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日本人はなぜ狐を信仰するのか?村松潔氏(1)・・生々しく女性的なキツネ神

2016-07-17 | 日本の不思議(現代)


村松潔氏著「日本人はなぜ狐を信仰するのか」という本を読んでみました。

リンクははっておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。

わたしは関東に住んでいますので、稲荷信仰の総本山の伏見稲荷の、赤、赤、赤の鳥居が群れ並ぶ姿を、いまだ拝観したことがありません。

けれども、前記事の恐竜やら、ヘビやら、オオカミやらの、もろもろの生き物と、人間の精神の関わりにはとても心惹かれるものがあります。


              *****


            (引用ここから)


京都の伏見稲荷は、稲荷神社の代表と言える。

伏見稲荷は711年、ウカノミタマノミコトが、轟く雷鳴とともに、稲荷山の「しるしの杉」に降臨した時に始まったとされる。

ウカノミタマの「ウカ」は、「食」を意味しており、すなわち食の神様ということになる。


稲荷社の根本縁起は、「山城国風土記」の秦伊呂具(いろぐ)の話から始まる。

この頃の古代王権を支えた二大勢力である秦氏と鴨一族は、婚姻関係で近しい間柄なので、どちらかわからない。


秦伊呂具はとても裕福だったので、餅を的に矢を射た。

餅は白鳥になって飛び去リ、この白鳥のとまった山の峯に稲が生えた。

これが神として祭られたのが、稲荷信仰のはじまりである、ということになっている。


とは言え、稲荷山の信仰の歴史は、秦氏が始める前から存在していた。



稲荷神社のキツネは、神道系では稲を担いだ農耕神としての稲荷大明神のお使いとなり、

また仏教系では女神であるダキニ天のお使いとなる。


大陸からやってきたダキニ天信仰は、中国の道教などと結合して、呪術的な性質を強く帯びていたので、

ここでのキツネは、ウカノミタマという生産性の神様のお使いというよりも、むしろ心霊的な働きかけという色合いが強い。

いつのまにか自然的生産性という作用と、対人的呪術の目的なども入り混じることになった。





稲荷大明神は、稲を担ぎ、両脇にキツネを伴う翁としての姿が知られている。

この穀物に関係した神様のそばにキツネがいるのは、キツネが昔から田の近くに出没し、豊作を守護する稲荷大明神のお使いに見えたからということになるわけである。

この稲荷大明神は、さまざまな神様を習合したもので、秦氏の前にこの地を治めていた荷田氏のご神体である「竜頭太」という神様がベースとなり、

そこにサルタヒコ、塩土翁(塩釡神社の祭神)、柴守長者などが複合されたので、単一の原型的キャラクターとして扱うことは難しい。


秦氏の前に伏見の深草地域に拠点を置いていた茄田氏というのは、実は空海の母の実家でもあり、豪族である。

茄田氏は、秦氏が稲荷大社を開いた後、あらためて伏見稲荷の宮司を代々継承することになり、祈祷師としての実務を担ってもいた。

空海が嵯峨天皇から京都の東寺を賜って、この地を布教の拠点にした時、稲を担った稲荷大明神は空海の協力者となったという。

空海と稲荷大明神は前世からの知り合いで、ともに密教の繁栄に尽力することを誓い合った仲。

ここから伏見稲荷は東寺の鎮守となったというわけだ。


そもそもこれは空海が真言密教を全国に広めようとした時、すでにそれまでに日本国にかなり普及していた稲荷信仰に便乗しようという意図でつくられた話であると考えられてもいる。

また稲荷大明神の原型である「竜頭太」は「雑密」(ぞうみつ)のご神体なので、それを空海が体系的に吸収統合したという意味にもとれる。


そもそも稲荷信仰というのは生々しく女性的であり、古代においては明らかに女神信仰に近いものだった。

ご神体のウカノミタマは女性系であり、稲を生み出す魂として、母神的なイメージのものであった。



              (引用ここまで) 写真(中)(下)は、東京町田天満宮稲荷社


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