Zooey's Diary

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「ロープ 戦場の生命線」

2018年02月15日 | 映画


カンヌ国際映画祭で本作が上映された際には、上映後10分間に及ぶスタンディング・オベーションが
起こったのだそうです。

1995年、ボスニア紛争停戦直後のバルカン半島の山岳地帯。
マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)が所属する「国境なき水と衛生管理団」は
井戸に死体が投げ込まれ、水が使えなくなってしまった村に赴く。
苦労して死体を引き上げようとするが、古いロープは重みで切れてしまう。
やむなく、武装集団が徘徊し、あちこちに地雷が埋まる危険地帯を
1本のロープを求めて彷徨うことになる。



この話は停戦後の世界で、派手な銃撃戦や血が流れる殺戮の光景は出てきません。
では平和な世界かといえばとんでもない。
国連やNATOの介入によって「今日から停戦」なんて言われても
昨日まで人種や宗教の違いで殺し合っていた人々が、いきなり仲良くなれる訳がない。
停戦とは名ばかりで、殺戮、凌辱、盗難、なんでもありです。
井戸に死体が投げ込まれたのも、水の密売ビジネスを企む犯罪組織の仕業であると。

井戸の底に沈む、ぶよぶよの腐乱死体の姿は、画面に何度も出てきます。
そんなものが投げ込まれた井戸の水、仮に死体を取り出したとしても、
もう二度と口にしたくないのじゃないか、
そう思うのは恵まれた国に住む我々の思考であって、砂漠地帯に住む連中には
待ったなしの死活問題であるらしい。



国籍も年齢もばらばらの5人の「国境なき水と衛生管理団」はロープを求めて
武装集団に脅されながら、泥だらけのジープで走り回る。
たった一本の山道を塞ぐように、牛の死体が転がしてある。
その死体をよけて通ろうとすると、そこには地雷があるのだと。
牛の右側か左側、どちらを通るべきか(どちらが死ななくてすむのか)?
現地の一人の少年の力を借りて、ようやくの思いでロープを見つけるが
そのロープの先には、何日も腹を空かせた猛犬が繋がっていた。
爆破された少年の家で見つけたロープの先には、もっととんでもないものが。



こう書き連ねると、どうしようもなく絶望的な話のようですが
そこにビー(ティム・ロビンス)の自虐的なユーモアや、
女性にだらしないマンブルゥの女とのゴタゴタ、そして新人であるソフィの
ヤル気に満ちた勇み足などが絡まって、面白おかしく進んでいくのです。
そして終盤、呆気に取られる結末が…
現地の住民の事情を無視した、国連などのお役所仕事の不合理さは
何処も同じということか。
コメディタッチで話を進めて戦争の残虐さ、不条理さを浮かび上がらせる手法は
お見事としかいいようがありません。

原作は「国境なき医師団」に所属する医師でもあるスペイン人作家パウラ・ファリスの小説「Dejarse llover」(雨を降らせて)なのだそうです。
映画の原題は『A perfect day』。

公式HP http://rope-movie.com/

#welovegoo
コメント (2)
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