昨日の夜は、高田崇史の小説『QED 六歌仙の暗号』を読み直していました。
明邦大学ではとある事情で七福神に関する研究は禁止されてる。
しかし、明邦大学文学部4年の斎藤貴子は、かつて卒業論文で七福神について調べていた兄の遺志を継ぎ、禁止されている七福神の調査を開始する。
彼女は、大学の先輩である桑原崇に協力を求めて……。
歴史ミステリ小説で「QEDシリーズ」の第2弾目であります。
和歌や短歌や俳諧や川柳や都都逸などは、言葉通りに解釈しても面白い或いは美しい情景が浮かぶのだけれども、ほとんどは複数の解釈が出来るように作られていて解釈の仕方次第で全く別の意味合いに変化してとても面白いのです。
さらに作品を集められた作品集は選者の意図が入るので全く別の意味が付け加えられたりするのです。
二重三重の意味を持ち人によっては何十通りもの解釈ができる。そして複数の意味が混じりあって深い味わいを醸し出す。
作者や選者の来歴を知っていると解釈の幅が広がるし、当時の常識をある程度知っているとさらに解釈が増す。
僅かな文字数で構成された奥深い深い世界。
とてもとても面白いのです。
日本の神社やお寺も複数の意味を持っています。
皇室は日本神道の要ではありますが、神社各々の創建当時の思惑からすると全ての神社が皇室に無条件に従うわけではないのです。
朝廷に深い恨みがあるからこそ祀られているケースが多いのです。
それ故に皇室が立ち入らない立ち入れない領域もかなりあるはずです。
多くの国では異論を持つ者や不満を持つ者や逆らう者は皆殺しというやり方をしてきました。
しかし日本は古来から上手に世論対策をしてきたと言えるでしょう。恨みを持つ人達を宥め鎮めていたのですから。
そして神社やお寺は人々の祈りや願いによって意味が付け加えられて変化していくのです。
呪は人々の心に作用させる技術であって、良い心持とさせるならば祝いであり悪い気持ちにさせるならば呪いとなります。
そして呪いを祝いに変える方法も存在していて多くの神社やお寺はそのようにして成り立っていると言えます。
ただ、昔々の約束事や上手に世界をまとめる方法の意図の部分は伝えられなくなり、それらが生まれた当時の常識は忘れ去られ、風習や文献や文化だけが生き残っていて、現代を生きる私達には分かりにくいところがあります。
でもだからこそ、その部分を解釈していくのはとても楽しいです。
伝統はただ残っているのではなく良いものだからこそ残っているのです。
でも人々が意味を分かろうとしなくなれば簡単に消え去ってしまいますね。
多分、これから多くの伝統が消え去ることでしょう。
文化とは儚いものです。
この小説に描かれていることは小説なのだから当たり前ではありますが一つの解釈にすぎません。
でもこの小説に描かれている解釈はとても面白いです。
この小説(この小説のシリーズ)は、遥か昔から伝わるものを私達はついつい現代の常識で考えてしまうのですが、遥か昔の常識を踏まえた上で考え直してみる試みなのです。
面白いですよ。
お勧めなのであります。
始めてコメントをさせていただきます。
とても面白そう!
第1弾とあわせて読んでみたいと思います。
狐さんの文章が大好きです。
これからも楽しみにしています(*^_^*)
初めまして。
このシリーズは、歴史のミステリと現代のミステリをミックスさせた推理小説なのですが、歴史のミステリと現代のミステリの結合部が弱いと評するお方もいます。
歴史のミステリの部分は蘊蓄が豊富で考え方がとても面白いです。
お勧めなので是非是非読んでみてください。