木全賢のデザイン相談室

デザインコンサルタント木全賢(きまたけん)のブログ

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商品を好きになる②

2006年04月26日 | 工業デザインとは(相談室)


 こんにちは!「工業デザイン相談室」木全(キマタ)です。デザイナーの実像・デザイナーとの付合い方・デザイナーとのトラブル回避法など書いていきます。御相談がありましたら、コメントをくださいね。

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■商品を好きになる②
27:【デザイン相談室】考え方6

  このブログを始めたころ、商品のデザインはお客様への優しさの心贈り物の心が大切だというお話をしました。その続きで前回から、

「お客様への贈り物である商品を、自分も好きになること。」

についてお話しています。前回は「初心を忘れない」と言う話でした。今回のテーマは、「明確な目標を持つ」です。


空圧機器用ドライヤー

 ドライヤーとは、工業用空圧機器に使う空気を乾燥させて水分を取り除く装置です。

工場の自動化ロボットは、モーター・油圧・空気圧のいずれかで動いています。直線的な小さな力が必要な場合には空気圧が向いています。工場内に張り巡らされた直径数ミリのパイプの中に加圧された空気を送り込み、その空気圧で機械を動かすのが工業用空圧機器です。

 細いパイプの中の加圧空気に水分や不純物が含まれているとあっという間にパイプの中に溜り、動脈硬化を起こして機器が動作しなくなってしまうため、ほぼ100%水分や不純物を取り除かなければなりません。

 空気から水分を取り除く装置をドライヤーと言い、このメーカーでは、業界に先駆けて中空糸膜を使ったドライヤーを作り、水分のみならず不純物まで99%近く取り除ける、ドライヤーを開発しました。

 性能は良いのですが、価格が高く、なかなか販売に結びつきませんでした。

 そこで、事業部長が目をつけたのが、Gマーク(通産省グッドデザイン)でした。性能に加え、デザインで訴求すれば、ブランドイメージが上がり、販売に結びつく、というわけです。

 我々に「必ずグッドデザインの部門別大賞を取るように」と依頼がありました。
 


目標は「グッドデザイン部門別大賞」

 その空圧機器メーカーは、私が以前在籍したデザイン事務所とコンサルタント契約をしていました。今回の主役である事業部長は、デザインコンサルタント契約当初からメーカー側の窓口を担当されていました。もともとデザインに興味をもっていたそうです。

 事業部長は、デザイン担当者としてデザイン業務に深くかかわり、いくつかのデザインによる成功体験を経験して、ビジネスにおけるデザインの有効性を十分に理解されていました。

 今回の空圧機器用ドライヤーは、価格は高いが、性能はいい。事業部長はきっと、この商品が好きだったのだと思います。だから、デザインと言う価値を付加して、世に問おうと考えた。

 そして、その具体的な目標として、「グッドデザイン部門別大賞」を目指した。

 依頼を受けた我々は、「商品の優れた性能」と「事業部長の情熱」と「デザイン感覚」と「目標」を知り、直感でこれは、いけると感じました。

 長い間デザイン業務にかかわってきましたが、これだけ筋のいい商品はなかなかありません。


目的を明確にする

 実は、中小企業がグッドデザインを取ることは決して難しくありません。すこし、デザインに力をかける余力があれば、Gマークは意外と簡単に取れます。しかし、さすがに「グッドデザイン部門別大賞」はなかなか取れない。でも、この商品は凄く筋がよかった。

 まず、「商品の優れた性能」。当時まだ先進的だった中空糸膜を使い、電気を使わない省エネ仕様で、99%以上の水分や不純物を取り除くことができる。当時としてはなかなか画期的でした。

 その性能から「グッドデザイン部門別大賞」を取ることができると判断した事業部長の慧眼。それが、「デザイン感覚」。

 事業部長のデザインに対する信頼と「情熱」も重要な要件です。

 そして、「商品の優れた性能」と事業部長の「情熱」と「デザイン感覚」をベースにして、具体的で実現可能ぎりぎりの明確な「目標」としてデザイナーに掲げたこと。

 目標が明確になれば、しなければならないことが明確になります。することが決まれば、後はやるかやらないかです。

 今回は、性能仕様は先進的ですし、事業部長の「情熱」と「デザイン感覚」が後ろ盾にありますから、かなりの無理が利きました。



 結果、無事に「グッドデザイン部門別大賞」を取ることができました。

 「商品の優れた性能」と「事業部長の情熱」と「デザイン感覚」も大変重要ですが、やはり具体的で実現可能ぎりぎりの明確な「目標」を設定できたこと、(その目標の設定にもデザイン感覚が求められるのですが)それがよかった。

 私は、商品を好きで、その商品化にあたって明確な目標を持つことができれば、必ずいい商品ができると信じています。


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