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エリクソンの小部屋

エリクソンの著作の私訳を載せたいと思います。また、心理学やカウンセリングをベースに、社会や世相なども話題にします。

短い夢のストーリー

2013-08-18 02:31:39 | エリクソンの発達臨床心理

 

 精神分析の場が、お互いに顔を見せないという、視覚の穴を作って、かえって、赤ちゃんの時にお母さんと癒しのやり取りをできなかった時の、恐怖や恥しい怒りを投影することを誘い出す、というのは、実によくできた設定ですね。

 

 

 

 

 次に、私が伺った夢の中で一番短い夢のことを申し上げましょう。私が数年ぶりにその夢を思い出したのは、一番短い臨床的なデータが、いかにして、車輪の軸の様に、たくさんな意味が集まったものかを証明することができる、とその夢が示しているからです。それは、ある若い女性が話してくれた初回夢でした。その若い女性は、ドイツ語を話す人でしたが、ラテン語由来のいくつかの言葉にも精通していたのですが、彼女の報告は、半ば内気、半ば、私が「その夢」をどう料理するのかな、と私に挑戦する感じでした。その夢は、暗い背景の中に、S[E]INEという言葉が明るく浮かび上がる、というだけの夢でした。最初のEはカッコに入っていました。この言葉全体は、パリを流れる川を言い表すことは明らかでした。実際、その若い女性の患者が、広場恐怖症に見舞われたのは、パリで、しかも、ルーブルを離れる時でした。彼女は広場恐怖症のために、この時、分析にやってきたのでした。しかし、たとえ彼女がルーブルで不安になるような絵を見ていたとしても、彼女はその絵を覚えていなかったのです。そして、実際問題、その種の彼女の夢が示しているのは、あまりにも鮮やかに、ネオンライトの中に彼女の心の闇の部分に対応していた文字を見た、ということです。それは多分、ある種の健忘症でしょう。しかし、この文字は何を表しているのか?1つの単語に隠れたパズルであるように感じられました。ドイツ語で「見ること」は、sehenですが、フランス語では、「Seine セーヌ川」と発音されることが多い単語です。そうです、私どもは「セーヌのほとりで見た」のでした。しかし、seineとなれば、ドイツ語では、「かれの his」を意味する単語です。さらには、もしカッコをすれば、「それなしで」を意味するsineというラテン語の単語もあります。これらを一緒にすると、この単語のパズルが示していると思われるのは、「私は、セーヌのほとりで、何か大事なものがない誰かを見た」ということです。彼女に自由連想をしているうちに、回り道をしている時に、その患者は、自分がかなりの衝撃を受けた一幅の絵をとうとう思い出しました。それは、「キリストの割礼」という絵でした。

 

 

 

 

 

 短い夢でも、これだけの奥行きのあることが分かるのは、実に不思議なことですね。

 夢は多義的なのですね。しかも、ちゃ~んと、物語、ストーリーがあります。エリクソンの読みは見事ですが、結局、この若い女性の患者が、自由連想などをしながら、夢をエリクソンに語っている内に、自らそのストーリーを語ったのだと思います。エリクソンは、この本を書く段になって、その夢のストーリーが実に鮮やかだったので、ここで思い出して、記しているのでしょう。私はそう感じますね。

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