狐の日記帳

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『夜行』/森見 登美彦

2020年07月07日 22時15分16秒 | 小説・本に関する日記
 昨日の夜は、森見登美彦の小説『夜行』を読み返していました。

 十年前。京都で学生時代を過ごしていた主人公は英会話教室の仲間六人で鞍馬の火祭を観に行った。
 鞍馬の火祭の最中、仲間の一人である長谷川さんは突然姿を消した。彼女はそのまま行方不明となった……。
 十年後。久しぶりに残りの五人は再び鞍馬の火祭を観に行くことにした。 
 ひとまず宿に入り、食事を取りながら近況を語り合う。
 主人公が偶然入った画廊で岸田道生という画家の「夜行」と題された一連の銅版画を見たという話から、それぞれが旅先で出会った不思議な経験を語りだし……。



 森見登美彦の『きつねのはなし』や『宵山万華鏡』の路線の怪異譚です。

 静かで端正で落ち着いた文章。
 不気味で寂しくて物悲しくて怖い。
 何が起こっているのか分からなくて不安になる。
 世界は私達の知らないことで満ちていてそして突然知らない世界に連れていかれてしまうこともある。
 そんなお話です。



 謎は謎のままごろんと投げ出されていて謎解きがない。
 それが不気味さを呼び……。
 そして最後に森見登美彦お得意のアクロバティックな展開がなされ、それでも謎は謎のまま不思議な余韻で終わるのです。

 ぐいぐいと加速して疾走するのではなく、静かに静かに不気味さを増しながら私達に迫るのです。


 妖しく怪しく寂しく怖く美しい夜のお話。
 面白いですよ。
 堪能いたしました。





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