司書教諭日誌

福島県の公立小学校勤務。小規模校勤務ですが、司書教諭に任命されました。
日々の取り組みや学級指導を綴るブログです。

その5

2010-08-12 23:53:28 | 司書教諭日誌
学図研 東京大会 2日目 

 
分科会「先生が使う学校図書館 なぜ使う? どう使う? そしてどうなる?」

 実践報告Ⅰを受けた分科会
 3人の実践報告のあと、パネルディスカッションが行われました。

1 東京純心女子中学校 社会科N先生(司書教諭Y先生)

 ○中学1年の地理(週2時間)
  「みんなで世界の国々を調べ、発表しよう」(全11時間、約2ヶ月)
  分科会Ⅰで発表した司書教諭との協働授業
   
  ・グループ学習 5・6名で一つの国について調べ、発表する。
   くじ引きで国と調べる内容を決める。
    A その国を知る上での基本データ
    B 自然環境
    C さまざまな産業
    DEF 自由発表 ただし次のア・イから一つ選ぶ
        ア この国を紹介する上で特徴的な風習・習慣、食べ物、住居、文化全般など
        イ この国が抱えている問題の現在、原因、要因や歴史的背景、解決策など

  ・司書教諭が課題解決のプロセスや責任表示について指導する。

  ・調べた国について話し合い、発表シートにまとめる。
  ・各自が意見を書き、発表資料の準備をする。
  ・発表を聞き、評価する。
  ・質問に答えられなかった項目について調べる。

 ○ 調べ学習後の生徒の様子
  ・自分で体得した知識+新たに学ぶ知識 授業の活性化
  ・担当国に対する生徒のもつ印象の変化
    マスメディアによる一方的な報道 リテラシー教育にも
 
 ○図書館を利用した調べ学習をする上で
  ・マイナス面 時間がかかり、網羅的に全世界を扱うことができない
  ・プラス面  積極的な態度、自ら獲得した知識の定着のよさ
         授業だけにとどまらない新たな知識獲得の欲求

2 帝京大学 K先生 (元学芸大付属世田谷小学校教諭) 

 ○クラスの子の作文の成長記録
   書く力を育てた読書や調べ方の指導
   調べる生活がクラスに波及したこと
 
 ○ なぜ使う? - 子どもが育つから
   どう使う? - 情報リテラシーが育つように
   そしてどうなる? - 協働する学校図書館ができる

3 玉川聖学院中・高校 家庭科S先生
 
 ○どんな人間を育てたいか
  ・積み上げられる力を持つ
  ・想像力を身につける
  ・人生のどのステージでも前向きに成長する
  ・本屋ではなく図書館に行く

 ○学校図書館ですること
  ・バランスをとる
   (家庭科でコンピューターを教えるようになり、ネットと本のバランスが必要だと思った)
  ・学習の効率を上げる
  ・じっくり取り組むことを予感させる
  ・人類の知を継承させる

 ○学年としての取り組み
  ・中高6年間の学習を見通した実践
  ・情報センターと関わらせる

 ○生徒の様子

パネルディスカッションの内容については省略


(感想)

学図研の分科会は、4時間長丁場です。長いです。
途中で休憩は挟みましたが、今回はその休憩時間さえもグループ討論に充てられました。
長くても、それを感じさせない中身と手ごたえのある分科会でした。

社会科のN先生の発表は、授業のプロセスがよく見えて、とてもわかりやすくて参考になりました。
あのワークシートはとてもよくできています。
この方式は小学高学年の子にも応用できるかも。
時間が足りない社会科の中で調べ学習に11時間も割かれたのは、ご英断です。

元学芸大のK先生は、長野大会でも発表された方です。
例の鼻毛くんのその後の目覚しい活躍ぶりが見られて嬉しかったと同時に驚きました。
彼はすばらしい小学生作家になっていたのです!
2年生のときに書いたという「妖怪の研究」には度肝を抜かれました。
3年生のときに書いたというSFは、なんと巻末に参考資料付きでした。
途中でパワーポイント画像に「ライティング・ワークショップ」と「作家の時間」の表紙が映っていました。
買っただけで読んでません。まずいな~読まなくちゃと思いながら聞いていました。

玉川聖学院のS先生は、どんな人間を育てたいかという明確なビジョンをもって、ビシバシと子どもを育てていらっしゃる日々のご様子が伺えるような発表でした。
「中3でガツン!とくる一冊を読んでほしい。そのため逆算して中1からの読書計画を立てた」
家庭科というのは、生活スキルだけではなくて、どう生きるかも考えなくてはいけないのですね。
調べ学習のとき「自分の切り口がないとダメ」
「胸が躍らない」「本当に思っているの?」などとダメ出しをするそうです。
「白書は使った?」が口癖なのだとか。
こういう先生に中学生のときに教わりたかった!



2日目の夜は、お楽しみの交流会です。
毎年趣向を凝らしたセッティングやイベントがあるので楽しみです。
今回は入口で席くじをひきました。
私がひいたくじには「人間失格」
この作品を書いた作者のテーブルに行きなさいということのようです。
これは簡単だったのですが、若いYA作家の作品をひいた人は難しかったかも。

宿泊はオリンピックセンターでした。
相部屋になった方々と、本や図書館の話など、延々おしゃべりをしていました。
それがすごく楽しかった!!
初めて会った方々なのに、あの盛り上がりは一体なんだったのでしょう?
ここをごらんになっていらっしゃるかどうかわかりませんが、
おかげさまでとても充実した大会でした。ありがとうございました。
東京支部と全国委員の方々にも感謝します。お疲れさまでした。

その4

2010-08-12 23:04:48 | 司書教諭日誌
学図研 東京大会 2日目 

実践報告Ⅱ 「つながりが育まれる場、図書館 ~糸を紡いで布を織るように~

 三重県の公共図書館と学校図書館の司書さんふたりの報告

「公共図書館の司書がお話会や団体貸出を通して小学校の図書館にかかわるうちに、学校司書の必要性に気づきました。学校司書配置という目標を明確にしたチラシを行政、地域に配布。先進地にも学び、ボランティアと司書がすべきことの位置づけや違いも、公共が核となり明らかにしました。」(大会チラシより)

○公共図書館司書

・人口約5000人の村に図書館を作った。
 貸出冊数は全国平均の約5倍。
・図書館の可能性を伝えるため、間口を広くし、図書館側から出かけていった。(アウトリーチ)
・公共図書館が中心核となって、学校ボランティア開始。
 学校司書設置への道筋としてのボランティア。
・子どもの育ちを支えあう場としての公共図書館作り。子育て支援運動の一環。

○学校図書館司書

・平成15年9月から司書配置
・公共図書館との連携 
  各学年毎月のおはなし会
  一ヶ月250冊までの団体貸出し
  H17年「つなごう!本・子ども・大人inせいわ」
      作家・富安陽子さんを迎えて講演会、お話会、アニマシオン、山登り読書会、人形劇
  H18年「今、大切にしたいこと~ことば、こころ、からだ」
      夏休み図書館キャンプとアウトメディアナイト
      世界のおもちゃで遊ぼう!
      坂本廣子さん・村中李衣さんの講演会
  H19年「絵本と出会う・絵本で出会う~本の力で結び目作り~」
      村中李衣さんと「腕まくり」男の絵本読み講座&図書館キャンプ「真夏の夜の探検隊」
      鈴木まもるさん「鳥の巣と絵本の不思議」
  H20年「本・人・自然~いのちを愛づる~」
      中村桂子さん講演
  H21年「読むこと。生きることーひとりひとりの命のためにー」
      くどうなおこさん講演
・みんなで子どものことを考えるうねりができた


(感想)
 ノートのメモにはこんなことが書いてあります。
「体と読書を繋ぎましょう。
 手仕事プロジェクト『おまめさんかなあ』
 大豆栽培や味噌作りなどを通した読書推進
 食べること・読むことは身体に取り込み命を作ることで共通している。
 自らが主体者であることを実感する」

もっとも心に残った言葉は「子どもたちのまわりの大人をつなぐ」ということ。
そのことによって子どもも大人も幸せな体験ができているのが羨ましいです。
公共図書館と学校図書館が密接に関わりあうことで、地域ぐるみのいい活動ができているなあと思いました。
公共図書館司書のHさんが作られた文書が熱いです!


 

その3

2010-08-12 21:38:10 | 司書教諭日誌
学図研 東京大会 2日目 

実践報告 Ⅰ「校長先生、図書館も純心の教育に参加します!」

 東京の私立女子中学校の司書教諭(専任)Yさんの実践報告です。

1 学校の概要
 ・生徒数 約400人 

2 学校図書館の概要
 ・貸し出し状況 ・貸し出し冊数の推移 
 ・授業での利用状況 
   例 家庭科 食材の本を別置、調べ方学習プリント作成、情報カード記入の仕方を指導
     音楽 資料本の準備、調べ学習プリント作成、レポート作成の仕方を指導
    (図書館や国語の授業の他、理科や社会、家庭科や美術などさまざま)
 ・図書館からの情報発信
   図書館便り、掲示物、「今月のコーナー」

3 中学図書館の歩み 

 ・開館当初は、司書に連絡なく授業中に生徒が突然やってきた。
 ・やがて事前に連絡が来るようになり、「勝手にタイアップ」を始める。
 ・事前相談があるようになり、ブックリストを作成したり、資料の探し方の説明をしたりするように。
   ↓
   ↓ ここまではよかったのだが・・・
   ↓
 ・図書館を利用した授業の激減、調べ物はインターネットへ
   ↓
   ↓ 図書館の危機を救った「Big6」
   ↓
 ・事前連絡、事前相談は当り前
 ・図書館を使った授業がある場合、教科側の単元目標と図書館側のこの授業を利用しての目標を出し合ってすり合わせをする。
  現在行われている図書館を使った学習を、Big6スキル(図書館仕様)に当てはめて、どこに重きを置いた指導をするかを決める。中1、中2、中3と、段階を追った指導にしたい。

 ・Big6スキルとは、アイゼンバーグとベルコヴィッツが発表したもので、問題解決の過程を6段階に分けたもの。
  調べることの手順を明確にし、学習者が、自分がどのステップにいるか自覚し、振り返りつつ螺旋的にステップアップする。
 ・中学2年の音楽、ベートーヴェンレポートの例
 ・中学2年の家庭科のレポート 
   ↑
  学年や教科をまたいで、レポートの書き方や調べ学習の仕方を司書教諭が繋ぐ
 ・もらった時間で図書館独自の情報利用教育
   新聞記事を使った学力テスト問題(トレーニング・サプリメント)
   広い意味で必要な学習スキル定着のための授業を図書館から提案

4 これから
 ・学校図書館機能の到達段階
   ① 本が置かれている部屋
   ② 本が動く部屋
   ③ 読書センター
   ④ 学習情報センターⅠ
   ⑤ 学習情報センターⅡ
   ⑥ 情報センター (学校の学びの拠点)

5 まとめ
 ・「図書館員の役割は、子どもたちがみずから資料や情報を調べ評価し使いこなす力をつけるための支援を行うことにある」
  (根本彰「学校教育と図書館の関係に寄せて」より)


(感想)
 いい題名の報告だなあと思いましたが、中身もよかったです。
 図書館と教諭を結ぶのが司書教諭といわれますが、現実に結んでいる、こんないい実例を示してもらえました。
 カリキュラムか単発なのか質問したのですが、シラバスの中に図書館司書が指導することが自然に入っていたそうです。
 司書教諭が働きかけ、提案し続けた成果なのでしょう。

 他のどこかで「図書館を学校教育の中心に」という言い方を聞いたのですが、個人的にはちょっと違うなあと思います。
 逆に、そんな大それた機能を持たせてはいけないような気がします。今のシステムじゃ。
 本当の意味で情報センターとして機能させるためには、司書がひとりくらいじゃどうにもできないでしょう。
 ただ、個人ではできないことが学校全体としてだったらできることがあります。
 その意味でも、報告のタイトルに「校長先生」と呼びかけを入れたのはナイスだと思いました。