シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ヴェニスの商人

2013-09-27 | シネマ あ行

シェイクスピアの有名どころの作品はだいたい読んでいるんですが、なぜかこの「ヴェニスの商人」は読まずにきてしまったんですよねー。この映画も公開当時から気になっていたものの10年近く経ってしまいました。

中世のヴェニス。ユダヤ人はキリスト教徒から差別を受けていた。
主な登場人物は、
ヴェニスの商人アントーニオジェレミーアイアンズ
その友人バサーニオジョセフファインズ
ユダヤ人高利貸のシャイロックアルパチーノ
バサーニオが結婚を望んでいる娘ポーシャリンコリンズ

バサーニオはポーシャに求婚するためアントーニオに借金を申し込む。アントーニオの財産は航海中の船の上にあり現金を用意できない。アントーニオは普段ユダヤ人で馬鹿にしているシャイロックの元にお金を借りに行く。いつもの恨みを果たそうと利子の代わりにお金を期限までに返せなかったらアントーニオの肉1ポンドをもらうと言うシャイロック。

バサーニオはポーシャへの求婚に成功するが、アントーニオの船は難破。借金の期限が切れてしまったアントーニオはシャイロックに肉1ポンドをよこせと裁判を起こされてしまう。富豪のポーシャが借金の肩代わりを申し出るがシャイロックはもう期限が切れているとお金を頑として受け取らない。
男装し法学者に扮したポーシャが再三慈悲を請うがそれを拒否するシャイロックに、法律上はシャイロックが正しく肉1ポンドを取れと判決を下す。喜んでアントーニオの肉を切ろうとするシャイロックに「肉1ポンドは取っても良いが、契約にない血は1滴たりとも取ってはならない」とポーシャは言い、シャイロックはあきらめざるを得なくなる。
反対にシャイロックはアントーニオを殺そうとした罪で全財産を没収されかかるが、アントーニオの慈悲で財産の半分を駆け落ちしたシャイロックの娘ジェシカズレイカロビンソンに譲り、死刑判決の代わりにキリスト教に改宗することで許される。

それと同時にバサーニオとポーシャの恋のさや当て話も進行して、悲痛なシャイロックそっちのけで、金銀鉛の箱のうちから正しいのを選べばポーシャと結婚できるだの、ポーシャがバサーニオにあげた指輪を法学者(ポーシャだとバサーニオは気づいていない)にお礼としてあげちゃったりとちまちまと若い2人のアツアツっぷりを見せつけられる。

シェイクスピアのお話っていうのはだいたい元ネタがどっかにある場合が多いのでこの肉1ポンドとかいうよくできたお話も別にシェイクスピアが考えたわけではないんだろうけど、全体的な話の雰囲気としてはもうザ・シェイクスピアという感じ。だってこれ喜劇なんですよ。こんだけシャイロックが悲惨な目に遭うってのにね。シャイロックは血も涙もない冷血人間みたいに言ってるけど、彼は契約書を守り通そうとしただけだし、だいたいお金返せると思って安請け合いしたアントーニオが悪いんじゃんよーって思うんだけど、やっぱりこれ当時のイギリスで公演されたわけだから、キリスト教は善、ユダヤ人は悪みたいに描かれてて、それを民衆が拍手喝采したってわけなのかなぁ。

それでもシャイロックが「ユダヤ人には目も手も感情も情熱もないって言うのか?病気も違う、薬も違うって言うのか?」(本当はもっと長いセリフですが)と言うシーンはハッとさせられた人も当時でもいたかもしれない。実際シェイクスピアがどう思いながらこのお話を書いたのかは今となっては分かりませんけどね。

バサーニオとポーシャの話もシェイクスピアらしくて良いですね。法学者に化けたポーシャがあんなにしつこく指輪をくれって言うから断腸の思いで仕方なくあげたのに、それを後で責めるんだからまったくズルい女だよねー。でも、恋は盲目と言うかなんというか、シェイクスピアの世界では万事丸く収まってしまうのですよ。

誰かが別の誰かに化けてっていうのもシェイクスピアでは多いですね。これは映画で見るとどうしても「いやいやいや、ばれるやろ」と思ってしまうのですが、やはり当時は舞台の上でそもそも男性ばかりが演じていたわけですから、この変装っていうのもよく使えるカラクリのひとつだったんでしょうね。

映画としてはアルパチーノ、ジョセフファインズ、ジェレミーアイアンズという豪華な顔ぶれが素晴らしく見ごたえのある作品に仕上がっており130分という長さを感じさせません。

どうしても現代風の目で見るとシャイロックが一人可哀想に映ってしまうのですがねー。


暗殺・リトビネンコ事件

2013-09-25 | シネマ あ行

公開時、見に行きたかったのだけど行けず仕舞いでもう6年も経ってしまった。このたびやっとレンタルで見ました。

2006年ロンドンでロシア人のリトビネンコ元ロシア連邦保安庁(FSB)中佐がポロニウム210という放射性物質を何者かに飲まされて死亡するという暗殺事件が起こった。この作品はこの衝撃の事件の真相に迫るドキュメンタリーである。

アンドレイネクラーソフ監督はアレクサンドルリトビネンコ氏の暗殺事件の5年前から彼にインタビューをしていた。その貴重な映像と他の関係者のインタビューが綴られる。

まずリトビネンコ氏は1999年にFSBが秘密裡に行っている政治的脅迫や暗殺事件について内部告発をする。これについて彼は逮捕されるが最終的には海外逃亡しないという条件の下釈放されている。ちなみに1999年時点でのFSB長官は現在のプーチン大統領だった。

2000年にイギリスに政治的亡命を果たした彼は、2002年の共著の中でチェチェン紛争のきっかけとなった1999年にモスクワなどで起きたアパート爆破事件はFSBの自作自演であることを告発。2003年にはモスクワ劇場占拠事件にもFSBが関わっている可能性があることを指摘。

そして2006年に暗殺されているのである。

このドキュメンタリーに登場するアンナポリトコフスカヤというジャーナリストもリトビネンコ氏と同じようなことを告発し続け、リトビネンコ氏より少し早く暗殺されている。皮肉なことにリトビネンコ氏が殺害されたのはアンナポリトコフスカヤの殺害に関する情報を集めるために知人と会った先でということだった。

彼らははっきりと現在のロシアはテロ国家であると断言する。ゴルバチョフ、エリツィンの時代に自由の風が吹いたはずの旧ソ連邦だったはずが、現在では報道の自由は規制され、FSBが幅を利かす国になっているという。

FSBが行っているのは偽装テロや暗殺だけではなく、汚職、脅迫、資金の個人流用なども日常的に行われているという指摘もあった。プーチンが担当していた時代にとある町の食糧調達のための資金を彼らが横領したために住民が飢えている映像も流れていた。

アンナポリトコフスカヤを始め数人の知識人たちはこのような事態を招いているのは民衆の無関心が原因でもあると言う。政府の機関が不正を働いているとしても、チェチェンに対して非道なことをしているとしても、人々は気にしない。プーチンの人気があるのも経済政策がうまくいっているからか、それとも歴史的に政府に蹂躙されることに慣れてしまっているからか。

いやー、怖い。ほんとにヤバイよ、ロシア。ソチオリンピックなんて喜んで見てる場合じゃないわ。最近の同性愛者への弾圧も先進国とは思えないし。ネクラーソフ監督は大丈夫なのかなぁ。政府に逆らったら暗殺なんてどこかの映画の話みたいだけど、これが現実なんだもんね。当時のリトビネンコ氏の変わり果てた姿は衝撃的だった。ネクラーソフ監督のインタビューですべてを語りつくしたあとに爽快な顔をして堅く握手を交わしていたときの印象とは大違いで、あまりにも痛々しかった。

リトビネンコ氏が死ぬ間際にイスラム教に改宗したというのが非常に印象的でした。ロシア正教徒からチェチェン人の宗教であるイスラムに改宗することで、彼個人を通じてロシアとチェチェンが手をつなぐことを望んでいたのでしょうか。


旅するジーンズと16歳の夏

2013-09-18 | シネマ た行

お母さん同士がマタニティクラスで知り合い、1週間以内の差で生まれた4人の女の子たち。それぞれキャラクターはバラバラだけど、小さい時から4人は楽しいときも悲しいときもいつも一緒だった。16歳の夏、4人は初めて離ればなれでそれぞれの夏休みを過ごすことになる。その前日4人で買い物に行ったとき、古着屋で不思議なジーンズを見つける。体型がばらばらの4人全員になぜかぴったり合う魔法のジーンズだった。

4人はこの夏休み中、順番にジーンズを履いて過ごそうと決めた。1週間ずつジーンズを履き次の人に送る。ジーンズと一緒にその期間に何があったか詳しく書いて次の人に送るというルールだった。

初めは内気で真面目だけど容姿の美しいリーナアレクシスブレーデル。ギリシャに住む祖父母のところへ旅行に行く。海で溺れかけているところを助けてくれた青年と知り合い、惹かれ合うが祖父同士が天敵と知り怖気づく。

次にジーンズが回ってきたのは個性的で皮肉屋のティビーアンバータンブリン。彼女は一人地元に残りバイトをしながら負け犬たちのドキュメンタリーを撮っていた。ジーンズが間違って届いた先の少女ベイリージェナボイドが届けてくれて、成行き上ドキュメンタリー撮影の助手にすることになる。12歳のベイリーにつきまとわれてうっとおしいディビーはベイリーをジーンズと一緒に送りたいくらいだと言うのだが、ベイリーが病気だと分かり…

3番目はしっかり者のカルメンアメリカフェラーラ。小さいときにママと離婚したパパとひと夏を過ごせるととても楽しみにしていたのに、パパは新しい家族と一緒に住んでいて、もうすぐ再婚すると言う。新しい家族と仲良くするように言われるカルメンだったが、納得が行かず家の窓に石を投げて帰って来てしまった。

最後は、一見自由奔放だが母親の自殺で心に傷を負っているブリジットブレイクライブリー。サッカーの合宿でメキシコに行った彼女は、サッカーよりも禁止されているコーチとの恋愛に必死。

4人の女の子のひと夏の様子が、送られるジーンズとともに数珠つなぎ形式で語られるのかと思っていたら、4人の状況がモザイク的に入り混じって語られるので、場面転換があっちこっちと忙しい。一人一人の持ち時間がもう少し長めで回ってくれるといいんだけど、結構短めでハイ、次!ハイ、次!って感じです。その展開の忙しさにさえ目をつぶれば16歳の女の子たちのひと夏の成長物語として、とても爽やかに見られる素敵なお話です。

内気なリーナは殻を破って勇気を出すことを覚え、皮肉屋のティビーは素直に人生を謳歌することの大切さを知り、自分を抑え気味のカルメンは自分の気持ちをきちんと相手に伝えることを学び、奔放に振る舞い傷を隠しているブリジットは素直に悲しんでいいんだということを教えられる。

この魔法のジーンズっていうのが、どれくらい彼女たちに影響を与えるのかを楽しみに見たんですが、ぶっちゃけジーンズかんけーねーじゃん!!!って感じです。別にジーンズ関係なくても普通に彼女たちの青春物語を楽しむことはできるので、いいんですけどね。ま、ちょっと拍子抜けしたことは事実です。

それぞれの女の子たちを演じる女優さんがみな魅力的で良かったです。続編の「19歳の旅立ち」も見てみたいと思います。


グアンタナモ、僕達が見た真実

2013-09-17 | シネマ か行

パキスタン移民イギリス籍、イギリス在住の青年アシフアルファーンウスマーンはお見合いのためにパキスタンへ行き、結婚を決め、結婚式をするために友人たちをイギリスからパキスタンに呼んだ。ローヘルファルハドハールーン、シャフィクリズワーンアフマド、ムニールワカールスィッディキーの3人は一緒にイギリスからパキスタンへと向かう。

結婚式まで時間のあった彼らは、パキスタンの隣国アフガニスタンが米軍の空爆を受けている現実を実際に見に行こうとアフガニスタンに行き、そこで北部同盟とタリバーンの戦闘に巻き込まれムニールは行方不明になり、他のメンバーはアメリカ軍に捕らえられアルカイダの関係者だと見られ尋問を受け、グアンタナモに送られ拷問される。

本物のアシフ、ローヘル、シャフィクの証言インタビューと役者たちによる再現フィルムが交互に流れるセミドキュメンタリーになった作品。最初はどの役者が誰に当たるのかが把握しにくいが、特にその特定ができなくても筋を追っていく分には支障はない。

彼らがアメリカ軍に捕らえられてからの恐怖は計り知れない。アメリカ軍の兵士たちは毎日“訓練”と称して彼らを引きずり回し、食べ物を投げ渡す。グアンタナモに移送になってからはキューバの燦々とした太陽の当たる庭でケージに入れられ昼間は酷暑に耐え夜は寒さに耐えなければならなかった。彼らは一人ずつ尋問に連れて行かれ、縛られ殴られ大声で怒鳴られた。イギリス領事館の職員だという者やイギリス軍兵士だという者が現れ彼らの話を引き出そうとするが、ただ結婚式に来たイギリス人ということ以外、彼らが言えることは何もなかった。

暗闇の中、しゃがんだ体勢で手錠を床に留められ、大音量でヘビメタを流されディスコのような強烈な光が点滅する。そんな拷問を数時間続けられ、あとは独房に閉じ込められる。行ってもいないビンラディンの演説を聞きに行ったと写真を見せられお前が写っていると脅される。その日はイギリスでバイトしていたと言っているのだから、調べればすぐに分かるはずなのに。

彼らは2001年の9月に捕らえられイギリスに戻れたのはなんと2004年の3月だった。一人がそのビンラディンの演説の日にイギリスで警察に捕まっていたことが分かったのだ。解放してからのアメリカ軍兵士の態度もひどいものだった。彼らは一言も謝りもせず、最後まで高圧的な態度でアシフたちに接していた。彼らが解放されてから分かったのは、イギリス領事館の職員とかイギリス軍の兵士だとか言っていた人たちもアメリカ軍の兵士がそのふりをしていただけだったということだった。

兵士たちに抱えられて引きずり回される姿や、グアンタナモに移送するときの目隠しとヘッドホンの姿、大音量で音楽を流す手法など、いままでCIA絡みの映画などでよく目にしていた光景だった。いままで見ていた映画などはCIAが主役の話だから、その結果テロの重要な情報が分かるというパターンのものだったけど、「ゼロダークサーティ」や「HOMELAND」の陰でアシフたちのような目に遭った人たちがどれほどいただろうか。でたらめの証拠に「これはお前だろ。お前だ!お前だ!お前だ!」とやる尋問官の姿には吐き気さえ覚えた。

グアンタナモ収容所に関してはアムネスティからも人権侵害を指摘され、オバマ大統領は閉鎖を目指すとかずっと言ってるけど、いまだに閉鎖はされていない。最近もここからの釈放者の16.6%がテロ活動に戻っているという発表をアメリカ政府がしていたけど、何%が無実の罪で捕まった人たちだったという発表は一切ないね。当然と言えば当然だけど。

しかしブッシュを筆頭に当時の政府の高官たちはグアンタナモに捕らえられた者の多くが無実であることは知っていたという発表もある。たとえ無実の人を犠牲にしたとしてもたった数人のテロリストを捕らえられればそれでいいという考えのもと、彼の政策は進んで行ったのだ。無実の人たちを数百人、拷問してでもテロリストが捕まるならそれでいい。無実の人っつったってどうせイスラム教徒のアラブ人なんだから、痛くもかゆくもない。「テロとの戦い」という大義名分の前ではすべてが正当化された。そんな図式からは世界はもう抜け出さないといけない。


アップサイドダウン~重力の恋人

2013-09-13 | シネマ あ行

最初は興味なかったのですが、予告編を見て面白そうだったので見に行くことにしました。

富裕層が住む星と貧困層が住む星が上下に存在する世界。上の星のものは上の星の重力に、下の星のものは下の星の重力に引っ張られている。二つの世界は空のあたりで接近しており、貧困層に住むアダムジムスタージェスは山の頂上で富裕層に住むエデンキルステンダンストに出会い、2人は恋に落ちる。そこではロープでエデンを引っ張ればこちらの世界に呼べる距離。しかし、警備の者に発見されエデンは上の世界へ落ちていき頭を強く打って記憶を失ってしまう。エデンは死んでしまったと思い込んでいたアダムだったが10年後、偶然エデンが生きていることを知り、上の世界へ侵入してエデンに会いに行こうと誓う。

初めにこの「二重重力」というものの説明が入る。
1、すべての物質はそれが生まれた世界の重力に従う。
2、反対の世界から来たものは「逆物質」と呼ばれる。
3、「逆物質」に数時間触れた物は発火する。
ということらしい。

アダムがエデンを肩車したら2人の重力が上下に引きあってふわふわと浮くように歩けるとか、ちょうど真ん中のビルのオフィスでは天井に向こうの世界の人が逆向きに座ってるとか、この設定そのものは結構面白いと思うんだけど、アダムが上の世界にいるときアダム自身は上の重力に引っ張られているからオシッコが上に落ちていったり、ネクタイが上に向かって垂れさがったりする姿は、ある一定の年齢以上の日本人は昔ドリフでやっていたコントを思い出してしまって、どうも笑っちゃってダメだなぁと。それは笑えるシーンなんだけど、ドリフを知っていると笑う理由が違う。

恋をした相手を一途に想い、法律を破ってでも命の危険を冒してでも会いに行こうとするアダムは健気で悪くないんだけど、記憶を失くしたエデンがアダムを思い出すくだりもなんかえらい簡単に思い出したなぁって感じだったし、2人を邪魔するものの追跡とかもめちゃくちゃ甘いし、悪徳企業とされているトランスワールド社もなんか大した障害じゃないんだよねー。この設定ならもっと面白くできたと思うんだけどなぁ。アダムとエデンの2人は悪くなかったけどね。

あとは富裕層と貧困層がうんぬんっていうのは、最近めちゃくちゃ多い設定ですね。昔から多いのかな。この作品の場合はその対比がいまいちうまくできていなかった気がします。もう少し富裕層の裕福さをちゃんと見せたほうが良かったような。どちらの世界もあまりにCGっぽ過ぎという感じだったし。

最後も唐突にエデンが妊娠したから体質が変わって下の世界に来れるようになったとか、、、ちょっとこじつけ過ぎない?じゃあ産んじゃったらまた元に戻るの?なんかアダムの発明を友人のボブティモシースポールが改良して上下の世界を自由に行き来できるふうになったっぽいけど、あれも最後のナレーションで説明があるばかりで引っ張って引っ張って最後は口頭で説明して終わり、みたいな感じであっけなかったです。アダムの友人のボブは良い味出していて、ティモシースポールは「ハリーポッター」で悪役のイメージのせいで、また何か企んでるんか?コイツ。って思ってたけど、今回は純粋に良い人だった。

色々と面白くなる要素がたくさんあっただけに惜しい作品でした。


大統領の料理人

2013-09-12 | シネマ た行

フランスのミッテラン大統領の専属料理人だった女性のお話。初日のせいか小さい映画館だけど立ち見が出るほど盛況でビックリしました。浜村淳が取り上げたか???

田舎で料理学校とレストランをしていたオルタンスカトリーヌフロのもとに政府から迎えが来る。超有名シェフ・ジョエルロブションの推薦でミッテラン大統領ジャンドルメッソンの専属シェフとしてエリゼ宮で勤めることになった。豪華絢爛なエリゼ宮の料理にうんざりしていた大統領はフランスの伝統料理を作れるシェフを希望していた。

物語は初めなぜか南極探査隊のところから始まる。なんだこりゃ?と思っているとそこで南極料理人をしているのがオルタンスだった。オルタンスは大統領専属シェフを辞めた後南極料理人となっており、いま現在の南極での様子とエリゼ宮での様子が交互に語られる形式になっている。

エリゼ宮には伝統のしきたりがあり、主厨房は完全に男社会でオルタンスは邪魔者扱いされていた。それでも、助手のパティシエのニコラアルチュールデュポンは優秀でオルタンスに協力的だったし、ギャルソンのダヴィッドイポリットジラルドもオルタンスの味方だった。

大統領が求めるフランスの伝統的な郷土料理を出すためにしきたりを破り、契約している業者の食材ではなく、自分の田舎などから食材を取り寄せて次々に料理を作っていくオルタンス。大統領はオルタンスの料理を非常に気に入り、彼女と話す機会を持ちたいと考えるようになっていた。料理好きの大統領は初めてオルタンスとゆっくり話す機会があったとき、予定の10分を大幅に超えて数時間もオルタンスと話し込み、側近たちをやきもきさせたりもした。

オルタンスがレシピを言いながら(彼女の料理する時のクセ)どんどん美味しそうな料理ができあがっていくので、見ているほうはたまらない。ワタクシはフランス料理が好きなので特にかもしれませんが、彼女の作る料理をすごく食べたくなりました。主厨房が意地悪で腹が立つんだけど、パティシエのニコラもギャルソンのダヴィッドも良い人で、オルタンスは料理に関しては絶対妥協しないのだけど、ニコラもダヴィッドも同じようにプロ意識の高い人たちだったので、彼らの仕事ぶりを見ているのはとても清々しかったです。

それにしても、“豪華絢爛な料理ではなくフランスの郷土料理”っていうのが、鴨だー、フォアグラだー、トリュフだー、なんたらチーズだー、っていうからびっくりしたよ。あれが彼らにとっては本当に故郷の味なんだね。いやー、まじ食べたい(笑)

エリゼ宮の話がほとんどなんだけど、時々南極の話が挿入されるのが初めはうっとおしくて、「南極の話はいらんわ」と思いながら見ていたんですが、ラストのオルタンスが南極を去るときのお別れ会のエピソードを見て、オルタンスの人柄がとてもよく表れているシーンだったのでなんだかじーんときました。

オルタンスを演じるカトリーヌフロがすごく可愛らしい女性で、50代だけど色気もあって、料理に関しては頑固なところがあるオルタンスを非常に魅力的に演じています。

フランス映画らしく特に大きな起承転結がある作品ではないのですが、出てくる料理とオルタンスの人柄に飽きることなく釘付けになる作品でした。

オマケ1アメリカ映画ならこういうときビックリするほど似ている役者を起用してくるもんだと思うんですが、ミッテラン大統領のあまりの似てなさにかえってあっぱれな気にさせられました。

オマケ2映画の最中ずっとしゃべっていたおばさんがいたんですが、トリュフをスライスしてパンに乗せるシーンで「あれ、何?」と連れの人に聞いていたんですよねー。オルタンスがすごくトリュフを愛していただけに、トリュフを知らずにこの作品を見て楽しめたのか?と心配になりました。


サイドエフェクト

2013-09-10 | シネマ さ行

見に行くかどうかボーダーラインだったんですが、予告を見て面白そうだったので見に行くことにしました。

インサイダー取引で逮捕された金融マン、マーティンテイラーチャニングテイタム。刑期を終えて出所したばかり。

彼を待っていた美しい妻エミリーテイラールーニーマーラ。うつ病に苦しんでいて自傷癖がある。

車で壁に突っ込んだエミリーを診察したことから彼女の主治医となるジョナサンバンクスジュードロウ。妻ヴィネッサショウの連れ子を私学に通わせるためお金が必要で総合病院でダブルシフトをこなし、友人の医師2人とカウンセリング事務所も構え、新薬の実験にも参加している。

ジョナサンからエミリーのことで相談を受けるエミリーの以前の主治医ヴィクトリアシーバートキャサリンゼタジョーンズ。ジョナサンに新薬アブリクサをエミリーに飲ませるようアドバイスする。

アブリクサを飲み始めてから調子が良いというエミリー。よく眠れるようになったし性欲も戻り、憂鬱な気分にもならなくなった。夫のテイラーは副作用で起こる夢遊病のような症状が怖くて別の薬にするように言うがエミリーはアブリクサが一番合っていると言って譲らない。ある日の夜中、テーブルに3人分のお皿が用意され料理をしている音がキッチンから聞こえる。またエミリーの夢遊病が始まったとキッチンへ向かいエミリーを起こそうとするマーティン。エミリーが振り向いたその時、手に持っていた包丁がマーティンに突き刺さった。逃げようとするマーティンを追ってエミリーがさらに刺す。2回、3回。もがくマーティンが息絶えたころ、エミリーは何事もなかったようにベッドに戻って眠りについた。

翌朝目覚めたエミリーはマーティンの死体を発見し通報。エミリーは逮捕されるが、昨夜の出来事は一切覚えていない。こうなったのはアブリクサのせい。処方した医者のせい。

ピンチに立ったのはジョナサン。アブリクサを続けると主張したのはエミリーだったのに、他の患者は離れていき、パートナーの医師たちにも事務所を出ていくように迫られ、エミリーとの不倫疑惑、過去の患者のでっちあげ暴行話まで出てきて妻まで出ていってしまった。

このままでは引き下がれないジョナサンは無罪で精神病院に入院したエミリーに何度も接触をしているヴィクトリアシーバートに疑いを持ち、一発逆転の作戦をしかける。催眠療法で真実を探ると騙し、薬品の代わりに生理食塩水をエミリーに点滴。ただの生理食塩水を入れられただけのエミリーがなんと催眠状態になった。これまでのエミリーの症状はすべてウソだったのでは?ということに確信を持ったジョナサンだったが検察にはダブルジョパティー(同じ罪では2度裁判を受けさせられない)を持ち出され、単独で捜査していくしかなかった。

なるほど、こういう作品だったのですねー。これは面白い。あれだけもろそうに見えたルーニーマーラがどんどん悪女になっていく。まるで妖精のような見かけの彼女に騙される。なんかでも、彼女だけじゃなくて登場人物全員がどこかちょっと悪そうなのがいいね。殺された夫役のチャニングテイタムも優しそうな顔はしているけど、インサイダー取引とかで捕まったズル賢い奴だし、キャサリンゼタジョーンズは美人だからちょっと無表情にするだけで何か企んでいそうに見えるし、ジュードロウもハンサムだけど決して善人顔ではないんだよねー。

サスペンスものなので、楽しめるかどうかは個人差が大きいと思うんですが、ワタクシはかなり楽しめました。この設定のドラマではありがちな展開だとは思うのですが、それでも面白いと感じたのはやはり物語を引っ張るのがジュードロウというニヤけた男前(あ、今回はニヤけシーンは少なかったけど)で、2人の美人を向こうに回して右往左往するからですかね。それがワタクシ好みだったのだと思います。

ラストシーンも既視感はあるけど、やっぱりゾッとする&スッキリするって感じでカタルシスを感じられてワタクシは好きでした。


復讐捜査線

2013-09-06 | シネマ は行

私生活のゴタゴタのせいかどうかは知らないが主演作から遠のいていたメルギブソンが2010年に久しぶりに主演を果たした作品。

ボストン警察の刑事トーマスクレイブン(メル)の元に娘エマボヤナノヴァコヴィッチが帰省してくる。エマはとある研究所に研修生として勤めている。喜びの再会を果たす2人だったが、どうもエマは体調が悪そうだ。夕食を作っているときにエマの体調が悪化し病院に連れて行ってくれと言う。「お父さんに話さなければいけないことがあるの」とも。2人で病院へ行こうと玄関を出た瞬間、「クレイブン!」と叫ぶ声と同時にショットガンの銃声が。エマはお腹を撃たれ父の腕の中で死亡してしまう。

刑事である父親を狙った犯行であろうという推測の下捜査が開始するが、トーマスは自分を狙うほどの犯罪者などいないと考え娘を狙った犯行だとして独自に捜査を始める。

エマのボーイフレンドのバーナムショーンロバーツや友人メリッサカテリーナスコーソンの証言、トーマスに近づいてきた謎の男ジェドバーグレイウィンストンの話からエマが勤めていた研究所に何か手かがりが潜んでいることを知るトーマス。所長のジャックベネットダニーヒューストンにも話を聞くが、それはエマが暴こうとした巨大な陰謀の入り口だった。

まー、メルも歳取ったね。ワタクシが映画ファンになったころちょうど乗りに乗った若手~中堅あたりの存在で、結構長い間ワタクシにとってはアイドル的な存在の人だったんだよなー、と懐かしく思い出しました。顔はシワシワになったけど、やっぱカッコ良かったよ。なんかくたびれ感を出したかったのか歩き方とかちょっとロボットみたいだったけどね。いまの年齢からまた渋さを増していい演技ができるようになっていく役者さんって多いのでメルにも頑張ってほしいところです。

例によって邦題がヒドイんだけど、最後の最後でバンバンバンバーンってみんな殺しまくっちゃったときには「あー、この邦題でも合わんことはないな」と思いました。それまでは陰謀を暴く結構ハードボイルドな展開で邦題なわりには静かに話が進んでいく印象だったんだけど。この邦題で内容をイメージして見た人にとってはアクションが物足りないと感じたかもしれません。

被爆していたエマとの接触で自身も被爆したトーマスは死期が近く、謎の男ジェドバーグも病気で同じく死期が近い。その2人の捨て身の復讐がいいね。あーいう陰謀だと相手が逮捕されるとか望み薄だし、もうこの展開では殺しちゃうしかないやね。

しわがれたメルギブソンが死んでしまった娘の幼いころを思い出すシーンが随所に挿入されるんですが、そのエピソードのひとつひとつがとても可愛らしくて良かったです。小さい女の子がお父さんの髭剃りの真似をするシーンなんてかなりな名シーンだと思いました。


アウェイク

2013-09-04 | シネマ あ行

全身麻酔の手術中に意識だけが戻ってしまいすべての感覚はあるが身体の自由はきかず激痛を感じながらそれを訴えることができなくなるアネセシアアウェアネス(術中覚醒)という状態に陥った青年の話という情報だけで見ました。

大富豪の青年クレイトンヘイデンクリステンセンは過保護な母レナオリンと2人暮らし。ただでさえ過保護な母親だが、クレイトンが心臓に疾患を抱えているためさらに過保護になっていた。クレイトンは母の秘書のサマンサジェシカアルバと婚約しているが、家庭環境の違いから母に反対されるのが怖くて言いだせないままでいた。

そんな秘密の関係に業を煮やしたサマンサが別れを決意したとき、クレイトンはサマンサを離したくないと母に交際をオープンにし母には拒絶されたがその足で2人で結婚式を挙げた。初夜を迎えた2人の元にクレイトンの心臓移植のドナーが見つかったと知らせが入る。急いで病院へ駆けつける2人。そこに母もいてクレイトンは母と妻を残し手術台へと向かう。

母親はクレイトンの親友であるジャックハーバー医師テレンスハワードは医療訴訟を抱えているためその腕を信用しておらず、自分が薦める医師で手術を行うように主張するが、クレイトンは親友を信じると言ってその申し出は却下した。

さぁ、ここからだ。麻酔医が10から反対に数を数えて~と言う。10、9、8、そろそろ深い眠りへと落ちるはずのクレイトン。「メス」というジャックハーバー医師の声が聞こえる。「おい、待てよ。オレまだ起きてるぜ。麻酔ってこういうものなのか?意識はあるけど痛みを感じないだけなのか?」そう思っているクレイトンに激痛が走る。「!!!!!!!!ふざけんな。いますぐやめろーーーーーー!!!」といくら叫んでいるつもりでも周りの人間には一切聞こえない。クレイトンの感じている激痛をよそに淡々と手術は進んでいく。

おおおーーー、こえーーー。こんなことあり得るんかー。最初のテロップで毎年2100万人が全身麻酔手術を受け、うち3万人がアネセシアアウェアネスに陥るって書いてあった。1000人に1.5人?そんなに少ない数字じゃないぞ。怖すぎる。ワタクシも全身麻酔手術を受けたことがあるけど、こんなこと知らずに受けて良かったぁ。

でも、この話どうなるの?その怖さは分かったけど、まだ話は中盤やで?これからどうすんの?と思っていると医師たちの話がどうも怪しい。

親友で執刀医のジャックがなんか変なこと言ってるぞ。移植する心臓に薬を打ってオレを殺そうと計画しとるやないかー!ほんで、オレの新婚の嫁さんまで手術室に入ってきて「何モタモタしてんのよ、早よ殺さんかいっ!」って喝入れとるやんけー。こいつら全員グルなんかー。サマンサとは1年前に知り合ってめちゃくちゃ愛し合ってると思ってたのに、、、あれは全部芝居やったんか、、、ジャックのことかって親友や思てたのに、どーゆーことやねん!

サマンサは実は元々ジャックと知り合いでグルになってクレイトンを騙し、結婚にこぎつけたところで殺害&遺産たんまりという計算だったらしい。ジャックも医療訴訟を抱えてお金が要るのだとか。そうこうしているうちに薬を打たれた心臓を移植されたクレイトン。え?ここで死んじゃうの?

しかし心臓移植手術中は外部の機械につながって心臓が止まってもまだ生きている。この機会を止める許可を取りに来る医師。何かが怪しいと感じた母親はサマンサのいない隙に彼女のカバンを探り正体を知る。あの瞬間に母親がすべての伏線をつなぎ合わせたってのがビックリですが、なんと母はクレイトンを助けるために自ら命を絶ち友人の医師に頼んで息子に心臓をあげる。

ってまーねー、手術に関してはそんな簡単じゃないんじゃない?とか麻酔医が中座?とか母親の友人の医師がここの病院の医師じゃないのにその場でいきなり手術?とか疑問はいっぱいあるんだけど、あんまり細かいところはいっかーって思うことにしました。

しかしねー、ジェシカアルバがさー、もう可愛すぎるんだよー。クレイトンと恋人を演じてるときね。もう誰もが羨む彼女って感じでさー、こんな可愛い子を母親に隠して泣かせるコイツはサイテーだとかまで思っちゃってたからね、すっかり騙されたよ。しかも母親役がレナオリンでしょ。怖いんだもん、この人の顔。ワタクシはすごく好きな女優さんなんだけど、こんな人が姑だったらそりゃ怖いわ。そりゃ誰だってジェシカアルバの味方したくなるわ。んで騙されるんだわ。これはもうキャスティングの勝利。

上映時間85分ととても短くまとまって適度なスリルを味わうには良い作品です。


THE 4TH KIND フォースカインド

2013-09-03 | シネマ は行

アラスカ州ノーム。夫を何者かに殺害された心理学者のアビゲイルタイラー博士ミラジョヴォヴィッチは夫の遺志を継ぐために夫がしていた研究を続けている。そのためこの地域特有の不眠症の患者たちのカウンセリングを行っているのだが、見知らぬ者同士の患者たちが一様に眠れない夜にフクロウを見たと証言していた。その証言を裏付けるために催眠療法を施した患者がその夜家に帰って謎の言葉を発し、妻子を殺害し自らも自殺してしまう。

さらにその真相を追うための他の患者のカウンセリングを続けながら、別の角度からも謎を追う博士だったが、、、

まず映画の初めにミラが画面に現れ「こんにちは、ミラジョヴォヴィッチです」と言ったからびっくりした。なんじゃ?と思って見ていると「これから皆さんに実際に起きた事件のビデオをお見せしながら物語を進行します。実際のビデオには衝撃的な映像が含まれています。最後に判断するのはあなた次第です」とかなんとか言うもんだからさー、信じちゃったじゃんよーーーーー!!!

このアビゲイルタイラー博士のインタビューってのと、彼女が行った患者へのカウンセリングやら催眠療法の映像やらが映画の場面と並行して2画面にして映し出されるわけよ。公開時のマーケティングを知らなかったワタクシは途中まで真剣に信じてたよ。こっええーーー!と思いながら見てたよ。

途中のシュメール語がどーたら、アブダクトがどーたらって言うところまではね。。。
そのあたりからちょっと雲行きが怪しく思えてきて、“本物の”タイラー博士のインタビューを見ていたら、この人どう見ても“演技”してるよねーと思えてきた。あー、そういうことかー。これ「ブレアウィッチプロジェクト」とかとおんなじでこの「本物です」って言ってる映像も全部ウソなわけねー、ということが分かりました。これをネタバレしちゃうと面白くもなんともなくなっちゃいますね。すみません。

映画の評価としてはネットのレビューとか見てもらったら分かりますが、良くはありません。ワタクシもそんなに良い点をつけるつもりは全然ないんだけど、見ている最中はなんか面白かったんだよねー。患者たちに起こる現象とかも怖かったし。実話の映画化によくある後日談的な説明を最後にテロップで流すってとこまでやってて真実味出してたし。アブダクトとか信じないタイプのワタクシでもそう感じたんだから信じている人はもっと面白いかも。このブログに取り上げるほどかどうかってのは難しいところだけど、実際楽しんで見たことは事実なので取り上げることにしました。ミラジョヴォヴィッチ好きだし、ひいき目も大いにありますが。アクションしてない彼女もたまには見たいというミラファンにオススメです。

オマケ一応このブログでは日本で一般的に使用されている「ミラジョヴォヴィッチ」と表記していますが、ミラ自身は故郷のウクライナ(キエフ)での発音にこだわっていてアメリカでも「ミラヨヴォヴィッチ」といつも自己紹介しています。この作品の冒頭で本人が発音しているのが聞けるので聞いてみてください。