●悪魔と踊ろう vol 4-1 裏金
水色の太いロープを腰に巻き付け、両手錠を掛けた男が陽気に喋っている。
私が捕まえた盗人が、自供したとおりの犯行現場まで犯人を護送し、
写真撮影やら証拠品の確認やら、
犯人しか知り得ない事実を“かためる”ための「引き当たり」捜査がはじまった。
私は護送員の役で6月14日から徳島県へ出張。
ワゴン車の後部座席で、縄を打った犯人様と、
お喋りをしながら、四国の高速道路を北へ向かった。
最近の犯人様は、犯罪者としての悲壮感がない。
警察に捕まっても次は、刑務所でメシが食える。一昔前まで、あまり見られなかった刑務所志願の
「メシ喰い犯罪者」が最近急に増えている。この盗人も、その典型である。
大阪から始まり、盗んだ自転車にテントや寝袋を乗せ、四国や九州で盗人行脚を繰り返す。
食える時は、スーパーで買い物しながらテント生活。食えなくなれば、刑務所に入ればいい。
何の屈託もなく盗人行脚をくりかえし、終着駅は四万十川河口に広がる自生林の中だった。
竹や雑木で覆われた林の奥でテント生活をして、御本人の姿は隠していたが、
入り口の竹藪に隠した、新型のマウンテンバイク(自転車)が、回りの風景には不釣り合いで、
いかにも「盗んで、隠している」と言わんばかりの置き方は、私に招待状をプレゼントしてくれた。
捕まえてみれば、金庫破りや自動販売機荒らし等の余罪が、大阪から徳島・愛媛・高知等、
各地で点々と犯行を繰り返している。
最後は四万十川の河川敷にあるゴルフ場で金庫破り。
10円・100円・500円硬貨を
汚い布袋に大量に詰め込み「悪いことはやってない」
と言ってくれるアホは、久し振りの盗人だった。
これだけ余罪のある盗人を駐在さんが捕まえたら、まず本部長賞と言う最高の表彰状を
いただける事は間違いない。
それとも、「銀行員失踪事件」で組織からにらまれている私には、
手柄を立てても、何の評価もされないかもしれない。
いまさら「賞」なんかどうでもいいが、一眼国の私に対する評価を推し量れる
~最高の材料だった。
結果は盗人の供述調書を仕上げ、裁判所に送致する2・3箇月あとだ。もし「賞」がなければ、
いまだ「銀行員失踪事件」はゴミ焼き場の煙のごとく、臭い煙を立ち上げている証跡であろう。
この盗人が「銀行員失踪事件」の今後を占う、大切な物差しになる。
1人で思惑を噛み締めながら、護送勤務についていたが、
刑務所に入っても困らない「メシ喰い犯罪者」は 警察官とよく喋る。
どこで、どのようにして盗んだ。全て協力的である。
喋らないのは、自分の過去だけだ。
親がいなければ人は生まれない。人がいなければ育たない。
が、その一点に関しては何も喋らない。
「殺し」の犯人なら、別のやり方で聞き出すのだが、協力的な盗人ならその必要もなく、
聞き出したところで、そんなデーターを活用するような刑事を見かけない。~どうでもいい、
窓から外の風景を見ながら
ドライブ気分で座っているだけの私は、居眠りばかりしていた。
四国は便利になった。初めて通る高速道路を見ながら、
高知市から1時間で、どこにでも行けるスピード感に驚いた。
四国は1つである。が、私は逆の思いがある。
日本経済は、間違いなくアメリカ型の構造になる。
製造業は中国や東南アジアに移り、日本はハイテク産業と金融が主体になるだろう。
~となれば、生産力が低くコスト高になる四国と言うエリヤは、すでに四分割された
~「四国」である~必要はないのだ。
高速道路は四国を1つにまとめ、ひとつの過疎の空間を創造するだろう。
すでに、地方の時代は、終わった。
政治家は、平成10年頃から夢のような~21世紀を語った。
公共事業で、国から金の成る木を移植するため、選挙に勝つ為の方便。早い話がウソ八百。
高速道路を見ながら再度ウソを確認し、ますます地方の立ち遅れを痛感した。
この高速道路も~
国の金を地方に引っ張る・ひとつの手段に過ぎないのだが、夢の中で全てが埋没している。
今や、日本企業は中国や東南アジアに工場を移転さす時代。仕事のない無職少年や、
投げやりになった中高年世代が急増している。
路上や空き地で自殺する、身元不明の変死体は、
年々増え、過去に例のない犯罪も日増しに増加している。
逆に、警察に捕まったら刑務所でメシが食える。
刑務所志願者も増え、さらに東南アジア系の外国人犯罪者は
「日本の刑務所は、米のメシが食える」
「刑務所の中で殺されない」と、刑務所自体が本国に比べ、別天地であることを喜んでいる。
世界一を誇った日本の治安も夢物語だが、
お役人は、いまだ過去の慣例に寄り添い、粛々と生きているのが現状である。
このギャップは、ツケとなり、現場の警察官に大きくのしかかり、
最終的には、国民に犠牲を強いられるが、
国家の上級試験にパスしたエリート警察官僚は、机の上で統計的な数字
や高級な法律論を取り並べ、理想論を振り回しておれば出世できる。
「暴対法」を新設し、暴力団のみに取り締まりを強化した後で何が起きた?
ヤクザが地下に潜りギャング化し、闇金融が全国にはびこり、何人の人が自殺したか?
街には、得体の知れない~犯罪少年が増え、過去にない事件が続発している。
不良外国人が急激に増えたのも「暴対法」以降だ。
組の看板を背中に背負ったヤクザが、凄みをきかせ~軽く殴ったら最低でも2~3年は刑務所。
~これを良いことに、愚連隊風のガキや不良外人・ド素人の小銭稼ぎが急増する。
さらにタチの悪いプロの盗人集団が、“組”からあふれ、金に困ったヤクザと組んで組織的に
強引な盗人働きをやる。
“組”として動けなくなった者が、建設業を強引にやりだし~どっかの市長を銃撃した事件は
単に“銃撃”だけが、ニュースとして流れたが「暴対法」と合わせ、報道したメディアは、まったく無い。
ますます地下に潜り~無登録の“組員”が増え、仁義も糞もない、何でもありの裏社会ができるだろう。
・・・・・・・「ヤクザと言う犯罪組織が、公に組の看板を掲げているのは、日本だけだ。~けしからん」
と、言うのがエライ人の考え方らしい。が、「看板」と「代紋」があるから
ヤクザがギャングに成れなかった。~成らさなかった。型があった。
「看板」は「任侠」を継続さす為に、仕組まれた最高の演出である。~日本人の生活の知恵だ。
正しい事しか知らない、偉いお役人は、目先の理想論だけを先行させ「悪を全て排除する」
との崇高な論理を旗印に、清く・正しく・美しい・“不可能”な大儀を前面に押し出した。
数千年の歴史がある仏教には、仏様の顔の裏側に~悪魔の顔があった。との考え方があり、
いまここで、等々と言う事もないが、日本が戦争に負けたドサクサの終戦当時。
日本の治安を守ったのは、ヤクザだ。
裏の掟は、裏に任せるのも大事な事だ。
警察に犯罪組織に関する、裏の裏まで取り締まる実力はない。
事件があり、死体が公になるまで、何も知らない。知る力はないのだ。
なら、毒は毒で制するべきだ。それがいやなら、実力をつけろ。裏の世界から情報を取ってこい。
できるか?・・そんな努力をしなくても、~出世に影響はない。
今、裏の世界と関係を持てば即、首になる。
そんなバカな事をするより、警察の昇任試験を頑張ったら出世する。
~だから、知らん顔して、言われた事だけ~素早くやっておればいいのだ。
“組”が有れば~まだ情報が取れるが、地下に潜った仁義も糞もない極悪人から、情報を取る様な
実力は、まったく無い。
「上」がカラスは白いと言うなら、カラスは白いものだ。黒なら黒。
「暴対法」が素晴らしい法律なら、神より素晴らしい。
その内、殺された日本人の数をかぞえ、統計を取ったデーターが「上」に回ったら、
机の上で高級警察官僚が、それなりにながめ、利己そうなツラで・・土佐の方言でいう
・・・「リコゲに」何か喋るだろう。
下々の者は、犠牲者を出しながら、それまで待つんだ。
・・・民間企業のように、先回りするだけの能力は警察にはない。
全て「上」から与えられた命令に“愚直”を意気に従うだけである。
暴対法は、法を創りだした警察官僚の“足元を維持”するために、ますます強化され、
現場の警察官を苦しめ
同時に地域住民の裏側を完璧に破壊するだろう。
~裏社会の基盤を壊した代償のツケは、全て現場が支払う
エライ警察官僚は、自分の立場と足元のみを守っておれば御安泰で
“お国”全体の流れを思考するだけの知恵はない。
所詮~“お受験”で勝ち取ったポストだ。それ以上のセンスは、まったくない。考える必要性も無いだろう。
昔々~命のやりとりの真っ直中で生まれ育った日本人の英知~
・・・~情報収集能力→(「四万十の忍者」)を今一度・考えるべきだ。
「牛のクソにも段々がある」これが警察で生きるための虎の巻だ。
牛のクソは、下から上に大きさが異なり、それぞれが段々を形成している。
「この下等な、牛のクソにさえ段々がある。まして偉大なる我が警察組織は、
当然上から下に~組織だった命令系統があって当然である」との意気込みである。
どこの組織であろうが、統率された命令系統が有るのはあたりまえだ。
が、「牛のクソ」にたとえて、ことさら命令系統を強調するのは警察ぐらいだろう。
しかし、真実の牛のクソは別の意味がある。
1つの仕事が入ると、書類作成して自分の印鑑を押し次に回す。
回した段階で、牛のクソの1つの段をクリアしたわけだから、次の段の責任になる。
次の段で印鑑を押印し、自分の責任を回避した者が、次の段に回す、また次の牛のクソの段
にいる者が印鑑を押し、次に回す。回した者、回された者、それぞれが第三者に責任転換
可能な範囲内で堂々巡りしているにすぎない。
その中で「上」に都合がいい箇所があれば、「上」が喰う。
「上」が喰えるエサを多く持って行った者が優秀警察官であり、エサに道徳的観念はない。
民間企業では、素晴らしい早さで改革され、現場の動きが直接製品化される商法・戦略
が実戦されて多大な成果を残しているが、親方日の丸の独占企業には「生き残り」の危機感
がなく必要性もないから、今だ「牛のクソ」が主体である。
過去、全国で報道された警察官の不祥事なる問題点は、全て「牛のクソ」が絡んだ結果であり、
不祥事を起こした本人に、罪悪感は無いと断言できる。
「みんな、やっている」「なんで、オレだけ処分された」これが正直な回答だろう。
処分とは、「上」に対し都合の悪い人物を消す事であり、表に出てない不祥事は、
何の問題にもならず「矛盾」と書いて「常識」と読み、コネと書いて「力」と読むのが、
一眼国の読み方である。
そして、これに異議を申し立てたら、即、消されるのが常であり
「愚直」とは、まさに警察官の神髄である。「暴対法」も「愚直」に進行するでしょう。
車の後部座席で、盗人様と世間話をしながら、頭の中では、全く違う事を1つ1つ思い起こしていた。
女房と結婚して以来、旅行なんかした事がない。
初めて見る風景を、窓に付いた雨粒が高速道路を走る車の速度で、水平に走り、後ろに飛び散る
様子と合わせ見ながら、この程度の護送の仕事しかできなくなった我が身の情けなさが、
次々に飛んで行く雨粒に哀れみを感じ取った。
ま、「上」は、それが狙いで万年巡査を作ったのだろうが、そうはいかん。
「上」が万年巡査を作るなら、私は1人の軍隊として、時が来るのを待つだけだ。
万年巡査は、「戦争をしてもいい」と、聖戦のお墨付きを警察組織からもらったのと同じだから、
私が最も大事にしてきた「銀行員失踪事件・蒸し込み工作」の証であり、
また一眼国が創造した最高傑作でもある。
護送してきた盗人様の宿は、徳島市内から少し離れた警察署の留置場だった。
監獄の中に送り届け、さっそくビジネスホテルで宿泊の手続きをとり、夜の街に繰り出したが、
酒場に関しては、高知に比べ閑散としていた。結局、一緒に護送してきた3名と焼鳥屋に入り、
久し振りに生ビールをジョッキで飲んだ。
警察仲間と飲みに出たのは1年以上なく、何もかも懐かしかったが、さほど酔う気持ちにもなれず、
帰りは、皆と別れて1人でホテルまで帰ることにした。
阿波徳島藩の街並みを見ながら川沿いに歩いていると、ビルの谷間に笛と太鼓の音色が聞こえた。
まさかこの時期にと思ったが、間違いなく阿波踊りのリズム。音につられて大きなデパート
の裏側にある公園まで行くと、踊りの練習をしている20人位の集団がいた。
テレビでは何回となく見たが、実際に見るのは初めてだった。手は、小刻みに円運動を
繰り返し、右手と右足、左手と左足が同時に動いている。
重心は常に後ろ足にかけ、横の動きがリズミカルにできる工夫が感じられる。
まるで空手の“猫足の型”と同じだ。昔の柔術のようでもある。
手の円運動は、防御と攻撃が一体化した動きであり、足は常に横の動きができる構えで、
直線的に相手の懐に飛び込む事もできる。
千変万化、攻撃と防御、どちらでも使える。いい動きだ。私は、徳島県や阿波踊りについて
何の知識もないが、以前から日本古来の踊りで、どうして阿波踊りだけがジャズのような、
無作為的な動きをするか不思議でならなかった。
踊りとして見るより、昔の格闘家が酒を飲み、
いい加減に踊ったと考えれば、何か理解できるような気がするのだが?・・・・
私のかってな思いが、まったく間違っていたとしても、テレビで見るのと実際見るのでは
大違いである事だけは確かで、しばらく公園のベンチに座り、時間の経つのを忘れ見入っていた。
たとえ練習でも、祭りの中でぼんやり時を過ごすのは何年ぶりだろう、少なくても13年。
あの事件以来、リズミカルな動きの中で、ゆとりを感じたのは久し振りだったが、
踊りを見ても戦いを連想しながらぼんやり座る自分自身を、
他人を見る思いで観察する自分が安らぎを感じている。
まるで我が子が遊んでいる様を
微笑みながら見ているようで、子供と親を同時に演じている。
酒のせいか?これほど自分自身に素直になれたのも久し振りだ。
病気には無縁の私が、心臓に不整脈ができ、治療したのが2箇月前だった。
なるほど、やっと原因がわかった。私と自分の両方が、別々の役を演じているようだが、
この13年間、そうせざるを得なかった。
そうでなければ私は、酒かパチンコか、泥沼を彷徨していただろう、それこそ一眼国の思惑通りだ。
だから逆に動いてやったのよ、高齢者が実戦空手に入門し、水泳で身体を鍛えた。
今は、事件の記録を作っている。
いつか必ず決着をつけてやる。
そう思い直すと、現世から離脱し、刹那的な快楽を求める激しい動きに
着物を着せたのが阿波踊りか?とも思った。この考え方が正しいのかもしれない。
私の阿波踊りは「事件の記録」だ。これがなかったら、生きる目的が崩壊する。
警察には、一流大学を卒業し上級国家試験に合格した、キャリヤ組と言われるエリート集団がいる。
彼らは、信じられない早さで出世街道をばく進し、
30歳台で各都道府県の署長クラスをアゴで使う輩がいる。
官僚制と言う日本の悪しき伝統~日本病の根源。
民間企業とは違い現場の仕事なんか、何の経験もないヤツがアッと言う間に地方の頂点に立ち、
次は東京に帰って出世の仕上げをする寸法だ。
今の高知県本部長には、この資格がない「努力虫」である。
キャリヤの資格が無い、普通の警察官が、おそらく自分自身を伏せ込み、精一杯組織的な
努力を積み上げ、あと3年で定年退職になるお人が、最後の最後に高知県警察本部長に大抜擢された。
定年まで残り1年と少し。
御本人が本部長になれたのは、高知県が初めてであり、最後だ。
日本のお役人は、こういうヤツにドロをかぶせるものだ。
エリートは出世のために~組織入りするものである。
汚いドロ・他人の尻ぬぐい・不祥事・等々、エリートが出世する為にマイナス要因となる
事柄は、ことごとく避けて通る。
「通さす」のが各県のお役人の最重要課題であり、責務だ。
なら、「銀行員失踪事件」等という不名誉な警察犯罪を処理するのは、
今回の、この本部長以外にはありえない。
が、犯人 田岡 大は別件で取調中、自殺した。もともと闇に葬るつもりなら、「別件捜査」
はせず、そのままにしておけばいい。
それを「別件」を持ち出したのは、
完全に葬る事が出来ないから、
いやいや「別件」を 持ち出した。と、考えざるをえない。
一番大事な警察犯罪を蒸し込み、仮面を被せる為の「別件」である。
この「別件」に、最も効果的な「殺し」を遂行いて幕となった。なら、この本部長も、
お払い箱になるだろう。芝居の代償は予算を必要としない、本部長という肩書きだけで充分である。
出世の二文字が欲しい輩に、組織の未来が見えるはずがない。
はじめて来た阿波の国で、踊りのリズムに浸りながら、自分のこれからを思い浮かべた。
出世するバカ、しないバカ、どうせアホなら踊らなソン。と、うまい事を言ったものだ。
わたしの踊りは、悪魔と一緒に踊る阿波踊りだ。踊るんだ、どうせなら踊りまくってやる。
踊って、踊って、踊り疲れて、道ばたで死んでも、どうせなら踊った跡、足跡ぐらいは残してやる。
そう思うと気が楽になった。~たぶん、これが阿波踊りだ。
阿波の国から帰った翌月。7月14日から5日間、大阪へ出張。
同じく盗人の護送勤務を終え帰った。翌日には、地元の夏祭りが盛大に行われ、
祭りに担ぎ出される御輿「下田の太鼓台」の交通整理・雑踏警備を1人でやった。
毎月24日は失踪した銀行員の月命日だ。今年で13年。私の単身赴任も13年。
13という数字は変わらない。高知県の全ての公務員の中で、連続13年の単身赴任を
した者がどこにいるか?聞いた事もない。
52歳で、今だ巡査長をしている警察官がどこにいるのか?おれば教えて欲しい。
すべてはコネしだいだ。巡査長の13年。よくぞここまで苦汁をなめさせてくれたものだ。
聖戦の戦意は煮つまった。菊の御紋がついた錦の旗印は私のものである。賊は一眼国。
1人の軍隊が、挙兵するのにこれ以上の大義はない。
その24日、またしても吉本新喜劇が新聞紙上をにぎわせていた。
「高知県警の捜査費虚偽請求」「上司の指示で捜査員協力」「印鑑 幹部が保管、押印」
新聞紙上には大見出しが続いている。
高知県捜査一課長が、昨年4月から10月までの7ヵ月間に、架空の捜査協力者・27人
をデッチアゲ、ウソの協力者に支払ったように装い捜査費を見積もって、
警察庁に約196万円の捜査費用を虚偽申請していたと、高知地検に告発された記事だ。
しかも、告発された捜査一課長は、「銀行員失踪事件」の犯人を別件の
「女性に対する暴力」で任意に取調中。犯人を首つり自殺に追い込んだ、捜査一課の責任者である。
アノ夜も中村警察署に来ていた。私が同僚に「アイツは、自殺する」と予言した夜だ。
予言は、みごと的中し4~5時間後に自殺している。その指揮官である捜査一課長が、
24日、銀行員の命日に「捜査費虚偽請求」で告発されたとは、
何か得体の知れない因縁めいたものを感じる。
しかし、県警本部の警務部長は
「報道されたことは事実ではなく、捜査費をはじめとする予算は、適正に処理されている」と説明した。
新聞には、そう書いている。
吉本新喜劇の台本だ。が、なぜか報道しているのは高知新聞だけだった。
捜査費虚偽請求などというモノは、長い伝統につちかわれた警察のお家芸である。
ほかにも交通安全協会費・防犯対策費などなど、
およそ「費」と付く「銭」に関しては、すべて「虚偽申請」である。
親方日の丸だからできる技で、盗人に金庫番をやらせているのと同じだ。「裏金作り」の
「職人」は「会計課」の警察職員で、組織の中では優遇されているが、
公務員はコネで動く人事異動が多く、企業のように頭の切れる「切れ者」は少ない。
「危機感」もなく徹底的な調査をすればすぐバレる。それを外に出さなかったのが、
一眼国という閉鎖社会である。
「閉鎖」だから組織が維持できるわけで、「閉鎖」を「神」として信ずる者は救われる、
ホントのことを言えば飛ばされる。「コネ」と書いて「力」と読み。
「矛盾」と書いて「常識」と読む北朝鮮日本支部・一眼国の常識は、世間には通用しない。
まるでガマの油売りだが「さてお立ち会い」。こんな虚偽請求を真面目くさって考え、
思い悩む警察官は日本中さがしても1人もいない。
「当たり前」の話だから日本にはいないのだ。
むかしあったコマーシャルに「あたりマエダのクラッカー」というのがあった。
その程度の話で、常識以前の単なる小話にすぎず、内部では「腕が立つから、銭が取れる」
「コネがないから、アノ幹部は銭が取れん。あんなヤツ幹部にはふさわしくない」などとささやかれた。
要は、「取って、あたりまえ」なのだ。
現在、警察官の給料は銀行に振り込まれているが、一昔前までは現金でいただいていた。
だから各個人の印鑑は、会計用として会計課が管理保管していたのだ。
転勤になれば本人が動いた後、印鑑が後から送られてくる。印鑑は常に会計課にあり、
転勤になった警察署にも印鑑が必要なわけだから、警察官は常に2~3個の印鑑が必要だ。
この印鑑で何をする?「お前、このまえ北海道に行っていたか?」。
昔の警察署でのチョッとしたジョークだ。
はやい話が「カラ出張」の虚偽請求が本人の知らない内に会計課がデッチアゲ「請求」した
と言うジョークである。
昔は何の危機感もなく「カラ出張」でさえ公のジョークですんだ良き時代で「オレは、沖縄だ」と、
やり返えされた。酒のさかなである。
寝る時間もなく盗人を追い回し、やっと捕まえた。
1ヵ月の超過勤務時間が100時間を越そうが200時間を超えろうが、
10時間程度の超過勤務手当てしかない事はざらにある。誰かが、署員の銭を取っている。
「あたりマエダのクラッカー」。
昔、高知警察署などの大きな警察署で定年退職した署長は、
退職金以外に2000万円位の手当てがつく、
~などというのは、あたりまえの話。
だから「裏金作りの職人」会計課職員は優遇され、
程度の低いヤツは、下級警察官に対して横柄な態度で接するバカもいる。
警察幹部に渡す裏金を創造する、錬金術が特権意識を持たせるのである。
逆に会計課職員本人が銭をごまかした「横領」事件があっても、もし本人を逮捕したら
裁判の結果、他の「裏金工作」が暴露される恐れがあるから絶対に捕まらない。
酒を飲むなら署長と飲んだらタダ酒が飲める、美味しいポストである。
・・・~こんな事~警察官なら常識です。
(冬の四万十川)
(橋は沈下橋)
水色の太いロープを腰に巻き付け、両手錠を掛けた男が陽気に喋っている。
私が捕まえた盗人が、自供したとおりの犯行現場まで犯人を護送し、
写真撮影やら証拠品の確認やら、
犯人しか知り得ない事実を“かためる”ための「引き当たり」捜査がはじまった。
私は護送員の役で6月14日から徳島県へ出張。
ワゴン車の後部座席で、縄を打った犯人様と、
お喋りをしながら、四国の高速道路を北へ向かった。
最近の犯人様は、犯罪者としての悲壮感がない。
警察に捕まっても次は、刑務所でメシが食える。一昔前まで、あまり見られなかった刑務所志願の
「メシ喰い犯罪者」が最近急に増えている。この盗人も、その典型である。
大阪から始まり、盗んだ自転車にテントや寝袋を乗せ、四国や九州で盗人行脚を繰り返す。
食える時は、スーパーで買い物しながらテント生活。食えなくなれば、刑務所に入ればいい。
何の屈託もなく盗人行脚をくりかえし、終着駅は四万十川河口に広がる自生林の中だった。
竹や雑木で覆われた林の奥でテント生活をして、御本人の姿は隠していたが、
入り口の竹藪に隠した、新型のマウンテンバイク(自転車)が、回りの風景には不釣り合いで、
いかにも「盗んで、隠している」と言わんばかりの置き方は、私に招待状をプレゼントしてくれた。
捕まえてみれば、金庫破りや自動販売機荒らし等の余罪が、大阪から徳島・愛媛・高知等、
各地で点々と犯行を繰り返している。
最後は四万十川の河川敷にあるゴルフ場で金庫破り。
10円・100円・500円硬貨を
汚い布袋に大量に詰め込み「悪いことはやってない」
と言ってくれるアホは、久し振りの盗人だった。
これだけ余罪のある盗人を駐在さんが捕まえたら、まず本部長賞と言う最高の表彰状を
いただける事は間違いない。
それとも、「銀行員失踪事件」で組織からにらまれている私には、
手柄を立てても、何の評価もされないかもしれない。
いまさら「賞」なんかどうでもいいが、一眼国の私に対する評価を推し量れる
~最高の材料だった。
結果は盗人の供述調書を仕上げ、裁判所に送致する2・3箇月あとだ。もし「賞」がなければ、
いまだ「銀行員失踪事件」はゴミ焼き場の煙のごとく、臭い煙を立ち上げている証跡であろう。
この盗人が「銀行員失踪事件」の今後を占う、大切な物差しになる。
1人で思惑を噛み締めながら、護送勤務についていたが、
刑務所に入っても困らない「メシ喰い犯罪者」は 警察官とよく喋る。
どこで、どのようにして盗んだ。全て協力的である。
喋らないのは、自分の過去だけだ。
親がいなければ人は生まれない。人がいなければ育たない。
が、その一点に関しては何も喋らない。
「殺し」の犯人なら、別のやり方で聞き出すのだが、協力的な盗人ならその必要もなく、
聞き出したところで、そんなデーターを活用するような刑事を見かけない。~どうでもいい、
窓から外の風景を見ながら
ドライブ気分で座っているだけの私は、居眠りばかりしていた。
四国は便利になった。初めて通る高速道路を見ながら、
高知市から1時間で、どこにでも行けるスピード感に驚いた。
四国は1つである。が、私は逆の思いがある。
日本経済は、間違いなくアメリカ型の構造になる。
製造業は中国や東南アジアに移り、日本はハイテク産業と金融が主体になるだろう。
~となれば、生産力が低くコスト高になる四国と言うエリヤは、すでに四分割された
~「四国」である~必要はないのだ。
高速道路は四国を1つにまとめ、ひとつの過疎の空間を創造するだろう。
すでに、地方の時代は、終わった。
政治家は、平成10年頃から夢のような~21世紀を語った。
公共事業で、国から金の成る木を移植するため、選挙に勝つ為の方便。早い話がウソ八百。
高速道路を見ながら再度ウソを確認し、ますます地方の立ち遅れを痛感した。
この高速道路も~
国の金を地方に引っ張る・ひとつの手段に過ぎないのだが、夢の中で全てが埋没している。
今や、日本企業は中国や東南アジアに工場を移転さす時代。仕事のない無職少年や、
投げやりになった中高年世代が急増している。
路上や空き地で自殺する、身元不明の変死体は、
年々増え、過去に例のない犯罪も日増しに増加している。
逆に、警察に捕まったら刑務所でメシが食える。
刑務所志願者も増え、さらに東南アジア系の外国人犯罪者は
「日本の刑務所は、米のメシが食える」
「刑務所の中で殺されない」と、刑務所自体が本国に比べ、別天地であることを喜んでいる。
世界一を誇った日本の治安も夢物語だが、
お役人は、いまだ過去の慣例に寄り添い、粛々と生きているのが現状である。
このギャップは、ツケとなり、現場の警察官に大きくのしかかり、
最終的には、国民に犠牲を強いられるが、
国家の上級試験にパスしたエリート警察官僚は、机の上で統計的な数字
や高級な法律論を取り並べ、理想論を振り回しておれば出世できる。
「暴対法」を新設し、暴力団のみに取り締まりを強化した後で何が起きた?
ヤクザが地下に潜りギャング化し、闇金融が全国にはびこり、何人の人が自殺したか?
街には、得体の知れない~犯罪少年が増え、過去にない事件が続発している。
不良外国人が急激に増えたのも「暴対法」以降だ。
組の看板を背中に背負ったヤクザが、凄みをきかせ~軽く殴ったら最低でも2~3年は刑務所。
~これを良いことに、愚連隊風のガキや不良外人・ド素人の小銭稼ぎが急増する。
さらにタチの悪いプロの盗人集団が、“組”からあふれ、金に困ったヤクザと組んで組織的に
強引な盗人働きをやる。
“組”として動けなくなった者が、建設業を強引にやりだし~どっかの市長を銃撃した事件は
単に“銃撃”だけが、ニュースとして流れたが「暴対法」と合わせ、報道したメディアは、まったく無い。
ますます地下に潜り~無登録の“組員”が増え、仁義も糞もない、何でもありの裏社会ができるだろう。
・・・・・・・「ヤクザと言う犯罪組織が、公に組の看板を掲げているのは、日本だけだ。~けしからん」
と、言うのがエライ人の考え方らしい。が、「看板」と「代紋」があるから
ヤクザがギャングに成れなかった。~成らさなかった。型があった。
「看板」は「任侠」を継続さす為に、仕組まれた最高の演出である。~日本人の生活の知恵だ。
正しい事しか知らない、偉いお役人は、目先の理想論だけを先行させ「悪を全て排除する」
との崇高な論理を旗印に、清く・正しく・美しい・“不可能”な大儀を前面に押し出した。
数千年の歴史がある仏教には、仏様の顔の裏側に~悪魔の顔があった。との考え方があり、
いまここで、等々と言う事もないが、日本が戦争に負けたドサクサの終戦当時。
日本の治安を守ったのは、ヤクザだ。
裏の掟は、裏に任せるのも大事な事だ。
警察に犯罪組織に関する、裏の裏まで取り締まる実力はない。
事件があり、死体が公になるまで、何も知らない。知る力はないのだ。
なら、毒は毒で制するべきだ。それがいやなら、実力をつけろ。裏の世界から情報を取ってこい。
できるか?・・そんな努力をしなくても、~出世に影響はない。
今、裏の世界と関係を持てば即、首になる。
そんなバカな事をするより、警察の昇任試験を頑張ったら出世する。
~だから、知らん顔して、言われた事だけ~素早くやっておればいいのだ。
“組”が有れば~まだ情報が取れるが、地下に潜った仁義も糞もない極悪人から、情報を取る様な
実力は、まったく無い。
「上」がカラスは白いと言うなら、カラスは白いものだ。黒なら黒。
「暴対法」が素晴らしい法律なら、神より素晴らしい。
その内、殺された日本人の数をかぞえ、統計を取ったデーターが「上」に回ったら、
机の上で高級警察官僚が、それなりにながめ、利己そうなツラで・・土佐の方言でいう
・・・「リコゲに」何か喋るだろう。
下々の者は、犠牲者を出しながら、それまで待つんだ。
・・・民間企業のように、先回りするだけの能力は警察にはない。
全て「上」から与えられた命令に“愚直”を意気に従うだけである。
暴対法は、法を創りだした警察官僚の“足元を維持”するために、ますます強化され、
現場の警察官を苦しめ
同時に地域住民の裏側を完璧に破壊するだろう。
~裏社会の基盤を壊した代償のツケは、全て現場が支払う
エライ警察官僚は、自分の立場と足元のみを守っておれば御安泰で
“お国”全体の流れを思考するだけの知恵はない。
所詮~“お受験”で勝ち取ったポストだ。それ以上のセンスは、まったくない。考える必要性も無いだろう。
昔々~命のやりとりの真っ直中で生まれ育った日本人の英知~
・・・~情報収集能力→(「四万十の忍者」)を今一度・考えるべきだ。
「牛のクソにも段々がある」これが警察で生きるための虎の巻だ。
牛のクソは、下から上に大きさが異なり、それぞれが段々を形成している。
「この下等な、牛のクソにさえ段々がある。まして偉大なる我が警察組織は、
当然上から下に~組織だった命令系統があって当然である」との意気込みである。
どこの組織であろうが、統率された命令系統が有るのはあたりまえだ。
が、「牛のクソ」にたとえて、ことさら命令系統を強調するのは警察ぐらいだろう。
しかし、真実の牛のクソは別の意味がある。
1つの仕事が入ると、書類作成して自分の印鑑を押し次に回す。
回した段階で、牛のクソの1つの段をクリアしたわけだから、次の段の責任になる。
次の段で印鑑を押印し、自分の責任を回避した者が、次の段に回す、また次の牛のクソの段
にいる者が印鑑を押し、次に回す。回した者、回された者、それぞれが第三者に責任転換
可能な範囲内で堂々巡りしているにすぎない。
その中で「上」に都合がいい箇所があれば、「上」が喰う。
「上」が喰えるエサを多く持って行った者が優秀警察官であり、エサに道徳的観念はない。
民間企業では、素晴らしい早さで改革され、現場の動きが直接製品化される商法・戦略
が実戦されて多大な成果を残しているが、親方日の丸の独占企業には「生き残り」の危機感
がなく必要性もないから、今だ「牛のクソ」が主体である。
過去、全国で報道された警察官の不祥事なる問題点は、全て「牛のクソ」が絡んだ結果であり、
不祥事を起こした本人に、罪悪感は無いと断言できる。
「みんな、やっている」「なんで、オレだけ処分された」これが正直な回答だろう。
処分とは、「上」に対し都合の悪い人物を消す事であり、表に出てない不祥事は、
何の問題にもならず「矛盾」と書いて「常識」と読み、コネと書いて「力」と読むのが、
一眼国の読み方である。
そして、これに異議を申し立てたら、即、消されるのが常であり
「愚直」とは、まさに警察官の神髄である。「暴対法」も「愚直」に進行するでしょう。
車の後部座席で、盗人様と世間話をしながら、頭の中では、全く違う事を1つ1つ思い起こしていた。
女房と結婚して以来、旅行なんかした事がない。
初めて見る風景を、窓に付いた雨粒が高速道路を走る車の速度で、水平に走り、後ろに飛び散る
様子と合わせ見ながら、この程度の護送の仕事しかできなくなった我が身の情けなさが、
次々に飛んで行く雨粒に哀れみを感じ取った。
ま、「上」は、それが狙いで万年巡査を作ったのだろうが、そうはいかん。
「上」が万年巡査を作るなら、私は1人の軍隊として、時が来るのを待つだけだ。
万年巡査は、「戦争をしてもいい」と、聖戦のお墨付きを警察組織からもらったのと同じだから、
私が最も大事にしてきた「銀行員失踪事件・蒸し込み工作」の証であり、
また一眼国が創造した最高傑作でもある。
護送してきた盗人様の宿は、徳島市内から少し離れた警察署の留置場だった。
監獄の中に送り届け、さっそくビジネスホテルで宿泊の手続きをとり、夜の街に繰り出したが、
酒場に関しては、高知に比べ閑散としていた。結局、一緒に護送してきた3名と焼鳥屋に入り、
久し振りに生ビールをジョッキで飲んだ。
警察仲間と飲みに出たのは1年以上なく、何もかも懐かしかったが、さほど酔う気持ちにもなれず、
帰りは、皆と別れて1人でホテルまで帰ることにした。
阿波徳島藩の街並みを見ながら川沿いに歩いていると、ビルの谷間に笛と太鼓の音色が聞こえた。
まさかこの時期にと思ったが、間違いなく阿波踊りのリズム。音につられて大きなデパート
の裏側にある公園まで行くと、踊りの練習をしている20人位の集団がいた。
テレビでは何回となく見たが、実際に見るのは初めてだった。手は、小刻みに円運動を
繰り返し、右手と右足、左手と左足が同時に動いている。
重心は常に後ろ足にかけ、横の動きがリズミカルにできる工夫が感じられる。
まるで空手の“猫足の型”と同じだ。昔の柔術のようでもある。
手の円運動は、防御と攻撃が一体化した動きであり、足は常に横の動きができる構えで、
直線的に相手の懐に飛び込む事もできる。
千変万化、攻撃と防御、どちらでも使える。いい動きだ。私は、徳島県や阿波踊りについて
何の知識もないが、以前から日本古来の踊りで、どうして阿波踊りだけがジャズのような、
無作為的な動きをするか不思議でならなかった。
踊りとして見るより、昔の格闘家が酒を飲み、
いい加減に踊ったと考えれば、何か理解できるような気がするのだが?・・・・
私のかってな思いが、まったく間違っていたとしても、テレビで見るのと実際見るのでは
大違いである事だけは確かで、しばらく公園のベンチに座り、時間の経つのを忘れ見入っていた。
たとえ練習でも、祭りの中でぼんやり時を過ごすのは何年ぶりだろう、少なくても13年。
あの事件以来、リズミカルな動きの中で、ゆとりを感じたのは久し振りだったが、
踊りを見ても戦いを連想しながらぼんやり座る自分自身を、
他人を見る思いで観察する自分が安らぎを感じている。
まるで我が子が遊んでいる様を
微笑みながら見ているようで、子供と親を同時に演じている。
酒のせいか?これほど自分自身に素直になれたのも久し振りだ。
病気には無縁の私が、心臓に不整脈ができ、治療したのが2箇月前だった。
なるほど、やっと原因がわかった。私と自分の両方が、別々の役を演じているようだが、
この13年間、そうせざるを得なかった。
そうでなければ私は、酒かパチンコか、泥沼を彷徨していただろう、それこそ一眼国の思惑通りだ。
だから逆に動いてやったのよ、高齢者が実戦空手に入門し、水泳で身体を鍛えた。
今は、事件の記録を作っている。
いつか必ず決着をつけてやる。
そう思い直すと、現世から離脱し、刹那的な快楽を求める激しい動きに
着物を着せたのが阿波踊りか?とも思った。この考え方が正しいのかもしれない。
私の阿波踊りは「事件の記録」だ。これがなかったら、生きる目的が崩壊する。
警察には、一流大学を卒業し上級国家試験に合格した、キャリヤ組と言われるエリート集団がいる。
彼らは、信じられない早さで出世街道をばく進し、
30歳台で各都道府県の署長クラスをアゴで使う輩がいる。
官僚制と言う日本の悪しき伝統~日本病の根源。
民間企業とは違い現場の仕事なんか、何の経験もないヤツがアッと言う間に地方の頂点に立ち、
次は東京に帰って出世の仕上げをする寸法だ。
今の高知県本部長には、この資格がない「努力虫」である。
キャリヤの資格が無い、普通の警察官が、おそらく自分自身を伏せ込み、精一杯組織的な
努力を積み上げ、あと3年で定年退職になるお人が、最後の最後に高知県警察本部長に大抜擢された。
定年まで残り1年と少し。
御本人が本部長になれたのは、高知県が初めてであり、最後だ。
日本のお役人は、こういうヤツにドロをかぶせるものだ。
エリートは出世のために~組織入りするものである。
汚いドロ・他人の尻ぬぐい・不祥事・等々、エリートが出世する為にマイナス要因となる
事柄は、ことごとく避けて通る。
「通さす」のが各県のお役人の最重要課題であり、責務だ。
なら、「銀行員失踪事件」等という不名誉な警察犯罪を処理するのは、
今回の、この本部長以外にはありえない。
が、犯人 田岡 大は別件で取調中、自殺した。もともと闇に葬るつもりなら、「別件捜査」
はせず、そのままにしておけばいい。
それを「別件」を持ち出したのは、
完全に葬る事が出来ないから、
いやいや「別件」を 持ち出した。と、考えざるをえない。
一番大事な警察犯罪を蒸し込み、仮面を被せる為の「別件」である。
この「別件」に、最も効果的な「殺し」を遂行いて幕となった。なら、この本部長も、
お払い箱になるだろう。芝居の代償は予算を必要としない、本部長という肩書きだけで充分である。
出世の二文字が欲しい輩に、組織の未来が見えるはずがない。
はじめて来た阿波の国で、踊りのリズムに浸りながら、自分のこれからを思い浮かべた。
出世するバカ、しないバカ、どうせアホなら踊らなソン。と、うまい事を言ったものだ。
わたしの踊りは、悪魔と一緒に踊る阿波踊りだ。踊るんだ、どうせなら踊りまくってやる。
踊って、踊って、踊り疲れて、道ばたで死んでも、どうせなら踊った跡、足跡ぐらいは残してやる。
そう思うと気が楽になった。~たぶん、これが阿波踊りだ。
阿波の国から帰った翌月。7月14日から5日間、大阪へ出張。
同じく盗人の護送勤務を終え帰った。翌日には、地元の夏祭りが盛大に行われ、
祭りに担ぎ出される御輿「下田の太鼓台」の交通整理・雑踏警備を1人でやった。
毎月24日は失踪した銀行員の月命日だ。今年で13年。私の単身赴任も13年。
13という数字は変わらない。高知県の全ての公務員の中で、連続13年の単身赴任を
した者がどこにいるか?聞いた事もない。
52歳で、今だ巡査長をしている警察官がどこにいるのか?おれば教えて欲しい。
すべてはコネしだいだ。巡査長の13年。よくぞここまで苦汁をなめさせてくれたものだ。
聖戦の戦意は煮つまった。菊の御紋がついた錦の旗印は私のものである。賊は一眼国。
1人の軍隊が、挙兵するのにこれ以上の大義はない。
その24日、またしても吉本新喜劇が新聞紙上をにぎわせていた。
「高知県警の捜査費虚偽請求」「上司の指示で捜査員協力」「印鑑 幹部が保管、押印」
新聞紙上には大見出しが続いている。
高知県捜査一課長が、昨年4月から10月までの7ヵ月間に、架空の捜査協力者・27人
をデッチアゲ、ウソの協力者に支払ったように装い捜査費を見積もって、
警察庁に約196万円の捜査費用を虚偽申請していたと、高知地検に告発された記事だ。
しかも、告発された捜査一課長は、「銀行員失踪事件」の犯人を別件の
「女性に対する暴力」で任意に取調中。犯人を首つり自殺に追い込んだ、捜査一課の責任者である。
アノ夜も中村警察署に来ていた。私が同僚に「アイツは、自殺する」と予言した夜だ。
予言は、みごと的中し4~5時間後に自殺している。その指揮官である捜査一課長が、
24日、銀行員の命日に「捜査費虚偽請求」で告発されたとは、
何か得体の知れない因縁めいたものを感じる。
しかし、県警本部の警務部長は
「報道されたことは事実ではなく、捜査費をはじめとする予算は、適正に処理されている」と説明した。
新聞には、そう書いている。
吉本新喜劇の台本だ。が、なぜか報道しているのは高知新聞だけだった。
捜査費虚偽請求などというモノは、長い伝統につちかわれた警察のお家芸である。
ほかにも交通安全協会費・防犯対策費などなど、
およそ「費」と付く「銭」に関しては、すべて「虚偽申請」である。
親方日の丸だからできる技で、盗人に金庫番をやらせているのと同じだ。「裏金作り」の
「職人」は「会計課」の警察職員で、組織の中では優遇されているが、
公務員はコネで動く人事異動が多く、企業のように頭の切れる「切れ者」は少ない。
「危機感」もなく徹底的な調査をすればすぐバレる。それを外に出さなかったのが、
一眼国という閉鎖社会である。
「閉鎖」だから組織が維持できるわけで、「閉鎖」を「神」として信ずる者は救われる、
ホントのことを言えば飛ばされる。「コネ」と書いて「力」と読み。
「矛盾」と書いて「常識」と読む北朝鮮日本支部・一眼国の常識は、世間には通用しない。
まるでガマの油売りだが「さてお立ち会い」。こんな虚偽請求を真面目くさって考え、
思い悩む警察官は日本中さがしても1人もいない。
「当たり前」の話だから日本にはいないのだ。
むかしあったコマーシャルに「あたりマエダのクラッカー」というのがあった。
その程度の話で、常識以前の単なる小話にすぎず、内部では「腕が立つから、銭が取れる」
「コネがないから、アノ幹部は銭が取れん。あんなヤツ幹部にはふさわしくない」などとささやかれた。
要は、「取って、あたりまえ」なのだ。
現在、警察官の給料は銀行に振り込まれているが、一昔前までは現金でいただいていた。
だから各個人の印鑑は、会計用として会計課が管理保管していたのだ。
転勤になれば本人が動いた後、印鑑が後から送られてくる。印鑑は常に会計課にあり、
転勤になった警察署にも印鑑が必要なわけだから、警察官は常に2~3個の印鑑が必要だ。
この印鑑で何をする?「お前、このまえ北海道に行っていたか?」。
昔の警察署でのチョッとしたジョークだ。
はやい話が「カラ出張」の虚偽請求が本人の知らない内に会計課がデッチアゲ「請求」した
と言うジョークである。
昔は何の危機感もなく「カラ出張」でさえ公のジョークですんだ良き時代で「オレは、沖縄だ」と、
やり返えされた。酒のさかなである。
寝る時間もなく盗人を追い回し、やっと捕まえた。
1ヵ月の超過勤務時間が100時間を越そうが200時間を超えろうが、
10時間程度の超過勤務手当てしかない事はざらにある。誰かが、署員の銭を取っている。
「あたりマエダのクラッカー」。
昔、高知警察署などの大きな警察署で定年退職した署長は、
退職金以外に2000万円位の手当てがつく、
~などというのは、あたりまえの話。
だから「裏金作りの職人」会計課職員は優遇され、
程度の低いヤツは、下級警察官に対して横柄な態度で接するバカもいる。
警察幹部に渡す裏金を創造する、錬金術が特権意識を持たせるのである。
逆に会計課職員本人が銭をごまかした「横領」事件があっても、もし本人を逮捕したら
裁判の結果、他の「裏金工作」が暴露される恐れがあるから絶対に捕まらない。
酒を飲むなら署長と飲んだらタダ酒が飲める、美味しいポストである。
・・・~こんな事~警察官なら常識です。
(冬の四万十川)
(橋は沈下橋)