<家庭の教育力>9割が「低下」、背景に過保護 北海道調査
青少年の指導や育成に当たっている人の9割が「家庭でのしつけなど子供への教育力が低下している」と感じていることが北海道のアンケート調査で分かった。この背景に、子供を過保護にしたり、甘やかし過ぎる親の増加があると警告している。一方、インターネットにあふれる有害な情報の規制を望む声が過半数に達しており、道は現在進めている「道青少年保護育成条例」の改正に反映させる方針だ。
調査は青少年育成の現状と課題を探るのが目的で、05年8月に青少年育成運動推進指導員ら267人を対象に実施し、うち154人が回答した。
その結果、家庭での教育力低下について、48%が「全くその通り」と受け止め、46%が「ある程度その通り」と答えた。具体的に感じる課題(複数回答)は、「あいさつや規則正しい食生活など基本的な生活習慣」が84%、「人に迷惑をかけないなどの社会的規範」が78%と目立った。 この理由について、「子供を過保護や過干渉にする親の増加」と答えたのが72%と突出しており、「しつけの仕方が分からない親の増加」の56%と続いた。
青少年の非行防止策として「家庭でのしつけや教育の充実」(73%)「家庭、学校など関係機関の連携強化」(60%)を挙げ、社会環境面での対策では「インターネット上の有害な情報規制」と「子供への声かけなど地域住民の意識高揚」がともに61%と高かった。
【田中泰義】(毎日新聞) - 3月6日3時6分更新
一昨日のエントリでどうしても自分で納得いかないので、長々といきます。
大事な冒頭の文章。ほとんど人がここで記事の内容を把握する。それ以降なんて読み飛ばされてしまう。にもかかわらず、冒頭から主語があやふやだ。「青少年の指導や育成に当たっている人」がどういった人で、人数さえ不明だ。にもかかわらず、いきなり「9割」で「北海道のアンケート調査」とくる。つづいて誰が誰に「警告している。」のかも不明である。最後に付け足しのようにアンケートの目的と思われる”「道青少年保護育成条例」の改正”が出てくる。
ここまでの文章がどうしても結論ありきに思える。それは「家庭でのしつけなど子供への教育力が低下している」という結論。さらに、タイトルを含め全文を通して地域を特定できる”北海道”という言葉が2回しか出てきていない。タイトルと最初の文の2回。後は三つ目の文章に”道”が2回。これではまるで結論を北海道限定でなく、全国的な結論に置き換えようとしてるように思える。結果として、この記事を取り上げたブログのエントリの大半は記者の思惑通り「全国的に家庭でのしつけなど子供への教育力が低下している」で書かれている。
で、アンケートについて。目的は”調査は青少年育成の現状と課題を探るのが目的”って条例の改定がないんだけど、好意的に解釈して ”「道青少年保護育成条例」の改正のための調査で青少年育成の現状と課題を探るのが目的”としておこう。さらに付け加えておくならこのアンケートが調査全てでなく”調査の一部”なのであろう。(これも好意的)
つづいて、アンケート対象者。「青少年育成運動推進指導員」正直、聞いたことがない。いや忘れてるだけか?調べてみても具体的に分からない。条例に基本的な事は書いてあるのだが・・・例えば
女満別町の条例だと
第2条 教育委員会が任命し、その身分は非常勤の特別職とする。
第3条 定数は、6人以内とする。
第4条 指導員は、警察、学校及び各関係団体と緊密な連絡をとりながら、青少年の健全な育成と指導に努めるものとする。
第7条 指導員の報酬は、年間60,000
女満別町の総人口は5,896人(2005年3月31日)なので1,000人に1人ぐらいの割合だろうか。少ないとはいえ報酬がある以上全くのボランティアとも違うのだろう。全国的に似たような名前の役職があるので、自分の近所にもいるはずなんだが・・・やはり記憶にない。なんにしても具体的な事が分かりません。ただ言えるのは教育現場の最前線にいる人ではないのだろう。もし最前線でバリバリやってる人なら中学高校の子供を持つ親として役職名ぐらいは覚えてると思うのだ。ということで、アンケート対象者は現在の教育現場をよく知っている人間では無いということなのだろう。(北海道が違ってたらごめんなさい)
アンケート人数。こればっかりは、どう贔屓目に見ても無理。母集団の数は最低500、サンプル数は50%の250は必要ってのをどこかで読んだ。母集団がまるで足らない。これでは統計的な根拠になりえない。アンケートの目的を達成できてるとは思えない。参考資料にもならないと思う。
さらにアンケート内容。公表されてない。これが無ければアンケートの評価なんて不可能。例えば今回のアンケートの「家庭での教育力低下について」の部分。質問文が無いから答えから想像すると、質問は「家庭での教育力は低下している」でその答えとして「全くその通り」「ある程度その通り」・・・続くのはなんだろう「全く違う」はあるだろうけど後は「分からない」ぐらいじゃないか?そうなら、結果として9割まではいかなくても過半数の「家庭での教育力は低下している」の答えは必ず得られると思うのだ。そもそも設問が誘導的だ。「青少年の昨今の非行等の諸問題の原因はなんだと思われますか」が質問で、回答の1つとして「家庭での教育力は低下している」があるなら分かるが、この質問形式は完全に誘導だ。さらに続く質問も誘導の補強だ。
意味をなさないアンケート。そのアンケートを元に書かれた結論ありきの記事。
何のために?
経験的に言えば教育委員会の保険・布石。
親を含めて多くの人に「家庭での教育力は低下している」を刷り込んどけば問題が起きた時に問題を起こした生徒の家庭の問題で済ますことが出来る。
どんなに先生が無能でも関係ない。
学級崩壊だろうといじめだろうと不登校だろうと問題を「家庭での教育力は低下している」にすり替える。
親が先生の無能を指摘しても、他の多くの親は刷り込まれてるので「家庭での教育ができないから、そんな事を言うのだろう」という考えしかできない。
こうして一部の生徒とその親に全ての責任を転嫁できる。
最後に自分の先生や教育委員会に対する思いとしては、
「責任逃れなんて考えずに、お互い協力しましょう。お互いの目的って同じでしょう。」
って事なんですけどね。どうも”お互い”って部分がこれまた難しいようで・・・