夢のあと

釣りには夢があります。夢を釣っていると言っても過言ではありません。よって、ここに掲載する総ては僕の夢のあとです。

二年半ぶり

2017年03月15日 20時21分06秒 | 渓流釣り
二年半の沈黙をやぶって渓流に行って来ました。
地元の釣り仲間のTAKAさんがサポートしてくれました。
少々体調がはかばかしくない管理人ですから、今一人での釣行はちょっと恐いです。
TAKAさんが来てくれるというので安心していられました。

 行き先はまともな魚が釣れない川なのですが、その昔は大きいのが沢山釣れてニジマスだったら70㎝を超えないと『大きいね』とも言ってもらえませんでした。そんな場所ですから楽しい思い出がいっぱいの川です。
 この川の近くに20年来の友達が住んでいます。釣りが上手いのは勿論、その釣りスタイルにも感銘できる釣り師です。最初に出会ったときの彼は人生においても順風満帆。綺麗な奥様とともに人生を謳歌している彼を見てこちらも元気をもらったものです。ところが彼を想像を絶する試練が襲います。まず突然奥様が亡くなられました。それからの彼の人生は奈落の底に急転直下。奥様と一緒にやってきた仕事を辞めて新たな人生をめざすものの、新たな仕事で指の3本を失ってしまいました。すぐにお見舞いに行った僕に『(趣味の)ギター弾きも釣りも(ともに相当なレベル)もうできないかもしれない。』と。とても悲観的になっているのが解りましたがこれはどうする事もできません。その後怪我の回復を待って退院した彼ですが、指を失った彼が住む山あいの小さな町で新たな仕事を探すのはとても難しいものがあります。その頃の彼はかつて満ち充ちていた瞳の輝きも薄れ、僕も彼の今後に不安を感じずにはいられませんでした。彼にはほぼ寝たきりの母親がいるので彼が介護しています。それだけでも大変なのに、その合間を縫って職探しに没頭していた彼は僕に『沢山稼いで贅沢しようって言ってるのではありません。ただ、オフクロと僕が最低限の生活ができるだけの収入が欲しいだけです。でも、それすらもこの町にはないのです。』と言って嘆くばかり。彼の行く先が案じられました。そんな折、ひょんなことから彼は将棋の駒と出会いました。お師匠さんについて真剣に将棋の駒を彫り続け、そして最近ではそのレベルの高さが評価されるようになり、彼が作った駒は今年の日本将棋連盟のカレンダーの表紙を飾り、最近リリースされた将棋を題材にした映画でも使われているとのこと。
 僕は将棋の駒の良し悪しが解るほどの眼をもっていないのですが、彼が作った駒は世間が評価しているのですからきっと素晴らしい駒なのでしょう。思い起こせば彼が作ったへらウキ(相当前ですが)も素晴らしいし、元は優秀な料理人でもあった彼ですから包丁砥ぎで得られた技術は彫刻刀砥ぎにも生きるとのこと。良く切れる彫刻刀で彫っらないとやはり良い駒にはならないのだそうです。彼が歩んできた総ての事がこの将棋の駒作りに生きるものばかりです。客観的に見ても彼はこれ(将棋の駒作り)をするために生まれてきたのではないかと思えてしまいます。まさに天職としか言いようがありません。そして偶然を通してそういう職に付くためにいままで沢山の試練を受けてきたように感じます。そして亡き奥様がそのように仕向けてたようにさえ感じてしまいます。
 いずれにせよ有名人になりつつある彼の昨日は瞳の輝きも充ちていて人生が充実していることが手に取るように分りました。友達としてこんなに嬉しい事はありません。再び順風満帆の波に乗った彼には是非これからも頑張ってすばらしいな駒をどんどん作っていただきたいと思っております。
 ちなみに釣りの技術は少しも落ちておらず、普通の人よりはちょっと時間が掛かるものの、釣鈎もちゃんと結べます。ギターはどうだか判りませんが、少なくとも釣りができるということは僕にとってもとても嬉しい事です。

 画像はそんな彼と同行して釣ったニジマスです。ヤマメでもなく、イワナでもない・・・たかがニジマスです。しかもたいして大きくもありません(52㎝)。が、この一匹に僕は彼の幸せを託してリリースしました。
 是非長生きしていただきたいものです。