コロラド州より、小さな町の小さな物語

コロラドの魅力は小さな町にありました。人気の田舎町への小さな旅と、日々の暮らしのレポートです。

シリコンバレーからの脱出 ④決戦の日

2010-02-20 03:44:49 | 日記
シリコンバレーからの脱出 ④決戦のとき


2001年1月31日(水) 運命の日が来た。 今日は、このコンドを買いたいと思っている人が、Offer(申し出書類)を提出するのだ。
オファーがなければ、家は売れない。 オファーが1件だけなら、提示された金額で売るか、オファーを退け、いい買い手が現れるのを辛抱強く、待つ。 しかし、私たちには待つ時間がない。
もし、数件のオファーがあれば、競合しあうので売り手には有利である。
Royceのオフィスに電話をいれると、5件くらいのオファーがあるだろう、とのことである。




”値下げしました” のサイン。 10年前のシリコンバレーでは絶対に見られなかった。 いまでは値下げは常識(?) どこでもよく見かけるサインだ。 


当時のシリコンバレーの住宅市場は、すでに過熱気味だったが、2000年からの住宅価格の高騰ぶりはすさまじいかった。 家は売りに出すと、1-2週間で売れていく。 それも学校区がよければ、築40-50年の物件に信じられないような値段がついた。

売るほうにすれば、有難い現象だが、買う方は大変である。 週末に物件を見て、気に入れば翌週には決心しなければいけない。 購買能力を示す書類(銀行からのローン承諾書類)や、予約金の小切手も用意する。 それでも何人かと競合になる可能性があるので、どんな手を使うか、どのくらいまで金額を上乗せするか、リアルターと相談しておかなくてはいけない。
 
私と同じコンドに住んでいた人は、どうしても欲しい物件をみつけ、オファーの書類に家族の写真と手紙を添えて提出した。 “私たちには、4歳の子供がいて、この子のためにいい学校区が欲しい。 しかし、いい学校区の家はどれも高くて手がでない。 あなたの家が最後の望みだ、どうぞ私たちに希望の光を…” 
手紙つきのオファーなんて! と思ったが、これで決まりだった。 彼らは他の人よりも低い金額のオファーで、家を手に入れたのだ。





オファーを受け入れるとUnder Contract(契約中)のサインをつける。 契約中は物件のチラシをかたずけ、他の人に物件を見せることもしない。



私たちがコンドを売りに出した当時、シリコンバレーの高成長はそろそろ頭打ちで、ドットコム企業が倒れ、高騰した住宅価格は急降下するだろう、と言われていた。 しかし、住宅の値段は釣りあがるばかりで、いつはじけるのか誰もわからなかった。 新聞には毎月のように、「昨年の同月と比べ、今年の住宅価格は20パーセント上昇した」などという記事が載っていた。

買う方は、早くしないと手が届かなくなってしまう、という焦りもあるのだろう。 シリコンバレーでアパートを借りている人たちは、2ベッドルームに毎月二千ドル以上の家賃を払っている。 いくら高給を取っていても、毎月二千ドルが消えていくのは、つらい。 買ってしまえば、いずれは自分のものになるし、住宅ローンは税金の控除の対象になる。

午前10時、主人と一緒にPalo AltoにあるRoyceのオフィスを訪れる。 こんな日は、アメリカ人でも少しはマシな服装をしていくのだろうが、私の外出着は引越しダンボールの中だ。 近くの量販店に走り、新しいシャツを買い、自分のコンドでコソコソ着替えて、出かけた。




自分で家を売る人は”Sale by Owner"のサインをだす。 リアルターに支払う手数料が節約できるので、最近はSale by Ownerのサインは増えたが、10年前のシリコンバレーでは見かけなかった。


Royceと会い、まず、打ち合わせをした。
3件のオファーが、すでにオフィスに届けられている。 あと2件は買い手側のリアルターが、直接、私たちに手渡して説明するらしい。
不必要なおしゃべりはしない。 売買についての質問に関しては、即答しない。 手短にしようと言われた。 要は、余計な事をしゃべるな、ということか。

一人目のリアルターが現れた。 長い黒髪の、小柄な女性だ。
彼女のクライアントは、もうすぐ離婚予定の男性で、高校生の息子がいるという。 私たちのコンドは通勤に便利なところにあり、2部屋それぞれにバス、トイレがついているので、息子さんが滞在しても、お互い独立して暮らせるので、理想的らしい。 
そうして、「あなたたちのコンドは素晴らしい。 こういう物件をずっと探していた。」と熱弁し、私たちを気持ちよくさせてくれた。
Contingencyは3日。 もちろん、ローンはおりますという銀行からの証明書つき。 予約金の小切手。 申し出価格は、私たちが希望していた価格をはるかに上回っていた。

うわっ、と心の中で驚いた。 が、ポーカーフェイスを守った。 ここは駆け引きだ。 私たちは、勝たねばならない。
リアルターが部屋から去ったあと、Royceは“こんなもんだよ” という顔をチラリと見せたが、彼も表情を変えない。

「さあ、次のにいこう」といって、二人目のリアルターを呼んだ。


<つづく>




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1 コメント

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Unknown (jun)
2010-02-21 09:55:28
アメリカの住宅事情が real に分かって、

続きが楽しみ(*^-^*)
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