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原油価格とバブルについて・2

2008年07月02日 23時54分57秒 | 経済関連
この前の記事(原油価格とバブルについて)の続きです。


原油先物市場というのは全く馴染みがないので、判らないことが多いのですが、少し調べたりしてみました。

①原油先物を空売りすることは可能

TOCOM:1-3 商品先物取引の仕組み

期日前に反対売買を行うか、差金決済などで現物授受には関係なく取引は行えるようです。また当業者の場合であると、EFP取引やEFS取引などの手法もあります。当然ながらオプション取引もあるので、様々な手法の組み合わせなどを選択することは可能であると思います。


②contangoとbackwardation

市場構造の変化が見られていると思われます。原油価格高騰が始まって以降、コンタンゴ状態が継続しているようです。一時的に解消されてバックワーデイションに戻った局面はありましたが、現在でも期先物価格が高い状態となっています。

こちらの解説が判り易い>先物市場構造と在庫の関係

また、過去のコンタンゴの発生時期について資料がありました。
原油レポート No.58

湾岸戦争頃と98年後半頃です。そして、原油価格が上昇して以降の時期です。98年後半から起こった出来事は何であったのか?そうです、これまで幾度か取り上げてきましたが(「円高シンドローム」に初めて触れる)、LTCMの破滅的危機ですよ。ロシア金融危機に単を発して世界的信用収縮が起こった為に、LTCM破綻問題が発生しました。98年というのは特殊な年で、原油価格が大幅下落となりました。OPECだけに留まらず、非OPECも協調して減産に取り組んだにも関わらず、下落していきました。特にLTCM破綻問題以降、ドルは下落し原油価格も下落した、ということです。
(日本は金融危機が本格化し、どん底へと転げ落ちていきました)

07年に原油価格が下落に転じた7月には、僅か数日間でバックワーデイションに戻った時がありましたが、サブプライムショックが深刻になっていくと原油価格が上昇を始め、コンタンゴに逆戻りとなったのです。

本当にファンダメンタルズで説明可能であるのか、ということについては、慎重さが必要なのではないかと思えます。


③missing barrels問題

原油統計の信頼性の問題ということがあるでしょう。在庫の動向で先物市場の価格形成に影響しているという解説があったりしますけれども、それが果たしてどの程度意味のある解説なのか、ということでもありますね。現実とは乖離している可能性もある、ということです。それも「少なくない量」である、ということです。例えば、今年の需要増加見通しが100万バレル/日程度であるなら、ミッシング・バレルの誤差範囲でもカバーされてしまうかもしれません、ということです。

1999年以降の原油価格高騰をめぐる国際石油市場と各国の対応等に関する調査

こちらの記事によれば、97年のOPECの供給量は日量約2700万バレルです。本当に需給逼迫なんてことが起こっているのでしょうか?
ここで記憶を喚起ということで、前に記事で書きましたが、06年12月時点でのOPECの減産決定を思い出していただきましょう。

原油価格のこと

06年といえば、日本経済も随分と上向き、米国経済は堅調、中国の経済成長はすごい勢いで続いていましたね。世界経済成長は稀に見る順調そのものであったでしょう。10年くらい前の97年には2700万バレルの生産量だったのに、06年末には「2580万バレルまで減産」しなければならなかった理由とは一体何でしょうか?
この間に、インド、中国、ブラジルは経済成長を遂げたし、東南アジア諸国だって成長を続けてきましたよ。「石油需要は増大したであろう」ことが推測されるのに、なぜ減産しなければならなかったのでしょうか?(笑)
97年よりも需要が高まっているはずなのに減産する理由というのは、
・他の供給力が高まった
・価格を吊り上げる為に売り惜しみする
というような理由しか思いつきませんが。

米国の生産高についても、大幅に減ったままですよね?
それから、米国の原油在庫減少で原油価格値上がりの理由とされていましたよね?
原油価格のこと・2

米国の在庫水準で、原油価格や先物価格の説明をするのは、結構難しいように思えます。比較的短期間の変動はそういった理由は使えるかもしれないですが、もっと長い期間で観察すると、在庫変動と原油価格の絶対値は必ずしもうまく説明できるとは思われません。


先物市場がコンタンゴとなっているということは原油が値上がりする見通しですから、米国の石油会社は現物を今の時点で沢山買って輸入量を増やし、精製稼働率を上げて将来時点で売れば「儲けることができる」かもしれません。在庫を抱えるコストの方が大きいのかもしれませんがね。
これが観察されないとなれば、当業者が「先物市場で買い建ているわけではない」ということなんでしょう。つまりは、商品ファンドなどのインデックス投資とか、年金や政府系ファンドの資金とか、そういう影響かもしれません。

儲けようと思うのであれば、在庫を減らして「需給逼迫感」を煽り、先高感を演出する方が儲けが大きいということはあるかも。わざわざ現物を大量に買い占めて自分が持っておく必要性さえないのでは、ということ。期日が到来すると価格がそこで決まるわけですから、「現実の取引価格」となってしまいますよね。


ちょっと追加。

簡単な例で考えてみます。

毎期100バレルは決まって売るとします。今、在庫を100バレル持っていて、1バレル当たり100ドルだとします。すると、100バレルの在庫の価値は10000ドルで、100バレル分の売却代金は10000ドル入ってくるということになります。合計20000ドル分の資産を持つことになります。

将来時点で「在庫減少」を理由として1バレルの単価が110ドルになったとします。在庫は10だけ減らして90バレル持つとしましょう。毎期に売る量は変わらずに100バレルですから、これを110ドルで売れば代金は11000ドルとなります。これに在庫価値=90バレル×110ドル分、すなわち9900ドルの価値となりますから、合計では20900ドルの資産価値となります。

今度は、儲けようと思って、ある時在庫を増やして多く売ろうと考えたとしますか。いつもは100バレルの在庫だったのを、少し買い占めて110バレルに増やしたとします。すると、在庫増加に反応して先物価格が100ドルから90ドルに下落してしまったと。いつも100バレル売っていたところを110バレル売るので110バレル×90ドル=9900ドルの売却代金ということになります。在庫は110バレルではなくいつもの100バレルに戻しているなら、在庫価値は9000ドル分ですから、合計すると資産価値は18900ドルになります。

20000ドルだった頃を思えば、損してしまうことになります。
実際には先物価格がそのまま期日が到来して同じ価格で売れるとは限りませんが、在庫減少を理由として価格が上昇するのであれば、そちらの方が儲かることもあるということです。原油や食料品というのは、価格が上昇したからといっても急には需要を減らせません。
買い占めて在庫を増加させてしまうことで先物価格が下落してしまうのであれば、量的に多く売ったとしても儲からなくなってしまうことはあるのではないでしょうか。期近物の方が価格が上昇するというバックワーデイションになっているのなら、多く売れば儲かるということになるかもしれませんけれどね。

値上がりしていくコンタンゴになっている限り、在庫を増やすことなく将来時点で一定量を売るのを継続した方が、現物を持っている人は十分儲けられるでしょう。産油国にとっては、儲かる方法になっているであろう、ということです。


あと、T-billのことですけれど、利下げしたから価格下落というのも一概には言えないように思いますけれどね。パニックになっていた時期には、猛烈に価格上昇が観察されたわけで、利下げしても国債金利が上がるとは言えないのでは。

参考>心臓には腎臓を救えない(笑)

国債金利上昇となってきたのは、原油価格・商品上昇→インフレ懸念増大→将来の名目金利上昇、というような見通しの変化によるのではないでしょうか。利下げによって実質金利がゼロかマイナス近辺、しかし期待インフレ率が高まることで名目金利が上昇してしまう、ということではないかな、と。これまで米国債を買っていた投資家たちのポートフォリオ変化も勿論あるのでしょうけど。




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