週末なんだから少しはいたわってくれよー、と中共に言いたいです。上海市のトップ決定!という大型人事のニュースが飛び込んで来ました。
私は金曜日に急にまとまった仕事が入ってたくさん中国語を書かされて原稿料を荒稼ぎできたのですが、その他色々なことがあっていまはとても疲れています(前回参照)。今回はプロの方々に少し働いて頂きましょう。それでは皆さん、ドゾー。
●上海市の新トップ、浙江省書記の習氏に 新華社報道(asahi.com 2007/03/24/22:25)
http://www.asahi.com/international/update/0324/019.html
中国共産党は、汚職事件への関与の疑いで解任された上海市トップの市党委員会書記のポストに、浙江省党委書記の習近平氏(53)を任命することを決めた。国営新華社通信が24日伝えた。昨年9月に陳良宇・前市党委書記が市社会保障基金の不正流用事件をきっかけに解任された後、党委書記の職務を代行していた韓正・市長についてはその代行を解いた。(後略)
●上海市トップに習近平氏、汚職の混乱立て直し(読売新聞 2007/03/24/21:20)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070324i113.htm
(前略)習氏の任命は、昨年9月に政治局員の陳良宇・同市党委書記(当時)の解任を招いた同事件に一応の幕引きを図り、混乱した上海市を立て直して、今秋の第17回党大会を円滑に開く環境を整える狙いがある。習氏は、党長老の一人だった習仲勲・元副首相(故人)の息子。福建省長を経て、2002年11月から上海に隣接する浙江省の党委書記を務めた。次期党大会で政治局入りが有力視される“若手”実力者の一人。
●上海市トップに習近平氏=「ポスト胡」の若手指導者-汚職の混乱立て直しへ・中国(時事通信 2007/03/24/22:45)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007032400299
(前略)上海市では昨年9月に陳良宇党委書記(当時)が汚職事件で解任。胡錦濤党総書記(国家主席)は、実務派の習氏の就任で、江沢民前総書記につながる「上海閥」を抑え、汚職事件で混乱した上海市の立て直しを図る。胡氏は今後、今年秋の第17回党大会に向け、若手指導者を抜てきし、権力基盤を固める方針だ。習氏は「ポスト胡」時代を担う若手指導者。父親は党長老だった故習仲勲元副首相で、「太子党」と呼ばれる高級幹部子弟の代表格とされる。約17年間にわたり福建省で勤め、同省長などを経て2002年11月から浙江省党委書記。上海市党委書記就任で党大会では党政治局(現在24人)入りが確実になった。上海市党委書記代理を兼任していた韓正市長も近く交代する予定。
●中国:上海市新書記に習氏 胡体制強化へ浙江省から(毎日新聞東京朝刊 2007/03/25)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/archive/news/2007/03/25/20070325ddm007030069000c.html
(前略)習氏は02年11月に浙江省党委書記に就任。党長老の習仲勲元副首相(02年死去)の息子という高級幹部の子弟ではあるが、福建省を中心に地方行政官としての経験を積んできた。「ポスト胡錦濤」の第5世代を担う若手指導者の一人として注目されている。上海市は長らく、江沢民前国家主席を中心とする「上海閥」が中心となって、上海の政治を動かしてきた。しかし、昨夏、78年の改革・開放政策が始まって以来、最大の汚職事件が発覚。腐敗撲滅で党の求心力強化を狙う胡政権は若手の抜てきで政治体制の刷新を図る。
●上海市トップに習近平・党委書記 政治局入り確実に(Sankeiweb 2007/03/25/00:47)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070325/chn070325000.htm
(前略)習氏は、副首相などを歴任した故習仲勲氏の長男で、同じ党長老子息の曾慶紅国家副主席や薄煕来商務相らと近いとされる。高級幹部の子弟を意味するグループ「太子党」の代表格の一人でもあり、アモイ市長、福建省長などを経て2002年から浙江省党委書記に就任した。文化大革命中、陝西省に下放されて農業に従事した経験もあるため、農村対策に熱心なことで知られる。胡錦濤指導部が今回、清廉実直とのイメージをもつ習氏を、汚職にまみれた最大都市のトップに据えたことは、官僚の汚職に対する胡総書記の毅然とした姿勢を示す狙いもあるようだ。
率直な感想は「やっぱこれ民族戦争。トップ人事に垣間見えたは上海魂?」と、標題そのまんまです。
私は消息筋とか裏情報とかいうものを持っていませんから、楽屋裏のことはわかりません。驚いたのは、上海市のトップに起用されたのが胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共青団人脈)ではなく、アンチじゃないけど親胡錦涛派かどうかは怪しい「太子党」(二世組)だったということです。
「そこまで根深いのか。やっぱり政争じゃなくて戦争なんだなこれは」
と戦慄めいたものが走りました。……いや、楽屋裏の事情がわかりませんから勝手に驚いて戦慄しているだけなんですけどね。要するに下衆の勘繰り。
その勘繰りを続けることにします。
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「戦争」であることは陳良宇をひっ捕えるまでの段取りの緻密さと、陳良宇拘束後には芋づるの上海脱出を防ぐために武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)までが動員されて警戒に当たったという物々しさ、そして陳良宇拘束で混乱するかも知れない事態を収拾するために中央から特使がわざわざ派遣されたという異常さ、さらに党中央紀律検査委員会の特別チームが余罪や連座者摘発のため「進駐軍」として上海に大挙乗り込んだことによります。
●陳良宇失脚!世継ぎ消滅で上海閥はお家断絶の危機。(2006/09/25)
●恭順宣言に進駐軍そして戒厳令――揺れてます上海。・上(2006/09/27)
●恭順宣言に進駐軍そして戒厳令――揺れてます上海。・下(2006/09/27)
●続上海:安定団結?政変進行中だからそれは無理。(2006/09/28)
むろん、次世代を担うプリンスとされていた陳良宇の失脚で上海閥が壊滅的打撃を受けたことが最大級の衝撃。「政界に激震」なのです。
ただ、この事態の本当に深刻なところはそういう政争レベルの話ではなく、「北京人vs上海人」といったような、あたかも異民族同士の戦争という色彩を帯びていた点にあるのではないか、と勝手に戦慄した次第です。
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中国本土の反日サイトとか天下国家を語る掲示板をのぞくと、発言上のルールを箇条書きしたものが必ずあります。「やってはいけないこと」が羅列されているのですが、その中にしばしば見かけるのが、
「特定の地方を誹謗中傷したり攻撃してはいけない」
という一項。その「特定の地方」というのは往々にして「上海」なのです。中国国内では日本文化の受容度が高いという点で反日サイトの槍玉に挙げられたりするのですが、それ以前に「上海人」というのはどうも中国国内での受けが良くないようで。
上海人自身に上海=都会でお高くとまって排外的で、よそ者を田舎者扱いするような傾向は以前からありました。
私が上海に留学していた当時(1989~1990)は中国人大学生の学費がまだ政府負担でしたから、実家の経済力で付き合いがはっきり分かれるとか喧嘩するということはまずなくて、「北方人vs南方人」とか「上海人vs非上海人」という反目による取り組みがよくみられたものです。中国人学生は1部屋8人ですから、きれいに色分けされて喧嘩が起きたりしていました。
北京人と上海人のライバル意識を表現する言葉で、
「京派」(北京風味・北京気質)
「海派」(上海風味・上海気質)
という単語も古くからあります。
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陳良宇失脚によって「おれにも累が及ぶかも」と戦々恐々とした面々が官民ともにたくさんいたことでしょう。その線引きをするための「進駐軍」投入であり、ビクビクした空気を抑えるための特使派遣だったのだと思います。
ただ、それとは別に、陳良宇の評判がいかに悪かったとしても、外部から進駐軍がやってきて独立王国めいた秩序を解体していくことに上海人として反発する意識、理非を超えてこれは許せないと思う意識が一斉に頭をもたげたのではないかと。
「よそ者 vs 上海人」
「京派 vs 海派」
といった、陳良宇治世下における汚職横行の是非をすっ飛ばして噴出した感情です。いわば上海魂。これは胡錦涛をはじめとする中央の計算外だったように思います。
トップの陳良宇が失脚した後は、ナンバー2である韓正・市長が市党委員会書記代理を兼任することで穴を埋めました。この韓正は胡錦涛直系の「団派」で、要するに上海閥の牙城に胡錦涛が打ち込んだくさび役ながら、内偵支援を別とすれば陳良宇失脚までポストプレーが十分に機能した形跡はありませんし、失脚後の人心掌握を務める上でも役不足だったようです。
この線から眺めてみると、ひとつだけ腑に落ちることがあります。上海閥のひとりで最高意思決定機関の党中央政治局常務委員に名を連ねながら、健康不安説に加え陳良宇失脚で党中央政治局常務委員としての扱いを停止された観がある黄菊・副首相の不可解な行動です。
●上海に居座る黄菊&世界を不幸にするWHOトップの誕生。(2006/11/09)
陳良宇失脚後ほどない昨年10月末から2週間、黄菊は上海を離れませんでした。あるいは「上海魂」を慰撫するためだったのではないかと。
党中央政治局常務委員には呉邦国など他にも上海閥の現役指導者がいますけど、すでに干された状態にある黄菊なら上海に置いておいても目立たず、憶測を呼ぶとしても「やはり黄菊は干されている」といった解釈に落ち着きます。
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この黄菊、当ブログでは、
「政治的に心電図ピー状態」
と丁寧な扱いをされていますけど(笑)、さきの全人代(全国人民代表大会)や全国政協(全国政治協商会議)をみても、黄菊が健康不安説に加え政治的にも「心電図ピー状態」であることが改めて明らかにされたと思います。
●哀れなるかな黄菊、地元で「人民裁判」に。(2007/03/09)
このエントリーでもふれましたが、全人代における「人民裁判」の前日である3月6日に、現役上海閥の筆頭格である呉邦国・全人代常務委員長が上海市代表団の分科会を訪れて改めて「人心慰撫」を行っているのです。
その慰撫される「人心」とは陳良宇失脚で動揺する上海市当局幹部や富豪とされ、私もそう考えていたのですが、実はそうではなく、「よそ者に荒らされたことに怒る上海人」をなだめるのが目的だったのかも知れません。
そして、「進駐軍」「よそ者」を具現化した存在として理屈を超えて恨まれていたのが韓正・市党委員会書記代理(市長)だった、という見方はどうでしょう。
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胡錦涛としては、対外的なアピールも含めて、上海市トップの後釜には「団派」の有力者を据えたかったことでしょう。これ以上わかりやすい勝利宣言はないからです。いわば「上海占領宣言」。
韓正は元々市長ですから、いきなり上海のトップになるには早すぎます。今回のパフォーマンスに胡錦涛がダメ出ししていなければ、恐らく省か自治区のトップ、……高評価ならたぶん経済的に重要な沿海部のどこかの省の党委員会書記を務めてから直轄市のトップないしは党中央入り、というのが妥当な線だと思います。
実際、韓正が上海市長から転出し、後任に安徽省のトップである郭金龍・省党委員会書記が収まる、とのロイター電が香港では流れています。新華社もそれを暗示するかのように、郭金龍の長々とした演説記事を配信しています。お別れセレモニーだったのかも知れません。
●「ロイター通信」(2007/03/24/16:57)
http://hk.news.yahoo.com/070324/3/24bdd.html
●『明報』電子版(2007/03/24/17:00)
http://hk.news.yahoo.com/070324/12/24bd5.html
●「新華網」(2007/03/24/10:04)
http://news.xinhuanet.com/local/2007-03/24/content_5889594.htm
このロイター電及びそれを引用した『明報』電子版によると、上海市のトップに起用された習近平は上海閥との反目がなく、市長就任が噂される郭金龍は江沢民との関係が良好とのことです。
もし韓正も異動となるのなら、次にどんなポストを与えられるかにも注目ですね。
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胡錦涛としては、対外的なアピールも含めて、上海市トップの後釜には「団派」の有力者を据えたかったことでしょう。……と改めて強調しておきます。
しかし、予定外だった噴出する「上海魂」の凄まじさに「団派」を起用することを控え、
「アンチじゃないけど親胡錦涛派かどうかは怪しい『太子党』」
を陳良宇の後任に持ってこざるを得なかったのではないでしょうか。ちなみに「太子党」というのが「団派」や「上海閥」といったようなまとまった政治勢力なのかどうか私は未だに疑問に思っているのですが、「太子党」から起用するなら習近平、というのは妥当な人選です。上海のトップになることで、報道にあるように党中央政治局委員への昇格も内定。
ただこの習近平、沿海部のポストを歴任している点で外資中毒の上海を任されることには適しているでしょうが、クリーンだとか農政に熱心というのはどうでしょう。少なくとも当ブログでは習近平治世下の浙江省で環境汚染を原因とする深刻な農民暴動が起きたのに当局は武力弾圧して税収源である公害企業の側に立った、というケースを複数紹介しています。
●21世紀型農民暴動。(2005/07/01)
●またですよ21世紀型農民暴動。(2005/07/20)
私は示威的な意味も込めて上海トップは「団派」、とすれば江沢民の生地・楊州を管轄下に含み、陳良宇率いる上海閥の牙城に隣接していた江蘇省のトップ、李源潮・省党委員会書記あたりが昇格人事としても妥当だから白羽の矢が立つのではないかな、と根拠もなく漠然と思っていました。
ポスト胡錦涛と噂される次世代「団派」の筆頭である李克強・遼寧省党委員会書記に次ぐ存在が李源潮だとされています。それが上海のトップでないなら中央入りして党中央政治局委員、うまくいけば飛び級で党中央政治局常務委員にまで登り詰めるのかも知れません。
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ともあれ、「太子党」ということに私は異様さを感じました。胡錦涛直系のホープを後任にあてることができないほどの反発がいまなお上海に残っているのでしょう。
「揺れている」のではなく「荒れている」のです。陳良宇を潰すほどの剛腕ぶりをみせた胡錦涛も、「上海魂」には我意を通せなかった、といったところではないかと思います。
プロの皆さんが指摘されている「混乱立て直し」ではあるのですが、「混乱」の源は汚職ではなく上海人意識なのではないかと。「太子党」を起用したことから、少なくともこれは一種の妥協人事であり、「胡錦涛が毅然とした姿勢を示した」とは、私には感じられません。
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「いいなあ」、別のイミで(笑)
前々回のエントリのレスでarereさんが紹介していた「中文書店」ですが、あれ関東にもお仲間があるようですね、しかも見事に不良中××の生息地ばかり。。
http://www.kyotsu.com/level2/hobby/JP_syoten.htm
こいつらちゃんと営業許可あるんかいな??
上記のアドレスにある大阪中文書店は私の知っているところとは住所が違いますが、恐らくは事務所なのでしょう。はい。
店舗は大阪市中央区日本橋2丁目7-5
06-6646-1552
近頃はあまり毒×は感じませんが、以前はそりゃもう。
ちなみに”争鳴”や”開放”も並んでます。
日本観光に来た大陸人がバスで乗り付けて大量に買い込んでいくそうです。
上記の書店は私も行った事がありますが、あれは共○党の息のかかったところだとは知りませんでした。ずいぶん危険なところへ行ったものです。
以前行ったときは近くで法○功がビラを配っていましたが、その人たち大丈夫なんでしょうか
アグネス・チャンが、ラジオで結婚話になり、どういう人が嫌い? と聞かれて「上海の人」と言ってたのを思い出します。聞いてた人、全員ずっこけたと思いますが。たしか生放送。
以来、なんとなーく「そうか。上海の人は嫌われてるのか」と思ってました。最近、職場に上海人の人が来ましたけど、他の支那の人もなんか、高慢ちきなので、比較のしようがないな……と。
ウケました。
上海人恐るべしですね。
http://youtubeyourtube.blog95.fc2.com/
取り急ぎ記録としてお知らせしておきます。
リンク先は出ていませんでしたが、確認してみます。
鄭 現莉(『中国改革』誌見習記者)
多維郵報2007年2月26日出版 総題1223期
光明観察刊発時間:2007-2-25
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