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外貨準備金で儲ける必要ってあるのかな?

2007年07月22日 19時56分20秒 | 経済関連
えーと、外貨準備高が中国に抜かれてしまい、しかも中国さんが握ってるモノが凄いんだろうね、ということで、日本もうかうかしてられないぞ、もっと儲けるようにしたらいいんじゃないか、みたいな意見もチラホラ散見されるわけですが、どうなんでしょうか。

前に、チラッと書いたのですけど>アメリカは副官に中国を指名したか

そもそも、外貨準備というのは何か、ということになりますが、説明を見てみます。

国際収支統計 - Wikipedia


この中で出てくるのが、

経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0・・・()

ということが常に成り立つそうです。これは会計帳簿の決まり上、必然的ということです。

・資本収支がプラスというのは「流入超」、つまり外国人がお金を日本に入れて何かを買いまくる、みたいなことです。日本の土地とか工場とかそういう何かを「持たれてしまう」というようなことです。逆に、マイナスになると「流出超」ということで、日本のお金を持って行って外国の不動産とか工場とか色々と買う、というようなことです。

※どっちがいいかというのは、一概には言えませんでしょうが、海外からの投資家が資金を入れてくれると中国みたいに成長することも有り得ますが、日本ではあまり考え難いかもしれません。国内資金だけで十分「余っている」ということが多いので。財務省の言い方を書きますと、
資本収支のマイナスは『資本の流出(資産の増加、負債の減少)を示す』
ということになるので、全然悪そうにも思えませんね。お金持ちになればなるほど、こういう事態を生じるようにも思えます。自分の家の中だけで使いきれないお金が多ければ、たくさん余るので外の家の連中に金を貸したり持ち物を買ったりして投資する、ということかな。日本が中国や東南アジアなどに多額の投資をしてきたのも、同じ意味合いでしょうかね。

・外貨準備のプラスは「円が増える」=「外貨減少」(=円買い介入)という意味合いであり、逆にマイナスは「円が減る」=「外貨増加」(=円売り介入)ということになります。このマイナスの場合にも、資本収支同様に「資本流出」ということになるそうです。

先の()式を書き換えて、資本収支がマイナスの時にこれを「海外流出資本」と表現(符合が逆の数字ということ)し、外貨準備の外貨増加(普通はドルが増加、円売り介入と同じ)を「外貨準備高増」と表現すれば、

経常収支(+誤差脱漏)=外貨準備高増+海外流出資本・・・()

と表せます(誤差脱漏は正確であるならゼロでしょうから、あまり重要ではありません)。

日本経済の特徴としては、長きに渡り経常収支がプラスであり、特に貿易収支がプラスであったことでしょう。これが悪いわけでもないので、別にいいですけどね。製造業に代表されるように、輸出して稼ぐ企業は沢山ありますよ、ということです。それから、最近の傾向としては、海外債権の受取利子が増えていることで、所得収支のプラスも大きくなりつつありますね。外貨、海外債券や外貨建て投信などの投資額が増加したことなどによって、受取り利子が増えたのではないか、というようなニュースもありましたし。

経常収支が増えるのであれば、海外不動産とかをバンバン買ったりして流出資本が増加しない限り、外貨準備高が積みあがっていくということは避けがたいのですね。これは恒等式の性質上そうなってしまいます。

初歩的マクロ経済学の基礎を思い起して下さい。次のような式が成立しますよね。

(貯蓄-投資)+政府財政収支=経常収支・・・()

貯蓄も投資も、民間貯蓄と民間投資ですね。もしも、経常収支の変化が殆どない時、貯蓄が増加する(資金が銀行とか金融機関に集まる)ならば、企業とかが投資をどんどん行うか、そこで余るとすれば、政府が投資主体となって財政支出を増大させるか、いずれかになってしまうのです。郵貯の定額貯金が大幅に増えたような時期(92年頃)ならば、政府の取りうる手段には限りがあったでしょう。

()式において、政府の財政収支が均衡するように概ねゼロとしておくなら、貯蓄投資差額が経常収支に一致することになります。それは海外流出資本+外貨準備高増にも一致するということですね。経常収支が常に黒字ということになっているなら、国内投資で余ってしまった貯蓄余剰分は海外資産に変えるか外貨増にするしかなく、外貨準備高が積みあがるのはある意味やむを得ない面もあるということでしょうか。でも郵貯みたいに、この貯蓄余剰分が政府管理ということであると、資本の海外流出がそれほど簡単にできたはずもないでしょうし(ドル買いなんかしようものなら米国が烈火のごとく怒ったであろう)、海外資産に移し変えることもできないでしょう。そうなれば、国内投資に回さざるを得ない、ということになって、不適切投資が多く行われることになったやもしれません。

日本経済の傾向として輸出自体があまり大幅に減少しないとなれば、他が変動しないとなりませんよね。
政府の財政バランスを重視したいのなら、これがゼロである状況はどんな時なのか、ということかな。変動は色々なパターンがあるから一概には言えないけど、貯蓄が減っていく社会では経常収支が小さくなる、ってことになるかもね。

話を戻そう。
外為特会の金額が大きすぎる、という意見や、持ってる外貨準備金でもっと儲ける方法を考えろ、みたいな意見があるかも。

資料>

平成17年度外国為替資金特別会計

「国際収支状況」の推移


見ると、確かに80兆円規模の介入資金分と積立金なんかが15兆円以上あって、合計は100兆円を超える規模であるね。
これを、竹中さんは大臣時代に文句を言っていたんだよね(竹中大臣の要望)、
政府資産の圧縮が必要だ、みたいに。


特会の規模なんだが、平成15年度の謎の資本収支「流入超」を見ると、これは中々、と思ったりするのですよね。規模では30兆円を超えているからね。人間の血液にしても、ある程度余裕を持って使うのが普通で、これは変動リスクを軽減する、ということかと。ある程度「耐えられる」ということが必要なんですよね。滅多に起こり得ないようなリスク、例えば9.11テロみたいなのとか、ロシア通貨危機みたいなのとか、アジア通貨危機でもそうなんですが、ああいうことって「確率は低い、でも、現実に起こっている」ということなので、それにどのくらい対応できるようにしておくか、というのは、あくまで判断の問題なのですよね。まあ、50兆円もあれば問題発生確率の2SD近くまでの範囲はカバーされる、とか何とか考えられるかもしれないけれど、これが80兆円だとダメだ、とかにはならないと思うのですよ。為替変動リスクもあるので、円での価値だけの判断というのも問題かもしれないし。

なので、介入資金が多すぎてダメだ、という風には見えないわけです。しかも運用収入で儲かってるわけだし。これが毎回べら棒に損している、とかだったら、勘弁してくれ、とか思うかもしれないが、結構儲けちゃって一般会計繰入とかに回せているのですよね。それはそれでいいんじゃないかな、とか思うのですけどね。積立金は恐らく損失が出た場合を考えて、数年分くらい賄えるように、と思っていたのではないかと思うけど。介入する場合には、損だろうが何だろうが、ドルを買い続けねばならないわけで、いちいち損失を気にしてなんていられない、ということはあるだろうし。まあ、今後の方向性として、ドルばかりではなくユーロも保有するべきだ、みたいな意見はあるのかもしれないから、そこら辺は専門に考えてもらわねばならないでしょう。けれども、外貨準備金で儲けるような仕組みなんて作って、下手にアクティブで運用しようとして巨額損失を出したらそんときゃどうすんの、ってことは思う。こういうのは、リスクをある程度避けるために存在している金なのに、リスクを回避するべく金が「リスクを取りに行く金」として運用せねばならん、ってのは何か本末転倒のような気がするんだけど。

先祖代々のじいさんが、「この小判には手を付けちゃなんねえ。万が一の、命に関わる時に使うように取っておけ」と非常時用の資金を受け継いできたのに、この非常時用資金は眠ってるだけだから、もっと「米相場とか博打なんかの運用をやった方が儲けられるよ」というのも、ヘンじゃないの?ということ。あんまり余計なことに手出しをしない方が、無難なのではないかな、と。





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