DREAM

幽白蔵馬受とかアイマスとか他ゲームとかたまに猫な妄想ブログです

遠い先のこと  後編

2017-06-04 09:58:09 | 妖✕蔵
ひらひらと花弁が舞う。
時期外れの山に咲く桜の花は『美しい』よりも
『禍々しい』としか思えず。
見渡す限り林立する桜の木。
一体何本あるのかさえ解らない。
吸い寄せられる様に一本の木に近付く。
・・・樹齢が軽く千年は超えていそうな巨木だ。
確か桜の木の寿命はそこまで長くないはず。
それだけでもうおかしいはずなのだが、その樹は何故か
別の意味で『おかしかった』。
神木と言う言葉がある。
とは言え本当に神の木なわけがなく
神様が宿る木だったらいいなあと言う人間の願望だ。
と私は解釈していた。
なのに。
この狂った様に咲く桜の巨木は『神木』としか思えない。
思わず指を幹に伸ばす。
「・・・何をしている。」
ー低い男の声。
声に驚き後ろを振り返るが誰もいない。
空耳かと巨木に向き直り。
私は動きを止めた、否止められた。
そこには。
ばけものがいた。
銀色の髪金の瞳。
纏う服は白。
銀色の髪に金の瞳、それだけでも充分なのに
その顔は恐ろしいほど整っている。
駄目押しにあるはずの場所に耳がない。
ないはずの場所に獣のような耳がある。
「人の分際で禁足地に足を踏み入れるとは。」
ばけものが喋る度に桜の木がざわめく。
「・・・よほど命が惜しくないと見える。」
金の瞳が射抜く様に私を睨む。
動けない。
蛇に睨まれた蛙とはまさにこの事だ。
ぞわり、と何かが私の足を這った。
下を向いて確かめたいが視線を外すことが出来ない。
ぞわぞわと何かが足から更に腰へと這い上がる。
何かは解らないが気持ち悪い。
汗が冷たい。呼吸が乱れる。
ばけものが音も無く近寄って来る。
やめてくれ近付かれたら私は死んでしまう。何故かそう思う。
喉が渇きぱくぱくと口を動かすが言葉は出ない。
ばけものはそんな私の醜態に眉一つ動かさず草を踏む音さえ立てず
目の前に立った。
ひっと息を飲む。
「お前」
金の瞳から目が離せない。
「あれを連れに来たのか?」
あれとは何だ?
「あれはオレのモノだ。」
ばけものはす、と指を私に向けた。
駄目だ。殺される・・・!



「・・・あんた大丈夫?」
「・・・は?」
「おい!いたぜー!」
私を覗き込んだ黒髪の青年はそう叫んだ。
頭を振りながら身を起こす。
全身が鉛の様に重い。
・・・何だ?
先程まで私はばけものと一緒だったはず。
のろのろと周囲を見回せば下草がぼうぼうに生える
雑木林だ。あれ程咲き誇っていた桜は一切ない。
「・・・あれ?」


そのまま青年に背負われ私は青年の家に向かった。
家で待っていた青年の親はあの目の見えない男だった。
呆れた顔した男が言うに私は5日ほど山にいたらしい。
何を馬鹿なと思ったが
着ていた服の汚れ具合、端末に送られて来たメールの数等で
嘘ではないと理解したが実感はなかった。
私の体感では半日もたっていないはず。
そう伝えると二人は顔を見合わせた。
「・・・なにかおかしいですか?」
いや別に?と青年は立ち上がる。
「アンタさあ。」
「はい。」
「キツネに化かされたんじゃない?」
狐。
そう呟くと男が言う。
「ここは昔から狐が棲むと有名でしてね。」
野生の狐?
本州に狐などいるのか?と訝し気にしていると男はくっと笑う。
「昔からとはあなたが此方に住む前からですか?」
「私が?」
「ええ。」
そう言えば彼は此方に住んで何年くらいなのだろうか。
単純な好奇心から私は質問した。
軽い気持ちで。
男はさあと首を傾げた。
「何年住んでいるかは解らないな。」
「は?」
「覚えていないから」
背筋を汗が。



畳の上に忘れられた鞄から溢れ落ちた手帳をペラリと捲る。
「タサカ、だって今の奴。」
「ほう。」
「ほったらかしとくと問題になりそうだから局に届けて来る」
立ち上がった青年は父親に視線を向ける。
「あのさあ。」
「なんだ。」
「あんまり脅かすなよ。
只の人間だろ?何が気に食わないかは解るけど」
「・・・別に」
子供かと呆れながら縁側から庭に出る。
あの人がこの山から(厳密には高度な結界から)出て来れなくなって
もう何年立ったのか。
一つだったはずが二人に別れた『あの人』。
銀色の方が紅色を離さず自分以外の目に触れさせるのも
許さずに居るのだ。
何者の干渉も赦さぬほどの『神』のような強大な力の持ち主に
意見出来る者などなく。
会いたいなあと思う。
が会えるはずなど無く。
父親も同じ気持ちなのだろう。
だからあの『タサカ』をちょっとだけ脅したんだと思う。
何故あのタサカだけがあの人に会えたのかは解らないが。
ふわりと風に乗って桜の花弁が届く。
会えないあの人からの便りを掌に閉じ込めた。




〜と言うオチでした。
妖孤さんは秀一くんが大好きなので
誰にも見せたくないから監禁してるよ!
秀一くんもそれでいいやとか思ってますが。

遠い先のこと 中編

2017-05-28 10:28:59 | 妖✕蔵
「大丈夫ですか?」
心配そうにそう聞いてくるが私としては情けない。
声を出され驚いた私は足を滑らせ数メートル下に落ちた。
それだけでも間抜けなのに更に足を挫くと言う体たらく。
情けない、と落ち込む私に彼(そう、『彼』だったのだ)は
手を差し出して来た。
見かけより力があるのか平均から言っても身長も体重もある
私の身体を支え手当をするからと家に寄れと言うのに甘えた。
不思議な家だ。
下のコミュニティほど昭和な感じではない。
かと言って私達の住まいほど合理的ではない。
なんと言うか。
井戸とオートメーションキッチンが混在している家と言うのは
初めて見た。
とは言えけして嫌な感じはない。
それはこの家の家主である彼に対してもだ。
ーひととは違うと感じたあの感覚はなんだったのだろうか。
腫れた私の足首に冷えたタオルを当てる彼は『良い人』に見えた。
(着ている服がまた変わっていたが。)
不躾な私の視線に気付いたのが彼は自分の服を摘みながら言った。
「これ気になりますか?」
「ああ、すみません。あまり見たことのない服でしたので。
確か・・・昔ジンジャと言う場所で着用されていた服・・・
ですよね。」
私がそう聞くと彼は良く知っていますね、と笑った。
「お祀りしているんです。」
「お祀り?」
「お狐様を。」
目を細めて嗤うその顔こそ狐のようである。

彼ー秀一と言うらしい。ーの仕事は
『お狐様の世話』だと言う。
まあ多分(まだ見ていないが)廟みたいな物の修復や
維持なのだろう。本気で『世話』が仕事だと思っていたら
それはそれで恐ろしいが。
「気難しい方なので大変です。
この服装もあの人の趣味なんですよ。」
苦笑する顔は可愛らしいが・・・少し頭がおかしいのだろうか。
「ここにいつから住まわれているんですか?」
「さあ?」
「さあ?」
「もう、何年になるか覚えていませんから。」
立ち上がった彼は音も無く扉の向こうに姿を消した。

「なんなんだ・・・?」
あまりに綺麗だと脳の回路が常人とは違うのだろうか。
縁側に一人残された私は困惑した。
ざあと風が木々を揺らす。
ふと気付いた。
何故今まで気にしていなかったのか解らないが
虫の声がしないのだ。
ーおかしい。
いつから虫の声がしなかったのだろう。
汗が額から顎に伝う。
私は、
何処に居るんだ?
目の端に何かが映った。
ゆっくりとそちらに顔を動かす。
短く生えた草の上に桜の花弁がひとひら落ちている。
「・・・さくら?」



〜まだ登場なさらない妖孤さん。
因みに蔵馬さんは巫女服ですよ。(๑´ڡ`๑)
なんでかって言うと私が巫女さん好きだからー!

遠い先のこと 前編

2017-05-21 11:43:44 | 妖✕蔵
『一年中桜の咲く山に綺麗なバケモノがいる。』

三流雑誌の記者である私の元にその手紙が届いたのは
そろそろ梅雨も間近な五月の末だった。
私が務める雑誌社が発行するのはUFOやら終末思想やら扱う三文雑誌だ。
馬鹿らしいとは思うが飯の種ではある。
私が(ひょっとすると両親も)生まれる前の騒動で話題になった
『妖怪』ネタは未だ人気で特集を組めば部数は伸びる。
数少ない紙媒体の雑誌を発行する零細紙の記者としては例えガセだとしても
(まあ、十中八九ガセネタだろうが)心が動かない訳ではない。




そうして私が辿り着いたのは辺鄙な土地だった。
数十年前何度めかのリバイバルブームになった『ロハス』な生活とやらで
田舎がクローズアップされたがそれを上回る。
もしかしたら電気さえも通っていないのでは。とさえ考えてしまう。
伸び放題の青草。驚いた事に足元の地面は土だ。
食料プラントではない場所であるはずなのに田植えが行われている。
しかも人力で!思わずカメラを使う。
「旅の方ですか?」
田植えに夢中になっていたからかかけられた声に驚いてしまった。
白杖をついた着物(?!)の男が私のすぐ側に立っていた。
「ええ、まあ。」
「今時珍しいでしょう。こんな場所は」
「確かに記録映像から抜け出したようですね。
プランターに入っていない土なんてテーマパーク以来です。」
私がそう言うと男は軽く笑った。
男が語るにこの土地は以前の持ち主の遺言によりこのまるで
数世紀も昔のような(少し違うがアーミッシュに似ている)生活を
望む者達のコミュニティになっている。
土地を譲られた者も故人の意志を尊重しけして土地を売ることなく
数世代で守って来たとか。
男の家で茶をご馳走になりながらこの場所に関する話を聞いた。
「・・・桜?」
「はい。噂・・・だとは思いますが。」
「確かにこの山は桜の名所ではありますが一年中とは。」
やはりガセネタか。
少し気落ちはしたが今時貴重な『昭和主義者』達のコミュニティを取材に
来たと思えばまあいい。
「新種の桜なら有り得なくもない・・・とは思いますよ。」
「新種?」
「はい、前にこの地でそんな研究をしていた奴がいましてね。」
男の閉じた目は何処か楽しそうだ。
「私の家の裏山から獣道を辿るとその研究所に着きますが行ってみますか?」



『三十分ほど道なりに進むと研究所がある』
男に教わった通り三十分歩いているが研究所らしきものなどありやしない。
人当たりが良さそうに見えて実は・・・と言うのはこんな仕事をしていれば
良くある事だ。
足が重い。
今日の足を動かした時間は常より長いのだからしょうがない。
最寄りのゲートが閉まるのは夕方頃と言う頭を抱えたくなるほどの早さだ。
自分の体力を考えるともう戻ったほうが良い気さえする。
とは言え『折角』と言う気持ちもある。
三文雑誌の記者だと言っても私だって矜持はある。
新種の桜など見つけて発表なんてことになれば違う雑誌社に転職なんて
ことも有り得なくはないかも知れないではないか。
ふらつく足を叱咤しやっと見えた上り坂の頂点に。
『ソレ』は居た。

腰まで届く艷やかな紅の髪。
翆緑の瞳。
抜ける様に白い肌。
柳の様にしなやかな肢体。
姿形佇まいすべてが美しかったが。
私は『ソレ』を見た瞬間身体中の血が引くのを感じた。
ーひとならざるもの。
手に持った笊に今自分が摘んだ足元に生える花を並べる所作は
溜息が出るほど洗練されている。
多分違う場所で見れば口を馬鹿みたいにあけて見惚れるほどの
美人だ。
しかし、私の本能が警告している。
ーこれはちかづいてはならないものだ、と。
花を摘んでいた『ソレ』は顔をあげ目を大きく開き。
「・・・お客様なんて珍しい。」
そう呟いた。



〜カテゴリでオチがバレるってのもあれだな、と。
モンストコラボで滾ったのですよ。
中原さんずるーいエローい。
でもまだ未登場。

アホなノリを封印してみまちた。