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たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『木靴の樹』シナリオ(18)

2017年06月18日 20時28分25秒 | 映画『木靴の樹』
(フランス映画社発行のパンフレットより引用しています。)

*厩の前(朝)

 ベッティーナが、柱のかげから馬車の上のビエリーノに尋ねる。

ベッティーナ「面白かった?」

 うなずくビエリーノ。ルンクの後家さんが急ぎ足で近寄って来る。

ルンクの後家さん「(ビエリーノに)桶に水を汲んでおいで」

 そのまま厩に入るルンクの後家さん。テレジーナとアネッタが続く。

*厩

 中に入り、ただならぬ様子を察したルンクの後家さん。

ルンクの後家さん「(後ろの子供達に)家に行ってな」

獣医「この牛はあんたのか、それとも地主のかね?」

ルンクの後家さん「神の恵で私達のものです」

獣医「その神の恵もこれまでだろう」

ルンクの後家さん「一体どうしたんでしょう」

獣医「奥さん、本当の事を言うともう危ない。すぐしなさい。金にもなる」

ルンクの後家さん「(桶を持って来たビエリーノを厩から出し)困ります。家はこの有様です。牛が頼りです」

獣医「早く、私の言う通りにしなさい」

アンセルモ「(厩から出ていく獣医の後ろ姿に)子供には黙ってて下さい」

ルンクの後家さんの声「先生へのお礼は?」

*厩の外

獣医「そんな心配はせんでよろしい」

 馬車で去る獣医の後を追う子供達。

*ルンクの後家さんの家・台所(昼)

 悲痛な面持ちの家族。突然ルンクの後家さんが何かを思いついたように葡萄酒の空瓶を洗い出す。

ルンクの後家さん「玉蜀黍粥(ポジンタ)のお湯をわかして(と頼んで出てゆく)

アンセルモ「玉蜀黍粥(ポジンタ)のお湯を沸かそう」

*林のむこうの礼拝堂

 神への祈りを唱えながら木橋を渡り、林をぬけるルンクの後家さん。オルガン曲<我を憐れみ給え、主なる神よ>静かに。

ルンクの後家さん「(十字を切る)主よ、私を見捨てないで下さい。今こそ私ひとりです。私は微力です。主のお助けなくては、何もできません・・・」

 やがて小さな礼拝堂にたどり着くと、彼女は祭壇の十字架のイエス像に膝まずく。

ルンクの後家さん「主よ、十字架上に死せし主は、われらの能力に関係なく・・・」

 祈りを続けながら、ルンクの後家さんは礼拝堂を出て、わきの清らかな小川の水を瓶に汲む。

ルンクの後家さん「・・・・その善意もて、受難の丘の下を流れる聖水にて、魂と肉体の悩みを洗いたまえ。主よ、我らの罪をゆるしたまえ。無知ゆえの罪をゆるしたまえ。主の五つの傷により、聖母マリアの悩みにより、諸聖人と正しき心により、主よ恩寵を与えたまえ。お願いいたします」

 再び礼拝堂に戻り、愛をこめてイエス像を見つめるルンクの後家さん。


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