ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

銃口(上・下)  三浦綾子

2015-11-24 00:55:44 | Book


まずは、熱心な取材の上で丁寧に書かれた小説だと思いました。


以前読んだ「獄中メモは問う・作文教育が罪にされた時代・佐竹直子著」から、
引き続き、この本を開きました。

これは、昭和16年前後に北海道の作文教育に熱心な小学校教師たちの「綴り方連盟」が
戦時下において、数多くの教師たちが「治安維持法違反」として
特攻に逮捕された、理不尽な事件がもとになっています。
その一人のモデルとして、若い熱心な教師「北森竜太」が主人公となっています。

彼の父上は質屋の主人であったが、「タコ部屋」から逃亡した
朝鮮人の若者を助け、我が家に匿ったことがある人でした。
家族も同じ気持で彼を受け入れました。
その朝鮮人の若者の名は「金俊明」という。

この若い教師は少学校時代に、坂部久哉先生に出会い、
そのような教師になりたいと、その夢をまっすぐに実現した若者だった。
しかし「綴り方連盟」に1度だけ参加して、署名を残したことから、
身柄拘束となり、出所できたのは7か月後、執行猶予の身となった。
坂部先生は、激しい拷問を受け、出所して間もなく死亡した。
この息苦しい生活の脱出の場として「満州」が選ばれた。
幼馴染の婚約者「芳子」も同意した。


ここで、私事ながら、1つの疑問が解けた気がしました。
「何故、私の父は満州へ渡ったのか?何故母はその父に嫁いだか?」
永年の私の思いがあったのですが、息苦しい日本のあの時代において、
若者が飛び立つ場所として、選ばれたのが満州だったのでしょう。
広大な大陸、大きな夕日、占領国ではなく、我が国土と思えば、
そこは、若者の夢の大地だったのかもしれない。


お話は戻ります。
しかし、竜太に「召集令状」が届く。結婚式を間近に控えながら。
行った先は満州だったという皮肉。
しかし軍隊は彼にとって、地獄ではなかったようだ。
彼の真面目さや能力が認められて、前科者の烙印は皆無だった。
幸いなことに、実戦ではなく、内務の仕事がほとんどであった。

しかし、敗戦間際の兵士たちは、自らの命を守らなければならない。
誰も助けてはくれない。密かに朝鮮への逃避行が始まる。


ここでまた私事を。
父が満州で召集され、所属したハルビンの特殊部隊は敗戦の情報を早くに入手。
部隊の機密文書などなど、早速に始末して、
部隊の引込み線にある列車で早々と帰国の準備をした部隊であった。
釜山まで行って、父は家族を残したまま帰国はできぬと、乗船しなかった。
ハルビンの家族の元まで命がけの2ヶ月の旅をした。

満州で迎えた敗戦は、それぞれの引揚者の苦しい長い日々があった。
殺された者、乱暴を受けた女性、飢えた者、死んだ者、捕虜となった者。


さて、ここで物語は感動的な出会いと救いが竜太を待っていた。
まずは竜太たちは朝鮮へ向かった。
そこで、朝鮮人の抗日活動のリーダーに捕らえられるが、それは
竜太の父に助けられた「金俊明」だった。
このあたりから、物語の結末を引き出す展開の難しさをふと思う。
後は、日本の下関港に無事着くまでは、「金俊明」とその仲間たちの
勇気と誠実がすべてを守った。
北海道に無事帰れた竜太は芳子と結婚し、教職に戻れた。

人間は戦争を憎む。しかし友情と信頼とは固く守られるもの。



 (単行本 1994年上下巻発行)
 (文庫本 1998年第一刷 2007年第九刷)

秋から冬へ

2015-11-08 21:40:03 | Stroll
今日は立冬のようです。

秋から冬へと季節は日毎に変化しています。
城址公園では、落ち葉のサービスがありました(笑)。




 桜紅葉


 ヤマナラシ


 プラタナス


 ドングリ(なぜか、ほとんどの子供は拾います。)


 ビワの花は寒い時に開花します。不思議?

映画『ふたつの名前を持つ少年』

2015-11-06 20:41:34 | Movie
生き残るために少年は…!映画『ふたつの名前を持つ少年』予告編


監督:ペペ・ダンカート
原作:ウーリー・オルレブ 「走れ、走って逃げろ」
   母袋夏生訳 岩波書店刊


「ふたつの名前を持つ少年・オフィシャルサイト」


主人公の美しい少年役は「アンジェイ・トチカ」と「カミル・トチカ」の双子の兄弟が演じている。
激しい演技と叙情的な演技を、分けて受け持ったそうです。

これは実話です。
舞台はポーランド、日本は戦後70年だが、アウシュビッツ収容所開放後70年となる年です。
8歳のユダヤ人少年「スルリック」が、父親の死と引き換えに、
ナチス・ドイツからの逃走を繰り返した3年間の物語。
最後にロシア軍の進軍によって、ナチスドイツの時代は終わる。
しかし、戦争が終わったわけではない。

「ポーランド人孤児ユレク」を名乗り、少年は父との約束を果たした。

「少年の身で、よく生き抜いてくださいました。」と感動しながら、
ふと思う。人間は他者の不幸に感動しているのではないか?
そんな想いが残る。


「ふたつの名前」から、奇妙なことですが「マグヌス」思い出していました。


もう1つ思い出していたのは、映画「ライフ イズ ビューティフル」でした。
この映画のなかでは、父親、母親 小さな息子が共にアウシュビッツに送られますが、
父親は必死で、そこは「遊び場」だと息子に教え、ゲームをするように、
暮らしました。父親は銃殺、幼い息子と母親はナチスドイツの敗戦とともに解放されました。

あの「ナチスドイツ」の時代は、多くの名作を産んだ。
なんと皮肉なことか!!