テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ブルージャスミン

2015-09-26 | コメディ
(2013/ウディ・アレン監督・脚本/ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、サリー・ホーキンス、ボビー・カナヴェイル、アンドリュー・ダイス・クレイ、ピーター・サースガード、ルイス・C・K、オールデン・エアエンライク、マイケル・スタールバーグ、マックス・カセラ/98分)


 ジャスミンは本名ジャネット。ジャスミンは自分で勝手につけた名前(セクシーでミステリアスな雰囲気が狙い)だが、人に話す時には母親が付けた本名だと嘘をついている。
 NYでハル・フランシスという大金持ちの実業家の後妻の座を射止め、豪邸に住み、ブランド品に身を包んでパーティ三昧、ヨーロッパへの豪遊も自慢話の一つになっている。ところがハルが詐欺罪で司法に裁かれる身となり財産没収、ジャスミンも一文無しになった。
 身内はサンフランシスコに居る妹のジンジャーのみ。ジンジャーとは共に里子として姉妹になったのだが性格は真反対、ハルと結婚していた時には見向きもしなかったのに、背に腹は代えられずジンジャーのアパートに転がり込むことになる・・・という話。

 自分の人生は悲劇だ、なんて思っている人の生き方を傍から見ると喜劇的に見えたりすることもあるのですが、この映画はその辺を狙った作品ですね。自己過大評価、誇大妄想癖のある人が主人公だったらこんな喜劇もあるかもって思わせます。ま、大なり小なり誰しもそんな所あるんでしょうけどネ。
 ウディ・アレンの21世紀における第14作。当時78歳ですけどセンスはちっとも衰えてないです。

 モチーフはテネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」でしょう。あのエリア・カザンの映画でヒロインを演じたヴィヴィアン・リーと同じく、この映画でも精神を病んでいくジャスミンを演じたケイト・ブランシェットが主演オスカーを獲りました。コメディにカテゴライズされてはいても、あまりに辛辣なので観てて楽しいとは言い難いし、嫌悪感を抱く人もおられるかも。でもブランシェットの演技を観るだけでも価値はありますね。元々狂気を帯びた役柄が得意な女優だと思いますが、ここでは正に狂気と正気の間を揺れ動くヒロインを演じて圧巻でした。

 オープニングは、NYから西海岸に向かう飛行機の中のジャスミン。隣のお婆ちゃんに私生活を赤裸々に語って、お婆ちゃんもフムフムと頷いていますが実は初対面。シスコについた後、そのお婆ちゃんは迎えに来たお爺ちゃんに「誰と話してたんだい?」と聞かれ、「知らない人なのよ。聞きたくもない話をペラペラと・・・」。個人的にはここで掴みはオッケーでした。

 現在のストーリーに過去のシーンが織り込まれる構成で、徐々にヒロインの過去が、そしてヒロインと周りの人々との関係も明らかになっていきます。ヒロインが神経を病んでいるらしいのはすぐに分かるので、過去のシーンの挿入は彼女のフラッシュバックを匂わせてる、そんな感じも受けましたね。

*

 アレック・ボールドウィンがハルの役。かつてのCIAアナリスト、ジャック・ライアンの面影や何処へ?恰幅のいい中年が板についてましたね。
 サリー・ホーキンスは妹ジンジャー。上昇志向のジャスミンとは違って身の丈に合った現実対応型で、スケベで気楽な男が好き。二人の子持ちだ。
 アンドリュー・ダイス・クレイはジンジャーの前の夫オーギー。DVの果てに離婚したんだが、結婚してた頃にNYにジャスミンの豪邸を訪ねたこともある。その直前に宝くじで20万ドルを当てて起業の相談をハルにするんだが・・・。
 ボビー・カナヴェイルは現在のジンジャーの恋人チリ。「欲望という名の電車」ではあのマーロン・ブランドの役でしょうね。イタリア系のズケズケものをいうタイプ。ジャスミンのような気位の高い女が嫌いだ。
 ピーター・サースガードは、ジャスミンがシスコで初めて行ったパーティで声をかけてきた男ドワイト。国務省に務める外交官で赴任先はウィーン。妻に先立たれて現在独身。ジャスミンにとってはハルよりも一枚も二枚も上の白馬の王子様。サースガードは「17歳の肖像」でヒロインの女子高生をだまくらかした男なので眉に唾して見てました。
 ルイス・C・Kは、そのパーティでジンジャーに言い寄る男。優しくて享楽主義のオーディオ・マニアの音響技術者です。
 オールデン・エアエンライクはハルの連れ子のダニー役。
 マイケル・スタールバーグは、シスコで日銭を稼ぐためにジャスミンが勤めた病院の歯科医。
 マックス・カセラはチリのダチのエディ役。歯科医院の受付の仕事を紹介してくれたのはエディでした。

 2013年のアカデミー賞では主演女優賞を受賞、助演女優賞(ホーキンス)と脚本賞にもノミネートされたそうです。
 ケイトさんはそれ以外にも、全米批評家協会賞、NY批評家協会賞、LA批評家協会賞、ゴールデン・グローブ、英国アカデミー賞などを総なめ。

 お薦め度は★四つ半。おまけして★五つです。





(↓Twitter on 十瑠 から[一部修正アリ])
昨日レンタルしてきたウディ・アレンの「ブルージャスミン」を観る。これってアレン版の「欲望という名の電車」?「欲望という名の電車」はちゃんと観た記憶が無いが録画DVDがあるので今度観てみよう。現在の中に過去話が時々挿入されるのは、フラッシュバックの表現なのかな?
[ 9月23日 以下同じ]

それにしても最後の過去話にあんなもんをぶっこむなんて!もう一度観なければ。そんでブランシェットの演技は圧巻だったな。あれを圧巻と言わずして何と言おう。四十半ばの女性には見えないお色気も・・・。


ネタバレ備忘録はコチラ

・お薦め度【★★★★★=大いに見るべし!】 テアトル十瑠

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