DREAM

幽白蔵馬受とかアイマスとか他ゲームとかたまに猫な妄想ブログです

正月連作 中編

2019-01-01 15:38:35 | オールキャラ 黄泉×蔵前提
ACT1 霊界
正月だ何だと言っても通常営業中の業界は数多ある。
飲食業やサービス業、そして霊界案内人。

「マジすか?!」
「マジだねえ」
「マジでこの話し方ダメっすか?」
「あたしは悪くないと思うけど、まあ苦情来てるからさ」
「え〜マジっすかあ……」
目の前の新人はマジすか!?を繰り返している。
もう、二時間程だ。
年末の繁忙期に合わせ配属された新人はぼたんの理解の範疇を超えていた。
はっきり言ってこんな子は初めて。
服装もゴスロリだし、化粧は睫毛バシバシで髪型は縦ロール。
なのに喋りは体育会系。
世代の差というものだろうか、と嘆息した。
とは言えきちんと教育をしないとならない。
これも霊界案内人歴数◯年のさだめと自分を納得させる。

今日ぼたんの勤務は夕方まで、夕方からは久しぶりに浦飯家で
女子会を開く。
珍しい酒を温子が手に入れたと言っていた。
雪菜が二、三日前から仕込んでいる料理があるとも。
静流が最近付き合い始めた彼氏の話も聞きたい。
明日は朝から螢子と初売りの福袋を買いに行く予定。

「え〜なんとかなんないっすか」
「なんないねえ、事務方ならまだしも」
「事務う?あ、ダメっす、ウチ事務とか苦手っして」
「なら、もうちょっと話しかたかえないと」
「無理っすよ、ウチずっとこの喋り方してっし。
ぼたんセンパイ上に何とか頼んで下さいっす」


この押し問答いつまで続くのだろうかとぼたんは考えた。


ACT2 ラーメン幽ちゃん

「っしゃ!!今日の営業終わり!!」
朝日が眩しいガード下で幽助がそう叫ぶと丼を重ねていた陣の顔が輝いた。
「終わりだか?!」
「おう、終わり!
サンキューな陣、臨時バイト入ってくれて助かったぜ」
昨夜たまたまラーメンを求めて屋台に現れた陣に急遽バイトを頼んで本当に
良かったと幽助は心から思った。
自分一人では馴染みの客から出前を頼まれても対応出来なかったがもう一人
従業員がいれば出来る。
しかも陣は空が飛べる、そのおかげで今年の大晦日の売り上げは最高記録を
更新した。まあその分忙しさも最高記録だったが。
「しっかし町なかでも寒いだな、さみいのは山ん中だけだと思ってただ」
話ながらも陣は屋台の脇に置いてあるテーブルを手際良く畳んで行く。
対する幽助も丼をざっと洗い重ねてケースに仕舞う。
「そうか?あ、なんかあったまるもん食ってこうぜ、奢るからよ」
「良いだか?
……でもバイト代も貰ったしオレの分は自分で出すだよ」
「何言ってんだよ、おまえが居てくれてすげー助かったんだぜ。
奢んのなんかトーゼンだろ、何食いたい?」
ちょっとだけ考えてから陣は小さく呟いた。
「………コンビニの雑煮」
「雑煮!?」
「昨日ネギが足りなくなってコンビニに買いに行ったべ?
そん時に見た雑煮がゴーカで美味そうでな〜」
……コンビニの雑煮。
確かに最近のコンビニは凄い。
自分がガキの頃はコンビニ飯は栄養にならないなんて言われていたが
今はそんな事なく大体何でも美味い。
だけど。
「おまえんとこの雑煮って」
「菜っ葉と餅」
「……………年中無休のスーパーあるからよ、そこで
買い物して帰ろうぜ」
「?家で食うだか?」
「浦飯家の正月料理食わしてやる常夜鍋だけどよ」
マジだか!!湯豆腐以外の鍋!と喜ぶ陣を見て
きっとその湯豆腐は本当に『豆腐』だけの湯豆腐なんだろうなと
気づいてしまった幽助は癌陀羅に新年の挨拶に向かう時は陣も伴って行こうと決意した。


ACT3 皿屋敷神社


「和真さん、甘酒ですって」
いつもよりも心なしかはしゃいで聞こえる雪菜の声に桑原の眉は下がりっぱなしだ。
初詣にとやって来た神社でお参りを済ませ桑原和真は恋人の雪菜と
キャッキャッウフフの本年初のデート中。
今年も絶対良い年になるぜ!!と浮かれている彼の耳に聞き覚えのある声が
飛び込んで来た。

『おい、ぶどう飴だってよ、食った事あるか』
「……ない」
『おまえホント決まったモンしか食わねえのな。冒険も大事だぜ?』
「……うるさい」
『あ、牛串。それも十本な、隣のケバブは五人前。
焼きそばと広島焼も買えよ、あとは……なあいももちってなんだ?
ベビーカステラってのも買えよ』

十年一日変わらず今年も黒いコートのよ〜く見知った小さいのが
両腕に白いビニール袋を下げて屋台グルメを買い漁ってる。
いや、買い漁らされてる、が正しいか。
あの女王サマの声しかしないという事は人間界への入界申請が降りなかったんだろう。
そんで、哀れな犠牲者が女王サマに捧げる供物を嫌々ながら入手していると。
だがそれにしても量が多い。
袋が嵩張って金を取り出すのも億劫そうだ。
ーちょっと手伝ってやるか。

「和真さん」
すっとごく自然に雪菜の指が桑原の手を握る。
「あちらに型抜きがあるみたいです、やりませんか?」
「っっはい!」
雪菜から手を繋がれたと言う事実が先程までの桑原の思考を霧散させた。

ちらりと雪菜は自分達を凝視する飛影の姿を目の端に写すと小さく微笑む。
ー邪魔はしないで下さいね?私もお邪魔しませんから。


ACT4 癌陀羅

「……だ、大丈夫で御座いますか?」
新年の祭祀や一般参賀に来賓との食事会。
魔界一の都市の長は忙しい。長だけでなくその家族も。
ここ数年嫌がりながらもそれを表には出さず卒なくこなしてきた
黄泉の想い人であり王子修羅のもう一人の親でもある暫定王妃蔵馬の
様子を見て思わず妖駄は声をかけた。
「……なんとか」
深く息を吐いて蔵馬は答える。
昨夜から少しばかり体調が悪そうだったが今日は更に悪化したらしく
己で作った薬を服用したとは聞いた。
その薬は良く効きはするが眠気が強くなる代物、妖駄も一度服用した事があるが
眠気は凄まじいのだ。その分体調不良は即解消されたが。
「……黄泉は?」
「パレード前の衣装合わせでございますよ、修羅さまとご一緒に。数分したら戻られるかと」
「……そう」
今にも寝てしまいそうだが寝てしまったら困る。
あの薬は一度寝ると少なくとも三時間は目覚める事が出来ない。
この後も分刻みでスケジュールは夜迄詰まっている。
代わりがいる訳では無いし何もこんな日に体調を崩さんでもと思わなくもない。
早い所癌陀羅に腰を落ち着けてはくれないものかと内心では思いながら
蔵馬を寝かせない為に妖駄は必死に話題を振る。
「そういえば魔界半周マラソンとやらを開催したいと言う輩がいましてな」
「まらそん」
「マラソンなぞちっとも分からないのでどう許可してよいものか
黄泉様も悩んでおりまして」
「おりまして」
鸚鵡の様に自分の言葉を繰り返す蔵馬に妖駄は冷や汗を垂らす。
ーまずい、本気で寝そうだ。

「すまん、待たせたな。
蔵馬侍女長がこちらの簪をパレードの時に髪に飾って欲しいと」
颯爽と現れた黄泉に妖駄はほっとした。
黄泉様ならなんとかしてくれるだろうと。
眠そうに目を擦りながらも蔵馬はふらりと黄泉の側まで歩くと
「?」
簪を蔵馬に差し出したままの腕を右手で強く引き身を屈めた黄泉の首に左腕を絡め。

(……なんとまあ)
妖だは小さい目玉をひん剥いて驚いた。
妖駄がいるにもかかわらず蔵馬があの蔵馬が
黄泉に自分からくちづけたのだ。

これはもしや第二子の誕生も夢ではないか!?と
心の中でガッツポーズし喜ぶ妖駄と腰を痛めそうな不自然な体勢のまま
固まる黄泉をものともせず蔵馬は口付けを続ける。
舌を入れたりなどはしていない、ただ、唇をあわせて居るだけだ。

「パパー蔵馬ーお着替え終わったー」
明るい修羅の声がしたとほぼ同時に蔵馬は唇を黄泉から離す。
眠そうに閉じかけられていた瞼はぱっちり開いてる。
ふらついていた足取りもしっかりと。

「一体どういうことですかな?」
妖駄は小声で呟き首を捻った。
くるりと蔵馬は振り抜き晴れやかに言った。
「給水ポイント」

(もしかしてもしかしてだが。)
「…………眠気を精気で抑えてるのか?」
呆然と呟いた主人の口調がなんとな〜く怒っている様な気がして
妖駄は再び溜息を吐いた。
給水ポイント扱いされては流石に黄泉様でもお怒りになるのは
ごもっともだろうと。





〜連作中編。
後編は明日、Pixivにて!
(まだなんも考えてないですが)


















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