何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

無 二歩

2020-11-30 06:06:06 | ひとりごと
アメリカで初の女性副大統領が誕生することが(ほぼ)確定した まさにその日 日本は、次の世も男性だけで嗣いでいくのだと世界に宣明した。
四年前はまだ頑強だったガラスの天井は、もしかすると思いがけないかたちで打ち破られるかもしれないが、日本は、海外が「女性shine(死ね)社会」と揶揄する方向で突き進むのだと世界に宣明した。
 
(ほぼ)確定した、としか記しようがないのは、敗者が詰んでしまったことを認めないため、未だ混迷を極めているからだが、こちらも時代と民の声を見誤ったまま突き進んでいくので、早晩詰んでしまう。
負けや変化を受け入れるのは、それを認める度量や知恵や品格が必要なのだが、どちらもそれがないので、どうしようもない。
 
そんな醜態にふと、テレビで見たある場面が浮かんだのは、ちょうどその頃、将棋を主題にした本を再読していたからかもしれない。
 
正確なことは覚えてないのだが、タイトル保持者のような棋士に芸能人が挑戦するという趣向の番組だったと思う。
飛車角落ちどころか歩 数枚の棋士と芸能人が対局しているのだが、棋士は困り果てたような顔をしている。
将棋がまったく分からない私は、得意げに多くの駒を動かす芸能人と棋士の顔を見比べ、歩 数枚ではさすがにプロ棋士でも厳しいのかと思ったのだが、そうではなかった。
とっくに詰んでいるのに、芸能人が負けていることに気付かず投了しないので、棋士は困っていたのである。
 
その時子供心にも、負けを知るにも知恵が要ることを知った。
負けを認め、自ら頭を垂れるには、度量と品格が必要なのだと知った。
そうして今は、それが皆無な世のなのだと思う。
 
そんなことを思い出させてくれた、将棋を主題とした「盤上の向日葵」(柚月裕子)
 
『ものを知らないことほど、怖いものはない。
 無知は人に恐れを抱かせるか、恐れ知らずにさせるかのどちらかだ。
 正しい知識を持たなければ、正しい判断は下せない。
 我々はもっと多くのことを学ばなければいけない。
 そうしなければ、日本は駄目になってしまう』(『 』「盤上の向日葵」より)
 
日本は駄目になってしまう
 
私のなかで消えた輝きを思い、思う。
 
『日本は駄目になってしまう』

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遠き日の約束 再び

2020-11-20 09:51:25 | ひとりごと
ワンコが天上界の住犬になって、4年と10カ月
16歳になった頃から少しずつ幼児帰りの様子が現れてきたワンコに、
2020年の東京オリンピックを一緒に見ようね、と話しかけていたね
でも、そのオリンピックはついにできなかったよ
(つい先日、延期したオリンピックを実行するという話もあったけど、
 これだけ世界中で感染が拡大しているのに、
 各国まっとうな選考をして、世界の真のナンバー1を決めるスポーツの世界祭典ができるわけないね  
 残念だけど)
 
ほんとにね、
今年 年が明けた時、まさかこんな一年になるとは思いもしなかったよ
 
思いもしないことが起こるのが世の常なら、後悔したくない、と思うのかもしれないし、
このコロナ禍で更に増したストレスを癒したい、という思いもあるのかもしれないけれど、
家人が、又わんこを家族に迎えようと言い出しているんだよ
 
それに対しての私の思い、
ワンコは知っているだろう?
 
今月のワンコお告げ本は、それに対するワンコからの一つの答えなのかな?
でもそれは、私には受け入れられないっていうか、
寂し過ぎるんだよ、
傍から見れば、私の思いは痛ましいのかもしれないけれどね
 
そんな思いに沈んでいると、
先月のお告げ本にあった詩の一節が、すーっと浮かんできたんだよ
 
「ザ・ロイヤルファミリー」(早見和真)
 
サラブレッドという特殊な血の継承のお話しの中にあった詩なので、
確かに特殊な お馬さんのことなんだけど、
ふと頭に降ってきた、この詩の最後の言葉がワンコからの贈り物に思えて、
上手く言えないんだけどね
今月のお告げ本の示すものと併せて、考えさせられるんだよ
 
「ザロイヤルファミリー」(早見和真)より引用
大地をしっかりと踏みしめ
大地をはっしと蹴り
風を分け 光をかすめ
何に向かって走るのか

あるいは美しさへの挑戦とも
あるいは栄光への本能とも
その真意の程を問わんとて
それはそも
遠き日の遠き約束

中略

今こそ新しき命の跳おどり
ふるさとの雪を想い
ふるさとの風を想い
何に向かって走るのか
それはそも
遠き日の遠き約束
 
引用終了
 
 
同じくサラブレットの繁殖を題材にした本「優駿」(宮本輝)に、
「馬は心で走る」という言葉があったけれど、
遠き日の遠き約束が、血統(大層ご立派だとかいうY染色体)だけのことではなく、
心を含むのなら、心をこそ受け継がれていく大切なものととらえるのなら、
ワンコ
ワンコ
 
ワンコ

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遠き日の約束、祈り④ ブルーモーメント

2020-11-10 18:53:45 | 
先月のワンコお告げ本は、30そこそこの今どきの若者が、ひょんなことからポジションとして執事のような仕事につく話で、その若い執事の語りで物語が進んでいくので、「日の名残り」(カズオ・イシグロ 訳・土屋雅雄)を思い出し、再読したんだよ。
 
晩秋まで千輪の花が咲き誇るという千輪向日葵
立冬の朝
 
「日の名残り」を初めて読んだ時は、まだほんの子供みたいなものだったので、物語の最後に執事が流す涙の意味も、そんな執事にかけられる言葉の重みや温かさも、実感としてなかったと思うんだ。

長年ひたすらに主人に仕えてきた執事が、人生も後半になったとき、旅に出る。
名執事として、自分を殺し淡い恋心にも蓋をし、ただ ひたすらに主人に仕えてきた自らの半生に、職業的な誇りこそあれ後悔はないのだが、それでも来し方を振り返り、残りの行く末に思いを巡らせたとき、名執事は涙を抑えることができない。

一人涙する執事に、印象的な言葉がかけられる。

『夕方が一日で一番いい時間なんだ』

その言葉に深い意味を見出したのは、ちょうどその頃、eveningの語源を耳にしたからかもしれない。
逢魔時とも誰彼時とも云われる夕方には、少し恐ろしく少し物悲しいイメージが付きものであるし、(ここからがお楽しみ、という向きもあるかもしれないが)一日がほぼ終わった心持ちにもなるものだが、平等という意味をもつ古ドイツ語のevenが転じて、二つに分けるという意味を持つようになったeven(ing)が、夕方を指すのは素敵だと感じた。一日を時刻的に半分(二つに)分けるのなら、正午がeveningでも良さそうなものだが、夜明けを始まりとして、残りの半分が始まる時をeveningとする。
 
だからこその、『夕方が一日で一番いい時間なんだ』、なのだ。
 
0時に始まる時刻で計れば、夕方は残りの時間が少ないことを感じさせる侘しい逢魔時かもしれないが、夜明けを一日の始まりとすれば、夕方はまだ後半戦のほんの入り口ということになる。
人生も同じではないかと、最近思う。
始まりの時を、更新することも出来るかもしれないし、たとえ夕暮れを感じたとしても、それは後半戦のほんの始まりで、しかも「一番いい時間」にできうるのだと。
 
そのように思う時、日の出前と日の入り前のほんの少しの時間だけ現れる、空が蒼い特別な時間『ブルーモーメント』が目に浮かぶ。
槍ヶ岳を照らす夕焼け
 
執事の目に、ブルーモーメントが映ったかどうか。
しかし、「夕方が一日で一番いい時間」の言葉をうけた執事の独白を聞けば、その心に「ブルーモーメント」は刻まれたのだと思う。
 
『人生が思いどおりにいかなかったからと言って、後ろばかり向き、自分を責めてみても、それは詮無いことです。 ~略~あの時ああすれば人生の方向が変わっていたかもしれない-そう思うことはありましょう。しかし、それをいつまでも思い悩んでいても意味のないことです。私どものような人間は何か真に価値あるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのような試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとすれば、結果はどうであれ、そのこと自体がみずからに誇りと満足を覚えてよい十分な理由となりましょう』(『 』「日の名残り」より)

年齢だけでみれば、人生も後半戦の入ってしまったし、近年は特に 自分が希望してきた道とは異なる道を歩み始めているので思い悩むことも多いのだが、それでも、いつも ’’始まり’’ の「ブルーモーメント」を瞼に浮かべ自分をリセットしながら頑張っていきたいと、今は思っている。

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