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Civilizations and Impressions

文明と価値2(四文明と準文明)

2022-11-13 10:52:39 | 論文

2 四文明と準文明

 

 文明に関していうと、それらが標本を見るようにタイプや様式によって分類されることは実はあまりなかったようだ。ただそれぞれ漠然と自明なものとして現在まで語られてきたのではないだろうか。もちろん他にも文明の個性によって分類がなされたことはあった※1。

 

 この一連の研究は文明を一般的な概念によって分類することを一つの大きなテーマとしてきている。文明をある意味、標本として展示していきたいという思いがあった。要はどのようにしてそれぞれ文明の個性を説明できるか。一般的概念を使うことによってより分かりやすく表現できるか。それがやりたいことの大きな柱であった。

 

 ここから文明の分類方法を簡単に振り返ってみよう。まずその形態的※2な特徴によってまずは大きく二つに分かれていくこととなる。

 四つの「文明」とその他の多くの「準文明」がそれである。

 そして四つの文明は二つの一般的概念によって分類され、準文明は四つの一般的概念によって分類されていくこととなった。

 

※1 文明の個性によって分類がなされたことはあった

 トインビーの「歴史の研究」では親文明、子文明、発育停止文明、流産文明といった文明概念が出てきた。またそれ以外に21の文明社会の存在が提起されていた。しかしこの21の文明は一般的概念によって分類されたものでなく、その個性によって分類されたものといっていいだろう。文明の名前は例えばエジプト文明だとか、アンデス文明だとか固有名詞でつけられている。観照対象である文明の個性をダイレクトにとらえてきたというわけである。しかしそれではオンリーワンの文明がそれぞれ存在するだけであり、それぞれの文明間には類似性はない。これでは共感や関係性は生まれてこないだろう。文明を唯一性的な個性でなく、一般的概念でとらえ、分類することは共感や関係性を構築する第一歩であろう。言葉をかえればユングのタイプ論のような方法で文明をタイプ化する試みともいえる。

 

※2 形態的な

 シュペングラーの「西洋の没落」の中で形態として文明をとらえるという考え方が出てきた。しかしこれは固体の形(構造)としての形態でなく、固体が時間と共に変化していくことを形態としてとらえているといっていいのではないだろうか。そう考えたうえで、その分類のいちばんはじめに文明と準文明を大別した。そのようにしたのは、その形態的な発展の仕方にそれぞれ違いが出てくるのではないかと考えているからである。「文明」は発展しても衰退しても、周辺のより小さな文明に影響を与え続けるだろう。それに対して「準文明」は独自のモラルシステムを持ち続けはするが、「文明」から大きな影響を受け続けることであろう。その影響の中心にあるものが「文明」における「モラルシステム」であり、これが広いか狭いかで文明か、準文明かということにもなってくる。したがって「文明」=「モラルシステム≒宗教」という式は文明論の中心にあるテーマともいえる。

 

 しかし「文明の研究」の中で示されたひとつの結論があった。個別の文明の形態変化によって文明が進化してきたのではなく、それら文明同士の関係性こそが、文明を生み出し、進化させてきたというものだった。

 

 その典型的な例としてイスラム文明とヨーロッパ文明の関係性が挙げられるかもしれない。この二つの文明の関係性が結果として現在の西洋文明を生み出した。この関係性の中でヨーロッパ文明の起動力の中心にあり続けた「欠乏」は克服され、西洋文明における軍事信仰と資本信仰を生み出した。

 

 文明論におけるこういう経緯は実は最も重要なことなのかもしれない。覇権の交代においても経済的な視点、資本主義的な視点から語られることが多い。しかし資本、軍事それぞれ単独では成立しえないものであろう。この問題を解明することがこの論文におけるもう一つの重要なテーマとなっていくことだろう。

 

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