DREAM

幽白蔵馬受とかアイマスとか他ゲームとかたまに猫な妄想ブログです

バレンタイン連作

2019-02-14 16:46:15 | オールキャラ 黄泉×蔵前提
ACT1 飛影

「…………………………」
自分の部屋の数少ない家具ー小さなテーブルだーの上に置かれた透明な袋
(密閉出来る袋だと蔵馬に聞いた事がある)の中身を見て飛影は首を傾げた。
菓子だ。
この時期になると人間界被れの輩が騒ぐ行事の際に手渡すチョコが使われた代物だろう。
飛影はチョコはあまり好きではない。溶けると手に付くのが嫌だからだ。
それにここ数年この時期に軀が渡してくるチョコが飛影の好みから激しく
逸脱した物が多く(:例 1ガチガチに固まった歯が欠けそうなチョコ
: 例2 控えめに言ってかりんとうに似たチョコ等)辟易しているのだ。
だが、今年はどうした事だ。
見た目はまともな部類のパンに似た菓子をマジマジと見てから、袋を開けるとふわりと甘い香りが漂う。
不味そうな匂いもしないし、固そうな感触も無い。
という事はこれを食べても歯は痛まず、腹も壊さない確率が高い。
しかし何故、こんな奇跡が起きた?
軀のチョコを作りの師匠は蔵馬だ。
師匠とは言っても台所を借りているだけで大体蔵馬の忠告を無視し自分の作りたい様に作った
食えるか食えないかで言えばギリギリの線でどうにか食える物体を飛影に寄越す。
蔵馬が手解きしたにも関わらず、に。
なのに何故この菓子は美味そうなのだろう?と飛影は更に首を傾げた。


ACT2 幽助

「あれえ、幽ちゃんナニコレ?」
「何ってバレンタインだろ、だからチョコ蒸しパン」
「はあ、こりゃ手が込んでんねえ……、あの美人さんの手作り?」
「ん、手作り」
「貰っても良いんだろ?」
「バレンタインだからな」
良いもん貰ったーとホロ良いで帰途に着く客を見送って幽助は温かい茶を一口飲む。
真冬の夜には酒も良いが熱い茶も有り難いものだ。
……大変だった。
本当に大変だったのだ、軀と菓子を作るのは。

何せ言う事を聞かない。
人に教えを乞うならばそれなりの姿勢は必要だと思うのだが『材料と昼飯を買って来た』
からそれはチャラになると思っているのが神経わからん。
ー軀持参の『特選牛ハラミ丼』はとんでもなく美味だったが。
作りたいものがあったとしてもそれを作れる腕が無いのなら簡単なものから始める、と言うのが
許せないのだろう。出来ないからやらないでなく出来ないならば出来るまでやる!という考えは
素晴らしいとは思うが周囲(今回は幽助)の迷惑を慮る配慮は一切無い。
結果、本格的なチョコマフィンを作りたがる軀をどうにかだまくらかしガキの頃に
温子が気が向くと作ってくれたホットケーキミックスで作る蒸しパンをアレンジした
(とは言ってもホットケーキミックスに湯煎して溶かしたチョコを混ぜただけだが)
チョコ蒸しパンを完成させマフィンだと言い含めて魔界に帰らせたのだ。
軀が持って帰らなかった分の蒸しパンは一つず透明な袋に入れハート型のシールを貼って
百均で買った籠に積んでカウンターの隅に置いた。
常連のおっさん達は幽助(と軀)作とは気づかず勝手に『幽ちゃんの仲良しの美人のお姉さん
(だと勘違いされてる蔵馬)作』だと二重に勘違いし持ち帰る。
はあと息を吐き出すと真っ白だ。
素朴な疑問だが、カップケーキとマフィンと蒸しパンの違いってなんなんだろう?と幽助は思う。
蒸しパンは系統がちょっと違うのはわかるがそれ以外の二つはどうなんだろう。
使う材料?味?工程?などと悩むが特別調べるまでの疑問では無いのだ、それに。
「いや〜寒いね!幽ちゃん!醤油でチャーシュー増量ね!」
調べてる暇なくこうして客が来る。
「おう、酒はどうする?」
「酒?酒は良いよだって今日は……」
客の視線は蒸しパンに向いている。
「バレンタイン用」
「あ〜うんそっかーそうだよな〜。これ、あれだろ?(あの美人のお姉さんの)手作り」
「ああ(オレと軀の)手作り、持ってっていいぜ」
いやあ、悪いねといそいそとおっさんは鞄に蒸しパンを仕舞う。
ー嘘は言ってない。それに蔵馬が逃げたから自分が被害を被ったのだ。
だったらこれくらいの役得はあったって良いだろ、と屋台に向かって歩いて来る
これまた常連の親父共を目に止めて幽助は一人神妙に頷いた。


ACT3 桑原和真

「桑原くん、はいチョコ」
「……へ?」
「へ?じゃなくて今日バレンタインでしょ。男子バイトと社員に女子一同からチョコ」
おお、そうか。と桑原は胸を撫で下ろした。
なんかの間違いで本命チョコなぞ寄越されたら嬉しいが困るからだ。
「どうしたのチョコいらないの?」
不審そうに自分を見る桑原に呆れたのか女子バイトは眉間に皺を寄せる。
「あ、いや頂きます」
差し出されたチョコを片手で受け取り頭を下げると作業の邪魔にならない様にと
エプロンのポケットに仕舞う。

「桑原くんてさあ」
用事は済んだ筈なのに持ち場に帰らない女子バイトに周囲からチラチラと視線が飛ぶが
本人は気付かないふりを決め込んでいる。
「……はい?なんすか」
「彼女い」
タイミングが良いのか悪いのか定時のチャイムが鳴る。
「オレ今日定時なんすよ。……さんは?」
「あ、あたしも定時!」
少し弾んだ声で返されたが、当の桑原は彼女の声が弾んだ事は全く気にしていない。
「マジすか?いつも残業だから今日も残業なのかと思ってました」
「バレンタインくらいは定時だって」
「へー」
二人並んでタイムカードを押しロッカー室への廊下を雑談しながら歩く。
最近土日にだけ来るキッチンカーのカレーが微妙だとか、駅前のコンビニで売られていた
気に入ってた菓子が最近入荷しないだとか。
「あ、じゃあ」
「あのさ、桑原く」
男子ロッカー室の前で立ち止まった桑原に意を決して彼女は顔を朱に染めて口をひらー
「桑原ー、彼女お迎え来てるぞー!」
「へ…、あ、えええええ!?」
ニヤニヤ笑いながら三十代程の男が近づいて来る。
「しかしかっわいいなーあの子。本当に彼女?従姉妹とかじゃなくて」
真っ赤な顔で彼女です!と叫ぶと桑原は電光石火の勢いでロッカー室に飛び込み
ものの数秒でカバンとコートを肩に駆け出す。
「…………いやー聞きしに勝るラブラブっぷり……。お、なっちゃんどうした?桑原に用事だった?」
「…………別に……」
「桑原あいつモテなさそうに見えて意外とモテるよなあ。
今時っぽくないから目立ってはモテないけど、あいついいなって言う人結構いるし」
能面のような顔で女子バイトーなっちゃんは無言でロッカー室へと歩み去る。
ーいいヤツだけど恋愛対象外。
そんな周りの桑原への評価を間に受けた自分が馬鹿だったのだろう。
こちらから声を掛けずとも重い荷物を持ってくれたり、体調が少し悪い時は気遣ってくれる。
帰りが駅まで一緒になる時は自然に車道側に立ってくれる。
好きになるのに時間はあまりかからなかった。
自分がそうだったのだから同じ様に感じたひとがいてもおかしくない。

自分のロッカーを開けてバッグの隣に置いた赤い紙袋を覗く。
初めて専門店で買ったチョコ。二時間分の時給が飛んで行ったが桑原に渡すのだからと思い切った。
「……思い切ったのになあ」
窓の外を見ると背の高い男と小柄な白いコートの女が並んで歩いてる。
時々男は耳を左に傾け笑う。身長差が随分とあるからだろう。
「いいなあ」
もうちょっと出会うのが早かったら、桑原を好きになるのが早かったら
あそこにいたのは自分だったかもなあ、となっちゃんはチョコを齧りながら考えた。


ACT 4 黄泉

『今年は出張で行けないから先渡し』と日曜に蔵馬から渡されたチョコはもう無い。
修羅の分と合わせて(個人個人で渡すと『パパのモノはボクのモノボクのモノはボクのモノ』と言う
強権が発動するからだ)贈られて来たチョコブラウニーは甘さが控えめで甘い物が得意でない
黄泉でも『美味』だと感じられる物だった。
自ずから淹れたコーヒーをひとくち含む。
これに似合いそうな味だった。バレンタイン当日に蔵馬からの贈り物が一つもないのは
淋しいと残して置いた最後の一切れは修羅の腹に消えた。
『だってボクとパパのケーキでしょ、だからボクが食べたんだよ。いけない?』
と澄んだ眼で問うしたたかな息子に舌を巻きつつも最後の一つを食べる時は食べていいかを
必ず聞く事を約束させた。
しかし、と思う。
蔵馬からのチョコ。
そんなシロモノを口に出来る日が来るんだぞと昔の自分に伝えてやりたい。
いや、伝えた所で盛大に笑いだすか、怯えられるかのどちらかか。
『蔵馬が菓子なんか寄越す訳ねえだろ』か『何入ってっか分かんねえモン食えるか』か。
確かに、千年前の蔵馬は自分で料理などしなかった。
薬膳料理と言う名の毒物なら嬉々として作り味見と言う名の実験にはよーく付き合わされたが。
本人は『喰わずとも生きていける』から味などには気を使わず栄養のみを追求していた様に思う。
「それがなあ……」
大人である黄泉と子供である修羅が双方納得する出来の菓子を贈って来るとは。
ー色々とあったのだろう。
黄泉に話した事も話してない事も。
こちらも蔵馬に話している事も、話していない事もある。
それでいい。
全てを知りたい訳ではないし、全てを知って欲しい訳ではない。
「パパー!」
バタバタと駆けて来る足音と弾んだ声に扉の向こうに顔を向ける。
来れないと言っていた癖に。
自然と綻びそうになる口元を引き締めてお帰り、と言いながら黄泉は扉を開けた。


おまけ

何度聞いても「っしくねーしゃーまーす!!」としか聞こえない雄叫び。
これを聞くのはもう十数回目だ。
何をお願いしているのかと言えばアレだ。
闘魂注入っぽいアレだ。
美味なラーメンを作成する神の腕と類い稀なるカリスマ性を併せ持つラーメン屋店主に
心酔する『神成アン』(くそダサいと思う)達がバレンタインに託けて店主に願ったのだ。
『闘魂注入して下さい!』と。
深く考えないタチの店主はソレを了承しもの凄く手加減した闘魂注入を嫌な顔せず行っているのだ。
丸くなったもんじゃな〜、と本日急用で欠勤したぼたんのピンチヒッターとして
呼ばれたコエンマは厨房の片隅で温かい烏龍茶を飲み干した。





〜バレンタイン!!
なんだえーと三年目くらい?
三年も良く書きますね笑全く。






















最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (こりる)
2019-02-15 20:59:38
それぞれのバレンタイン、楽しませて頂きました!
黄泉様編が良いのは当たり前なんですが、個人的には桑雪ちゃんに激萌えしました。桑ちゃん、本当に良い男ですよね!!!

コメントを投稿