司書教諭日誌

福島県の公立小学校勤務。小規模校勤務ですが、司書教諭に任命されました。
日々の取り組みや学級指導を綴るブログです。

学校図書館問題研究会 東京大会の記録・その1

2010-08-08 22:14:58 | 研修
学図研の東京大会とSLAの静岡大会に行ってきました。
毎日たくさんの情報に触れ、脳みそがキャパシティ・オーバー!
すばらしいことをたくさん教えていただいたので、
忘れないようにおさらいしながらまとめていきたいと思います。

以下は、自分用のメモであって、公式記録ではありません。
なるべく正確に記すように気をつけたいとは思いますが、
テープ起こしをしているわけではないので、誤りがありましても御容赦ください。



1日目 
講演「読書と、言語力を培う図書館:フィンランド教育から考える」
       福田誠治氏(都留文科大学副学長」

PISA調査で高得点を獲得し、学力世界一と評されるフィンランドの教育を研究されているのが福田氏です。
 氏によると、フィンランドでは子どもを『自立した学習者』にすることを教育の最終目標とし、
 テストや競争を学びの動機付けにはしていません。
 また、公共図書館が充実していて、生活の中に読書が根付いています。」(案内より)

・フィンランドでは、図書館は国民のリビングと呼ばれている。
 漫画、ネット、楽器演奏まで

・フィンランドには16歳まで他人と比べるテストが存在しない。
 学習をどれくらい覚えたのか到達度を測るのではなく、
 「何のために生きるか」が丁寧に教えられている。

1 日本の学び

・日本の子どもは勉強嫌いで勉強量も少なく、学習意欲も低いのはなぜか?
 「子どもは自ら学べない」という(認識の)前提があるからだ。
 だから国が教科内容を決め、それを教科書で伝達するという、受身の方法になっている。
 それはおかしい。赤ちゃんですら「自ら学習」しているではないか。
 
・日本では、国民は教育を受ける「権利」があり、親は子に教育を与える「義務」がある。 
 国際的には「子どもは教育にアクセスする権利」を持つ。
 足に靴を合わせるように、子どもに教育を合わせるという考え方になっている。

2 フィンランドの学び

・教育は「自分に対する義務」

・日本人「テストがなくて、なぜ勉強するのか?」
 フィンランド人「テストがなければ勉強しないのか?

・子どもが自ら学ぶ気持ちを持つまで待つ。
 いやがる者に強制しない。
 あの手この手で促しはするけれど、強制したら逆効果になると考えている。
 基礎教育は16歳まで、それ以降は専門性を身につける学校へ。

・自ら学ぶ子を育てるため、現場の教師に全権限がある。

3 国際学力調査に見る読解力テスト

・OECDは、テストを変えることで学校や教育観を変えようとしている。
 元々はマーシャル・プラン フランスとドイツをケンカさせない政策
 詰め込み・点取りは、おちこぼれが自信をなくし、成長が歪む。止まる。
 失敗しても責任がとれる市民を育てよう。

・PISAの統括責任者の見解より
 学校で教えた内容がどんどん変化する世の中なので、学校では「学び方」を教え、働きながらも学び続けることになる。
 今日のリテラシーは、「学習するための読解力」であり、常に変わり続ける脈絡の中で多様な状況に関する文字文献を用いて知識を見極め、理解し、解釈し、創造し、コミュニケーションする力と意欲である。

4 PISAの測った学力とは

・この読解力とは、社会的な道具を使って、社会とのつながりをもつ能力を示す。

・読解力とは、「言語・情報運用力」あるいは「言語・情報リテラシー」のこと

・フィンランドは未知の情報を探してきたり、自分と異なる意見を解釈するのが上手い。
 日本は情報を探したり解釈したりするのは苦手だが、相手かまわず意見をいうことができる。

・なぜPISAはリテラシーを測ろうとしたのか
 「明日の市民を作る」
  教科の知識の習得よりも、社会に出て使える力を測定する。

・キー・コンピテンシー
 ①相互交流的に道具(言語や技術)を使用する
 ②異質集団内で相互交流する
 ③自律的に行動する

・日本における動向 
 ことばを人間関係の場において使えるものにする。
 
5 家庭の蔵書数と学力の関係

・家庭の蔵書数と数学・理科の得点は比例する。

・趣味としての読書時間が長いほど総合得点が高いが
 読書時間が2時間以上だと点数がやや下がる。

6 趣味で読書すると学力が上がるか

・日本の生徒は趣味として読書しなくても、読解力の点数が高い」

・時間が問題ではなく、読み方・読書の仕方によって異なる。

7 社会的・経済的な格差をなにがなんでも埋めていく

・フィンランドでは11歳で進路がほぼ決まる分岐型教育制度を廃止し、総合制学校に変換させた。
 異質生徒週間方式に変えた。

・親の社会的・経済的な背景と成績の関連

8 フィンランドの読解力向上対策

・国語・算数は徹底した補講を

・読書の雰囲気作り 

・「ルク・スオミ」図書館の充実

9 図書館と司書に役割


「日本の教育は古い。指示待ちでは生きのびれない。考え、学び続ける力が必要だ」


<以下、感想>

後半は駆け足。

今回の講演を聞きながら、2003年の学図研岡山大会で
佐藤学氏が講演「学びを創造する読書のすすめ」でPISA結果について語っていたことを
思い出さずにはいられませんでした。
当時は日本の順位がまだよかったので、危機意識をもつ人はほとんどいなかったと思うのですが、
佐藤学氏は日本の学生の学力・読解力が落ちる原因を説明し、
「次のPISAで日本の順位はがくっと落ちるだろう」と予告し、果たしてその通りになりました。

教育の根本的な考え方からして違っていたのですね・・・
フィンランドの教育を真似る必要はないと思いますが、
考え方には学ぶところが多いと感じました。
「学び方を教える」ことは大切ですが、記憶力のすぐれている行いうちに
系統的な学習の基礎を叩き込むのも有効だと、個人的には思います。