福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

下宿の思い出(1)

2007-01-09 08:34:50 | 下宿の思い出シリーズ

先日、長岡駅(新潟県)を電車で通過した時、ふと初めて下宿した頃のことを思い出しました。

場所は長岡市の花園というところ。一人暮らしのハナおばあさん(推定年齢70歳)の家の一室を月6000円でお借りしました。下宿部屋は2階に8室あり、共同の炊事場とトイレがありました。当時すでに「下宿スタイル」は流行遅れで、私を含めて2室しか借り手がいませんでした。

この下宿の特徴は門限が20時で早いこと。それは、ハナおばあさんが早く寝てしまうからです。お風呂も週2回で、21時まで入り終えなくてはなりません。

ある日の出来事。炊飯器の釜にこびり付いたご飯粒をとるため、流しで釜を水で浸してふやかすことにしました。一晩置いて、朝方そのまま流しに流したのですが、ご飯粒が2階の配水管を経由して家の脇を通る排水路に出て行きました。排水路脇の畑で農作業をしていたハナおばあさんがそのご飯粒を見ていて、私を叱ったのです。「農家が汗水たらして作った米を粗末にしては罰が当たる」と。

ハナさんの教えを受け、それ以来、釜にこびり付いたご飯をヘラでこすりとって、最後の一粒まで食べるようにしています。現在の炊飯器の釜の内側はテフロンコートされているので、ご飯粒を最後まで取りやすくなっていて助かりますね。

ハナおばあさん、時々お茶を誘ってくれました。番茶と自家製の漬け物で、農家の苦労話はもちろん、何時間も息子さんの自慢話を繰り返し聞かせていただきました。枕詞のように、「相模原の息子は、、、」で始まります。当時、相模原(神奈川県)がどこにあるのかわかりませんでした。それから20年経って、通勤で横浜線を使ようになると、乗換駅である橋本(神奈川県)の一つ前が相模原駅。この駅を通過するたびに、ハナおばあさんの枕詞を思い出したものです。

ハナおばあさんの下宿の後、2つの下宿を経験しています。スミおばあさん(東京の目黒)とアルバースおばさん(ドイツのブレーメン)です。

ハナさんとスミさんはすでに他界。それぞれの下宿を引きあげてから、再び彼女らにお会いする機会は残念ながらありませんでした。アルバースさんは、どうしているのでしょうか?近いうちにアルバースさんに手紙を書いてみようかと、思っているところです。お元気だと良いのですが。