司書教諭日誌

福島県の公立小学校勤務。小規模校勤務ですが、司書教諭に任命されました。
日々の取り組みや学級指導を綴るブログです。

その2

2010-08-09 21:45:06 | 司書教諭日誌
学図研 東京大会 1日目 ナイター
「今、児童向け文庫が熱い!」



支部が担当したナイターです。
角川書店、講談社、ポプラ社から児童向け文庫を担当されている方をお迎えしました。
会場には、「黒魔女さんが通る!」でおなじみの石崎先生のお姿も・・・

1 児童向け文庫の概要(支部から)

 ○ 児童向け文庫のここでの定義
  ・新書サイズ ・比較的安価 ・定期的刊行 
  ・単一作品でなく、さまざまな作品の集合レーベル
  ・読者対象の中心は小学生

 ○ 児童向け文庫はこれだけ増えている
  ・発行点数 青い鳥文庫の例 2004年から急増
  ・レーベル (来年度、集英社も参入予定だとか) 
  ・ジャンルの多様性 
  ・学校図書館の所蔵数

 ○ 学校図書館にとって、児童向け文庫の魅力とは
  ・子どもが進んで手に取る本 強制されない
  ・安全性 性・暴力・犯罪へのフィルター
  ・名作や古典を今の子たちに伝える 手にとられなくては伝わらない

2 現場からのレポート(支部から)

 ○ ある小学校では9類7000冊のうち約600冊も
 ○ 利用の様子
 ○ 手にとるきっかけ
 ○ どのように読まれているか

3 出版社から

 ○ 講談社 青い鳥文庫

  ・世界でいちばん子どもたちとふれ合っている編集部
  ・読者と話す経験からわかったこと
    好きな本は、その子を世界につなぎとめる碇になる
  ・読書の力を理解し、さらに広げようとする意志
    今の子へ より手にとってみたくなる工夫
    未来の子へ 過去の名作も今の傑作も未来へ
    弱視の子へ 拡大本のリストを拡充し、安価で提供
    世界の子どもへ 中国や韓国、タイなどで発行
  ・子どもに受け入れられる工夫
            
 ○ ポプラ社 ポプラ・ポケット文庫

  ・子どもたちのさまざまな要求に応えるヴァラエティ豊かな文庫
  ・人気なのは「らくだい魔女はプリンセス」シリーズ 作者も若い
  ・伝記シリーズや「火垂るの墓」を児童文庫化したものはロングセラーに

 ○ 角川書店 つばさ文庫

  ・角川グループ7社合同の児童レーベルである
  ・創刊前は角川文庫の膨大なストックから児童文庫に落とせるものをピックアップ
  ・メディアミックスものは、棚の前に来てもらうためには有効
  ・小中学校の図書館司書、書店の児童書担当、子どもモニターなど幅広くリサーチ
   学芸大と共同企画も行う

質疑応答・意見

Q レーベルとしての展望は?
A ・1年目はトライアル。オリジナル4割、名作4割、リアル系2割。
  ・ファンタジー系で魔法や魔女、探偵など、出す作品がみな似てきている。
   違うのを出すと売れないので、模索中。
  ・男子にも本好きになってほしいのが課題。

O 男子には「命をつなげドクターヘリ」などノンフィクション系が人気。
  高校の職業ものとしてもいいのでは?

Q マーケティングをどうしているか。マンガ的な表紙の絵は流行り廃りがあり、古くなっても買い換える予算のない学校図書館としては購入をためらうこともあるのだが?
A ・読者ハガキは圧倒的に女子が多いので、男子のマーケットリサーチが課題。
   女の子向きの本の場合、髪型や服にも気を配っている。
  ・店頭で買うのは9割が女子なので、女子の好みのかわいい絵が多くなってしまう。
   今読みたい子に向けて作っているので、流行り廃りは仕方がない。
  ・男子はいったん好きになると、ずっと好きでいてくれる、ありがたい読者だ。

(以下、主なものだけ)

・性・暴力・法律に触れることは入れない。もしクレームがきても対処できるようにしている。
 講談社の「児童書向けハンドブック」を利用している。

・本の苦手な子は文字が小さいと手が伸びない。低・中・高学年向けでそれぞれ文字の大きさを変えている。
 総ルビなのは、ハードルを低くするため。

・子どもに受け入れてもらうのが最初。名作はスタンダードな表紙で、旬のオリジナルは旬の絵で。
 
・大人になる前の層向けの本を構想中(中高生向け)


(以下、感想)

・担当者の一人としては、講師として自社の文庫について熱く語ってくださった出版社の方々に感謝したいです。
 後半の質疑応答にも丁寧に答えていただき、子どもたちにこんな本を手渡したい!という思いが伝わってきました。
 綿密で現実に即したマーケティングから文字の大きさまで、本を作る立場ならではの貴重な意見を聞くことができて、とても興味深いものでした。

・参加者に事前アンケートに答えてもらいました。
 どれも興味深い回答でした。
 「児童向け文庫しか読まないのが気になる」
 「表紙がチャラチャラしすぎていないだろうか」
 「表紙の絵や題名で眉をひそめられ、購入しづらい」
 「点数が増えすぎて、スペースの問題もあるので選ぶのが大変」
 など、課題も明らかになってきました。

・出版社としては、まず「書店の棚を取る」使命があり、そのためにマーケティングを必死で行っているのと感じました。
 書店での児童書コーナーは縮小傾向ですが、学校図書館にはまだ余裕があるのではないかと、狙われています(笑)

・出版社では、読者のすみわけをとても意識しているなあという印象を受けました。
 フィンランド教育的に表現するのなら、「子どもに本を押し付ける」ではなく、「子どもに本を合わせている」でしょうか。

・わたしは児童向け文庫肯定派ですが、いちばんの理由は子どもが手を伸ばさずにはいられない作品があることです。
 そんな本と出会えることが、読書好きな子を育てていくのではないでしょうか。