボーナスまで支給したみたいだ。どんだけホワイト会社だ。(政府から支給された給付金も有村家では4人×10万で40万円だ。)

 

林遣都が過去に起こした事件がなんなのかわからないけど、母親の和久井映見の怯えよう、心配の仕方は尋常じゃない。

その林遣都は母親想いで「大切」「大好き」「幸せにしたい」と一歩間違えたらマザコンのようなセリフを平気で言う。現在は弁当屋で働く母親の仕事場で手伝ったりもする孝行息子だ。

林遣都の保護司は光石研。2話目で有村架純の叔父さんということが判明したが、両者はそれをまだ知らない。林遣都に父親がいない理由とかを含めここら辺は今後明かされていくのだろう。

 

食べ盛りの弟たちとの朝食はいつも合宿所のよう。お姉ちゃんのバイト代だけでまかなえるのか?などと気にしちゃいけない、多分給付金のおかげだろう。(長男と次男の大学学費は?)

一番下の弟のサッカーの試合を応援しに行って、審判に「判定がおかしい」と食ってかかる有村架純。

審判にレッドカード突きつけられ退場。予想通りで呆れる弟たちだがしっかり試合後「勝ったよ〜」と連絡してくる律儀さ。サッカー部のみんなとではなく、お兄ちゃんと帰る末弟(途中でお姉ちゃんと合流)。

 

上司・小池栄子は一人飲んでたバーで藤木直人と出会う。妄想脳が渦巻き「顔に騙されちゃいけないぞ」「過去それで何回泣いたか忘れたか日南子」と自問自答しながらもウキウキ。

存在感の薄いスミマサノリさんの捨ててある椅子にあえて座るという謎インスタで盛り上がる二人。そのまま酔った勢いでホテルで一夜、翌朝シーツをまとい「またやっちゃった・・・」などという展開もないし、藤木直人が「一度抱いた女に興味はない」なんて冷たい事言う嫌な奴では当然ない。

 

小池栄子が会社ホームページ掲示板で社長へのメッセージを送ったら即レスがあるとか言ってたが、多分この藤木直人が社長だったってオチではないかと思っているがどうなんだろう。二代目とか次期社長でいろんな部署で研修中とか?

その社長への提言でGoサインが出たクルスマスプロジェクト。リーダーには有村架純が選ばれ、なぜか物流からは藤木直人の推薦で林遣都も参加ってのもね。

で、その会議で林と有村の意見が一致。二人は自然と惹かれあい始める・・・。

 

と、まぁ、ざ〜と書いたが、ラブコメであり、ホームドラマであり、ワークドラマでもあるこのドラマ、ここまで誰一人悪者が出てこない。嫌な奴が出てこない。

唯一、政府支給の給付金を「ありがたかったわぁ〜」と喜ぶ有村架純と対照的に、奈緒は親にネコババされそうになったと嘆いてた。これが唯一の嫌な奴くらいだ。

2話目終了時点で、それ以外には嫌な奴が全く出てこないし、セリフにも差別的や蔑視な言葉はない。どこにも炎上を誘発するような描写もない。

まるでクレーム対策万全ですよ。コンプライアンス尊守してますよ。と言わんばかりのドラマ。

いや、このドラマは「あんたらが言ってるように、いろんな語弊のある描写や表現を抜いて作ったら、こんな感じになってんからちゃんと見ろよ」って制作側からの挑戦状か?

 

昨今何かにつけクレームを入れる人が多い。

『個』の時代だからか、「自分こそ正義なり」と自己主張することによってアイデンティティが保てると勘違いしてる奴が増えた。

スーパーや家電売り場などで見かけるしつこいクレーマー、学校の先生に文句を言うモンスターペアレンツ、職場では「やれブラックだ、それセクハラだ、そいつはパワハラだ」。

役所や企業のポスターはアニメの女の子を使ったら「いやらしい」「ふさわしくない」「女性蔑視だ」と騒ぎ、ちょっとした表現に「差別だ」とわめく。

芸能人も有名人も政治家も、ちょっと語弊を招く言い方した途端にネットで炎上。気軽にSNS更新もしてられない。

どいつもこいつも文句を言わずにはおられない。俺の意見を聞け。私の意見が正しい。あなたは間違ってる。僕が教えてあげよう。

そんな感じの世の中だから、こんなドラマが出来上がるのかな。

 

多分このまま行くと視聴率はめっちゃ悪いはずだ。だってつまらないんだもの。

当たり障りがないってのは料理で言えば美味しくもないしまずくも無いって感じだ。そんな店には2回目わざわざ行かない。

 

往年の野島伸司ドラマなら、せっかく3話や4話で上手くいきそうになった二人(この場合は三上博史と鈴木保奈美をイメージしてもらうといい)に、邪魔をする女(横山めぐみが適任)が出てきて振り回され、どんどん歯車が繰り出すってのが定番だが、このドラマは多分そんな展開はこの先ないだろう。

淡々と飄々と、ゆっくりしたペースで進んでいくんだろうな。

視聴率を稼ぎたいなら、裏切って、3話目以降は闇展開・闇落ちってのもアリだぞ。

物分りの良い3兄弟だが実は・・・とか、和久井映見と保護司の光石研ができてた・・・とか、有村架純の両親が死んだのは林遣都が昔捕まった事件が絡んでるとか・・・。ドロドロの展開ね。

小池栄子は実は裏でマグダラのマリアとか名乗って殺人をプロデュースしてたとかどうだ。(それは「美食探偵」だ)

 

うーん、可もなく不可もなく、クレームの入らないような普通のドラマ。

結局、何やってもなんやかんや文句言う奴出るけど、文句も言えない(クレームのない)ドラマって退屈で誰も見ないのと違うのかなぁ。

変な時代だ。