DREAM

幽白蔵馬受とかアイマスとか他ゲームとかたまに猫な妄想ブログです

突発SS 正月連作

2020-01-04 14:29:33 | オールキャラ 黄泉×蔵前提
ACT 1幻海邸

ここ数年に及ぶ食欲&酒飲み魔人達との血で血を洗う攻防を制した勝者、凍矢は感慨深げに一つ息を吐いた。
年末年始は何かと金がかかる、それは妖怪と言えど人間と同じだ。
六人で暮らし始めた当初は、年末年始くらいは少しくらいの贅沢をしても良いだろうとの
気の緩みから幾たびも悲劇を引き起こされたと、思い出す。
財布を渡し、おせち以外の三が日分の食料の買い出しを頼んだ筈が、何故か酒をしこたま
買い込んで来やがった酎。酎に便乗しちゃっかりと自分の食べたい菓子とインスタント食品を手にした鈴駒。
この二人はダメだと学習した翌年は、酒と食べ物にあまり興味がない鈴木と死々若丸に買い出しを頼んだ。
が、彼等もやってくれた。意味不明の薬品やら凍矢には何に使うか見当もつかない
機械部品を山と手にして鈴木は満面に笑みを浮かべ帰宅。
そしてつまらなそうな顔をした死々若丸が凍矢に渡して来たのは賞味期限一か月未満の見切り品の機能性食品の段ボール箱。
更に翌年。この子なら、この子だけは大丈夫!と一縷の望みを託し送り出した陣は、
凍矢の望み通り必要な食料をキチンと買い込んで来た。
やはり信用出来るのはお前だけだ!と感動した凍矢は年越し蕎麦を陣の分だけ豪華に
(具体的には海老天を二本に)してやった、陣だけずるいとの非難の声を黙殺して。
陣は本当に頼りになる、オレは何故最初から陣に頼まなかったのだろうかなどと
考えながら眠りについた。
明日の雑煮は餅とほうれん草の他に鶏肉にしようと頷きながら。
そして翌日。
三日分の食料は頭の黒い鼠達に全て食いつくされていた。
三日分の食料以外の乾麺や缶詰、ご近所からお裾分けで頂いた餅、
黄泉からこっそり横流しされた日持ちのする菓子や酒類も、
軀の領地で豊漁過ぎて困っているからと格安で購入出来た地魚のフライも。
……どうしてもと幽助から拝み倒されて数枚受け取り納戸にしまっていた
魔界スカイフィッシュの干物だけが、手付かずで残っていたのが何より許せなかった。

今年は、全てが予算内に収める事が出来た。それどころか余ったくらいだ。
なぜなら。
酒飲み魔人の酎を魔界の辺境で開かれるオールナイトカウントダウン酒飲み大会に送り出し。
鈴駒は流石に小金を握らせ二人で過ごすようにと焚き付け。
鈴木と死々若丸は癌陀羅ケーブルテレビからの
『冬休み子どもスペシャル三が日生放送!みっちゃくがんだらにじゅうよじかけるさん』
の出演オファーを凍矢が快諾し。
陣は去年と同じく大晦日は幽助の店を手伝い、そのまま今日まで帰ってきていない。
多分二人で酒盛りし爆睡し又酒盛りし爆睡し、を繰り返しているのだろう。
うんうんと頷き凍矢は立ち上がり、テーブルにおかれた皿の上に鎮座するアルミホイルに
包まれた塊を見てほくそ笑んだ。
日々倹約に努め家事やご近所付き合いのみならず、大統領府から要請される仕事をこなした
自分への一年に一度のご褒美。
決して法外な値段ではなく、閉店ギリギリまで粘って半額シールが貼られた
ローストビーフ用肉500グラム。
半分は皆で食べようとサイコロ状にカットし冷凍庫にしまった。
そして半分は自分の為のものだ。
六人で暮らし始めてから始めて自分が迎えた穏やかな正月。その終わりに相応しい晩餐。
肉は薄く切ろうか、それとも厚く切ってしまおうか。
主食はパンにするか米にするか。
ソースは醤油と玉ねぎであっさり作ろうか、それとも貰い物の赤ワインと蜂蜜でつくろうか。
我知らず口元を緩ませていた凍矢は気付いていなかった。
幻海邸へ続く長い階段の下になんの奇跡か悪夢か五人が一堂に介し、
腹が減ったと騒ぎながら近づいている事に。

ACT 2 皿屋敷町内某コンビニ

「和真さん、こちらで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫っス!姉貴と親父の酒と……永吉達の飯」
「明日の朝用の牛乳とパン、ですね」
「これだけありゃ充分っス、じゃオレ買ってくるんで!」
待ってますね、と告げて雪菜は店の外に出た。正月明けだからか二人が向かった
コンビニは人が多くレジには列が出来てい。ならば少し時間がかかるだろうと思ってだ。
真冬の空気は冷たく澄んでいて、氷の眷族以外には厳しく辛いが雪菜には心地良い。
本当は薄着で動き周りたいがさすがに奇異の目で見られるので、周囲に合わせ
コートを着込む。それでもタイツを履かず素足に靴下だけなのは雪菜なりのこだわりだ。
風に揺れたスカートが素足に触れる感触が好きだからだ。
あの感触は以前着ていた着物では味わえなかった。
大きな歩幅で歩くこと、地面を強く蹴って走ること、階段を数段飛ばして駆け上がること、
みんな着物では難しかったがスカートやパンツでなら簡単に出来る。
小さく鼻歌を歌う。これも以前は出来なかった。
陰気なあのくにでは明るくあろうとする事がまるで罪であるように扱われたからだ。
「ねーおとーさん。ゲームのカード買っていい?」
「え〜お年玉もう使っちゃうのか?」
「だってお正月限定アイテムなんだよ、五日までなんだよ。ねーおかーさんにはナイショでさ〜」
「しょうがないなぁ、千円だけだぞ」
「やった!ありがとう!じゃあアイスはおとーさんのおごりね」
雪菜の脇を通り過ぎた親子が楽しげに会話する。
あのくにでは子供のはしゃぐ声など聞こえず、吹雪の音に全てかきけされてしまう。
自分の生まれたくにではあるけど、雪菜はあのくにに溶け込むのが嫌だった。
あのくにの住人と同じように無感動に生きるのが嫌だった。
嫌で嫌で兄を探すと言う大義名分で自分を鼓舞して、くにを抜け出した。
平穏な道のりでないことはわかっていたけれどそれでも、冷たく寒いだけで
澄んでいないあのくにの空気を吸うのはもう、嫌だったのだ。
それに。
「雪菜さんお待たせしましたって……どうしたんすか?」
「……え?」
「いや、なんかキリッとした顔してたんで……寒かったんすか!?」
自分が待たせ過ぎたせいですまないと謝る桑原に困ったように雪菜は微笑み手を伸ばす。
「雪菜さ、ん?」
「はい、少し待ったかも……それで私、寒かったんです。手を繋いで良いですか」
「ははははははい!」
どもり慌てながら桑原は雪菜の手をそっと握る。
雪菜は桑原を見上げながら楽しげに笑い言う。
「こうしてると暖かいですから」
こんなに暖かい『もの』を知ってしまったら、もうあんなくにへは
戻れないなあと心の中で呟いた。

ACT 3 癌陀羅

もうやだ飽きた。
と疲れからか不機嫌に修羅が地団駄を踏んだのは三十分ほど前。
年に数回だけが分刻みのスケジュールは子供には些か辛い。
普段比較的自由に過ごしている反動もあるのだろう(お気に入りの
子供番組の特番が見れなかったのもそれに拍車をかけていたようだが)。
朝から晩まで自分と蔵馬の側で子供らしく無邪気に笑う可愛らしく聡明な王子を
四日間演じた修羅は偉いと黄泉はしみじみ思った。
とは言え黄泉も疲れている。
体力も気力も十二分にあるので、何が疲れたのかと言えばー胃がだ。
朝から晩まで各地から訪れた賓客との宴があったせいだ。
黄泉自身が人間界で購入してきた山海の美味珍味は確かに美味いが毎食は飽きる。
幾ら王様だとは言え毎日毎日美食三昧している訳ではない。
ー時間がない時は握り飯片手に書類作業なんかも熟せないと魔界の王様
(と大統領補佐官)は務まらないーもっとあっさりとしたものが食べたいと
胃が悲鳴を上げていたのだ。
蔵馬謹製の胃薬を飲み腹を摩りながらソファに腰を下ろす。
知らず凝っていた肩を揉み解しながら口淋しいことに気付いた。
ー何か軽く食べるか。
とは言え癌陀羅総長のプライベートスペースのキッチンに食料は乏しい。
あるのは乾物とコーヒーくらいしかない、下に連絡すれば何かしらはあるだろうが、
こってりとした脂とソースに塗れた肉の塊を食う気にはなれない。
かと言って何も腹に入れず寝るのも淋しい。
どうしたものかと悩んでいると風呂から上がった蔵馬が、怪訝そうな視線を
こちらに向けているのに気付いた。
「どうした」
「おまえこそどうしたんだよ、百面相は気持ち悪いだろ」
「気持ち悪い……」
僅かに傷ついた黄泉の横に蔵馬は座る。
「……で」
「ん?」
「百面相の理由」
「口淋しいから何か食おうと思ったんだが」
「ここには何もないけど……あ、出汁用の昆布ならある」
口淋しいからと昆布を齧るのは侘しいだろう、と口にする前に蔵馬が黄泉の膝に手を置いた。
「ど、どうした」
「口淋しい時には飴が良いらしい」
「飴」
飴ならば、パントリーに修羅の為に幾つか購入してあった筈だ。
最近癌陀羅に出店したばかりの人気店の飴もある。
「甘いのばかりだと困るな」
立ち上がりかけた黄泉の手首を蔵馬が掴む。
「なんだ」
「飴が良いんだって言ったろ」
「だから飴を」
睨めつける視線に呆れが混じったのに気付き、黄泉はソファに腰を下ろした。
飴。
……飴?
ああ、そう言う事かと頷いて黄泉は蔵馬の顎に指をかけた。
蔵馬は大人しく目を閉じる。
……口淋しいのはどちらも同じだったか、と笑って黄泉は柔らかい唇に
そっと自分の唇を重ねた。

ACT 4 百足

どうしてオレはここにいるんだろう?
幽助は寝ぼけた頭で考える。
大晦日の営業をやり切った高揚感を抱えたまま、陣と自宅に帰り酒盛りをしたのは覚えている。
年末に買いこんだ食料が空になったところも覚えている。
家に戻ると言う陣と途中まで道が同じだからと
二日から営業しているスーパーに向かったのも覚えている。
なのに。
(なんでオレは軀の隣で寝てんだろう)
普段気にもしないが、客観的に見れば軀はスタイルの良い美人なおねーさんだ。
こうして寝転がっていてもちゃんと胸がある。ーそれはそれとして。
そのスタイルの良い美人のおねーさんの横でオレはなんで寝てんだろう?と再び幽助は考える。
スーパーでカップ麺とカット野菜を買い、ついでに酒も数本。
予算よりも安く上がったのに喜んでいた所に来たのは黄泉からのメール。
『余った刺身があるが貰ってくれないか』
一も二もなく了承のメールを返信し、きっと数時間後に届く氷見の寒ブリとか
大間の鮪とかに夢を馳せ部屋のドアを開け。
そう、部屋のドアを開けたら。
ーなんか百足だったのだ。
訳がわからなかったがドア付近にいた軀と孤光に腕を引っ張られ、
大焼肉大会会場と化した百足内大広間の煙の中へ身を投じた……のは覚えてる。
焼肉食って酒飲んで、飲みすぎ食い過ぎに気をつけろと怒鳴る時雨の声も覚えている。
炭に火をつけさせられ続けた飛影がキレたのも覚えている。
(でもなんでオレは軀の隣で寝てんだろう)
首を伸ばし周囲を見回すと飛影が孤光の胸に抱えられ苦しそうに呻いている。
……ある意味羨ましいとも思えるが、飛影にとっては拷問だろう。
起き上がろうとして弱く頭が痛むのに気付いた。
ゆっくりと取り出したスマホで蔵馬にメッセージを送る。
『あけおめことよろふつかよいのくすりひゃくにんぶんむかでにおくってゆうちゃんより』
正月から甘えてんなあ…とも思うが正月だからこそ出来る甘えだとも思う。
だって幽助は知っている、蔵馬が自分に甘い事を。


〜一日ずれましたが今年正月連作。
明日で正月休みが終わりなんですってよ、知ってまして奥様?とかを
幽助にやって欲しかったんですが断念。

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1 コメント

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Unknown (はとまめ)
2020-01-07 21:49:48
アラサー蛍子さんと正月連作最高でした♥
今年も読めてとても大満足です(*´∀`*)りくらくさんの蛍子性格がとても好き♥

連作は相変わらず、凍矢のポジションが可哀想やら健気やらwwいとおしいです♥魔界スカイフィッシュの干物手付かずで大笑いしました♥桑雪ちゃんはキュンときてほっこりしたし(//∇//)癌陀羅の式典大変そうですね~でも、私も国民なのでファンサに頑張って欲しいです(//∇//)

そして幽助は毎度、ちょっと切ないですね~でも、そこがいい!!読めて嬉しかったです♥有難うございます(≧ο≦)人(≧V≦)ノ

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