まず、声を大にして言いたい。
この映画を見終わってエンドロールが流れ始めた直後にさっさと席を立って帰って行った人たちの気がワタクシにはまったく知れない。そんな人の気持ちはまったく分からないし、分かりたくもないし、自分がその人たちの気持ちを分かる人間じゃないことがむしろ嬉しいくらいだ。
9・11アメリカ同時多発テロ事件でハイジャックされた4機の旅客機のうち、ワールドトレードセンターに2機が激突、アメリカ国防総省ペンタゴンに1機が墜落、そしてその残りの1機のことを描いたこの作品。その機内で一体何があったのか?ボイスレコーダーや家族への電話からその真実を再構築した作品。
「映画」のデキとして言うならば、ポールグリーングラス監督の演出や全体の構成力は素晴らしい。この事実を映画にし、多くの人に伝えようという監督の真摯な態度が伝わってくるデキである。そして、「内容」について語るとなるとそれはかなり難しい作業になる。自分が自分の人生をどう受け止めているか、本当に心から純粋に愛する人がいるかなどによって衝撃の度合いは変わってくるような気はする。
ここで、イラクとアメリカについて語ることはやめにしておく。それは、複雑な背景があって、ワタクシも正確なことをすべて理解しているわけではないからということもあるが、むしろそれはメインの理由ではなく、それを語るのは少し違う気がするというのが、この作品を見た後の率直な感触だからだ。9・11そのものがアメリカの自作自演であるとか、そういう噂や検証が行われているが、この作品では誰が加害者であったのかということが問題になっているのではなく、この事件で実際に被害をこうむった人々がいることは確かなのである。このブログではアメリカの自作自演説についてはあえて触れないでおく。
それは、どちらが「悪」でどちらが「善」だとかいうことではなく、あの機内で起こったことは正に人間の根本的な生きるということへの情熱というか執念というものをまざまざと見たような感じがした。あの乗客たちにはテロリストたちは完全な悪であったには違いないのだけど、彼らが「悪」だから戦うとかそんな定義づけというか、大義名分めいたものはそこには一切存在せず、そのテロリストたちが自分たちの命に、人生に、愛する者に、自らの存在に立ちはだかるものであるから。だから、戦うのだ。そういう人間の生き様をそこに見た。
正義は勝つのか?「正義」とはいったい何のことか?そんなことがまったく分からなくなる中で、ただただ自分の人生を守り抜くこと。最後にはそれしかなくなるのかもしれない。
この作品はアメリカ擁護でも批判でもなく、ヒロイズムでもない。ただの人間の愚かさと傲慢さと強欲さ、そしてそれに反した優しさや無欲さや愛を観客は目撃するのだ。ワールドトレードセンターでの件でもそうであったが、救いのない事実の中で乗客たちが最後に家族に伝えたかったことはやはり「愛」であったということが唯一の救いだと薄っぺらい気持ちではなく心の奥深くで感じた。
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ユナイテッド93便の隠された事実が
ありありと描かれていましたね。
もし自分がテロリストの旅客機に同乗していたとしたら、、、。
想像しただけでも恐ろしいことですねぇ。
力を合わせ戦った乗客40名の努力もむなしく墜落してた93便。
この事件は心の中に深く刻まれ、今後も語り継がれるなんとも悲惨な事件でした。
>もし自分がテロリストの旅客機に同乗していたとしたら、、、。
もし、自分がテロリストの旅客機に“愛する人と”同乗していたとしたら…
ならば、ワタクシはともに死ぬことを受け入れられると思います。でも、もちろん究極の選択として仕方なくですが…
もし、愛する人とは別にその旅客機に乗っていたとしたら、、、考えるだけで身の毛もよだちます。
ほんと、その一言がまず言いたくなる映画ですね!
最後の乗客とテロリストとの攻防戦は鳥肌が立ちました。
TBさせて頂きます。
これを見ちゃったのでニコラスケイジの「ワールドトレードセンター」がかすみそうな気がしてるんです…