テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

月蒼くして

2009-12-06 | コメディ
(1953/オットー・プレミンジャー監督/ウィリアム・ホールデン、マギー・マクナマラ、デヴィッド・ニーヴン、ドーン・アダムス/95分)


 タイトルに記憶があったのでNHK-BS2の放映を録画していたら、双葉さんの「外国映画ぼくの500本」に入っていた作品だった。
 監督はナチの憲兵隊の親分のような顔のオットー・プレミンジャー。双葉さんの評点は75点(☆☆☆★★★)の秀作だが、56年前の舞台劇を映画化したラブコメで、主人公の女の子が理解に苦しむ変わった娘なので僕のお薦め度はあまり高くない。

*

 エンパイヤ・ステート・ビルに事務所を構える建築設計士のドン(ホールデン)が、展望台への上り口があるフロアで笑顔のキュートな娘を見つけ、ナンパしようと後を追いかけて屋上に上がっていくが、ブルックリン出身で女優の卵という彼女パティ(マクナマラ)は開けっぴろげな性格で、その後ドンのスーツのボタン付けをしてくれ、食事に誘う彼のアパートに行って手料理をしてくれることになる。ドンのアパートの上階には別れたばかりの元婚約者シンシア(アダムス)が居て、未練たらたらのシンシアはドンが女性を連れ込んだのを見て何かと邪魔をしようとし、更にはシンシアには資産家で遊び人の父親デビッド(ニーヴン)もいて、娘の為にドンの部屋にやって来る始末。シンシアの事もドンに聞いていたパティは、デビッドも食事に誘うのだが・・・というお話。

 半分以上はドンとパティとデビッドの会話の面白さが売りの作品で、台詞に使われた当時としてはキワドイ言葉が話題になったそうです。
 『ウィキペディア(Wikipedia)』の“オットー・プレミンジャー”にはこう記述されています。

<1950年代に入ると、プロデューサー兼監督として、タブーに挑む大胆な映画を次々と世に送り出す。まず1953年に、ブロードウェイのヒット作の映画化『月蒼くして』は、バージンとか妊娠といった性的な台詞が多すぎるということで、アメリカ映画製作者協会は自主規制をしようとしたが、これに反発したプレミンジャー側は協会を脱退して、映倫マークなしで公開を強行。結果、本作は大ヒットして、時代遅れの映画倫理規定を改正させるきっかけとなった。>

 初対面の男性の部屋に行って手料理を披露し、遊び人の中年男も入れての男と女に纏わる会話劇。一見艶笑喜劇のようですが、ヒロインのパティを演じるマギー・マクナマラは如何にも下町の真面目な娘という雰囲気で、パティも大胆なようで一線を越えない理性も持ち、妙に家庭的だったりするのでそういったピンク色のムードはありません。
 元の舞台劇の演出もプレミンジャーだったとのこと。映画は移動ショットを使って舞台臭さを感じないリズミカルな画作りでした。
 コメディですからラストは勿論ハッピーエンドです。

 宵乃さんのブログでも紹介されていて、お洒落な会話を楽しめた人ならではの素敵な記事になっています。原題の意味についても教えていただきました。
 確かにね。色々と“希な人々による、希な出来事”のお話でしたな♪


 1953年のアカデミー賞で主演女優賞(マギー・マクナマラ)、編集賞(Otto Ludwig)、歌曲賞(ハーシェル・バーク・ギルバート 作曲、シルヴィア・ファイン 作詞)にノミネートされたそうです。
 トレーラー(↓)の前半は宣伝用の映像で本編とは全然関係有りませんのであしからず。





・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

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6 コメント

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遅れてすみませんっっ (宵乃)
2009-12-08 12:18:18
ちょっとばたばたしていてコメントが遅れてしまいました。記事のご紹介、ほんっとうにありがとうございます!
いつも十瑠さんの鋭い考察や、撮影法についての解説に感心するばかりなので、私の感情まかせの感想文にお褒めの言葉をいただけるなんて恐縮です(うひゃー!)

>確かにね。色々と“希な人々による、希な出来事”のお話でしたな♪

ほんとに、ちょっと危なっかしいところがあるけど、楽しい人たちでした。
邦題や原題にちょっとした遊び心があったりすると面白いですよね。
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宵乃さん (十瑠)
2009-12-08 16:53:39
自分の記事はこの映画の面白さをちゃんと伝えてないと思って、代わりにではないんですが、タクシーの運転手のことまで顔が思い浮かべられるように書かれている宵乃さんの記事を紹介してしまいました。
コメントまで頂いて、ホントにありがとうございます

本来はトラックバック返しというのも必要ないモノのようですから、無理なさらないで下さい
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謹賀新年 (オカピー)
2010-01-01 09:13:36
旧年中は色々お世話になりました。

自分の記事を上げるのにアップアップ(だからアップするという、嘘)しているので、なかなか書き込みができない昨年でしたが、今年はもう少し書きこみたいですねえ。

で、この作品も気になっていたんですよ。
というのも、十瑠さんの気になったところが、僕の気に入った点だったからです。

つまり、台詞の面白さに加えて、ヒロインのカマトトなのか純情なのか解らない微妙な性格が大変興味深くて、双葉式採点法で☆☆☆☆を付けた記憶があります。
今回DVDに保存したので、時間さえあればもう一度観ようと思いますが、悪くても師匠と同じくらいの点になりそうです。

こんな感じで、本年も宜しくお願い致します。
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あけましておめでとうございます♪ (十瑠)
2010-01-01 09:49:51
どうもどうも。
体調は元通りですか?アップのペースは元通りのようですが^^

今年も読み逃げが多いかと思いますが、ヨロシクお願いします

>十瑠さんの気になったところが、僕の気に入った点だったからです

変わった性格といっても傍目に面白いと感じさせてくれればそれなりにお薦め出来るんですが、パティは“面白い!”のちょっと手前だったんで点数が上がりませんでした。
実は★ふたつと三つで悩みはしたんですがね(
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申し訳ありません!! (宵乃)
2010-01-31 17:37:48
さっき過去記事を見ていて気が付いたんですが、原題がOnce in a Blue Moonというのは勘違いでした。
パッケージに「THE MOON IS BLUE」とあるので十瑠さんはもう気付いていらしたかもしれませんが、いちおうご報告しておきます。
せっかく取り上げていただいたのにすみませんでした・・・。以後、気をつけます。
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宵乃さん (十瑠)
2010-01-31 20:44:33
ありゃ、そうでしたか。

でもそういう慣用句があるのなら、何か関連があるのかも、ですね。
なんとなく、moon と blue が重なっていますもの。

わざわざ、ありがとうございました。
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