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議員定数の削減は民主主義の自殺

2009-08-12 | 政治
タクシーに乗ったら、運転手が景気の悪さを呪ったあと、選挙の話に言及した。彼が言ったことは、もっと議員の数を減らして欲しい、ということだった。同意を求められて、私は言いよどんだ。そして「なぜ?」と聞いた。「議員に支払う税金が無駄だからだ」と、予想した答えが返ってきた。

 世間一般には、そのような言い方が多い。週刊誌や新聞にも、そのような言い方で議員定数の削減を言いつのる言説が多い。自民党も民主党もマニュフェストに衆議院の定数削減を書き込んだ。民主党などは80人削減を約束している。

 でも、待って欲しい。公務員には無駄な公務員もいるかもしれない。議員も税金の無駄だと思う議員もいる。しかし、議員は本来住民の意見を代弁する人なのだ。その代弁者を減らして、わずかの歳費をけちることにどれだけの意味があるのだろうか。むしろ住民の声を聞く人を無くすだけではないか。国会議員は民主主義を体現する存在なのだ。怠惰な議員がいたら、叱咤激励して住民のために働かせることこそ、必要なことであり、議員を減らすことは民主主義を崩壊させることでしかない。

 そんな簡単な民主主義の原則を理解できない低劣な議論が自民党と民主党という大政党で平気で行われていることには、驚くばかりである。民主党よ。政権交代したあと、議員定数を削減するというマニュフェストを変えて欲しい。このままでは、私は民主党を支持できない。ことは民主主義を守るかどうかなのだ。

 この民主主義の危機に、市民団体「平和への結集をめざす市民の風」が声明を出した。議員定数を減らして欲しいと思っている、浅はかな考えを持っている人はよく読んで、考え直して欲しい。

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」
                                        
 民主党は、7月27日に発表した衆選マニフェスト(政権公約)のなかで、「ムダづかい」削減のために衆議院比例区議員の定数80削減を提案した。
 自民党でも、定数削減を政権公約にしている。

 しかし、国会議員の定数削減は、議会制民主主義のもとにおける有権者の多様な意思の表明を困難にし、民主主義の精神を踏みにじるものであり、我々はこの提案に強く抗議する。

1. 議会制民主主義のもとでは、広範な市民の多様な意思をできるだけ的確に議会に反映させること、従ってまたこのための仕組みが極めて重要である。

2. このためには、然るべき人数の議員が必要である。
 現在の衆議院の定数、480人は決して多すぎるものではない。
 現在の選挙制度が発足した時には500人であったが、その後削減されている。

3. ヨーロッパの主要国(独、英、仏、伊)では、人口は日本の2分の1から3分の2であるが、下院議員の定数は600人前後である。
 人口10万人当たりの定数は、独で0.74人、その他では1.0人前後である。
 これに対し、日本では0.38人と極めて少ない。

4. 米国の連邦下院議員定数は、435人と少ないが、独特の大統領制である、州の権限が強い連邦国家であるなど、政治制度が日本と 著しく異なっており、比較の対象にするのは適切ではない。
 それでも、米国の議会予算は日本より大幅に多い。

5. 定数削減の目的は、これまで、民間のリストラ、国の行政改革に対応して、国会も人員、予算の節約を図る必要があるため、といわれてきたが、今回「ムダづかい」削減による財源確保が目的、とされている。
 しかし、国権の最高機関である国会の議員の在り方を、民間や一般公務員と同じように論ずることは基本的に間違っており、特に議員定数の一部を「ムダ」とみなしてその削減を財源確保の手段としていることは、到底容認できない。
 定数削減の結果、国会がまともに機能しなくなったら、民主主義が衰退してしまうことを無視している。

6. このような危険を冒してまで議員定数を削減しても、それによる予算節約はそれほど大きいものではない。
 国会の予算は、国会図書館を除くと約1,100億円である。(この他、政党助成費が321億円ある。)
 これは、一般会計予算の0.12%であり、この一部を削減しても予算の1万分の1から2程度である。       
 因みに、米軍へのいわゆる「思いやり予算」は2千数百億円に上る。また、F-15戦闘機は一機100億円、F-2は120億円である。
 もちろん予算節約の努力は必要であるが、他方、国会の基本的な任務遂行に必要な予算は、民主主義のコストとして負担すべきである。

7. 定数削減は、比例区の定数削減として提案されているが、この提案には、民意をより正確に反映する比例区の定数を削減し、最終的にはこれを無くして、完全な小選挙区制に変えてしまおうという意図が窺われる。マニフェストには「政権交代が実現しやすい選挙制度とする」と記されているからである。
 ただし、専門家によると、小選挙区制では政権交代が起きる可能性が高い、ということは明瞭とはいえない。

8.小選挙区制には問題があることは広く知られているにも拘わらず、選挙制度の在り方について公に議論しないまま、定数削減によって完全な小選挙区制へと実体を変えようということは、極めて不公正、不当な政策であるといわざるをえない。

9. 小選挙区、2大政党制は、統治する立場からは好都合といわれているが、市民の立場からは、多様な民意を的確に反映させることにはならず、不公正である。
 有権者の意思を的確に反映させるためには、少数政党への投票をも尊重する比例代表制を基礎とした制度が絶対に必要である。

10. このように大きな問題があるにも拘わらず、定数削減という方針が尤もらしく聞こえ、一定の支持を得ているのは、ろくに仕事をしない議員が多すぎる、世襲議員が余りにも多い、などのためであろう。
 この状況を改めるのは、定数削減ではなく、望ましくない議員を落選させ、真っ当な人物を選ぶことである。

11. 参議院議員の定数については、今回は触れない。参議院の在り方を議論する過程で慎重に検討すべきである。
 衆参合わせて何割削減などという粗雑な議論は、問題外である。

 以上の理由により、我々は国会議員の定数削減という政策の撤回を強く求める。


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