こんどは売れそう。
二人目のリアルターは、ちょっと大柄の白人女性だった。
彼女は私を見て、ニッコリ微笑んだ。
彼女のクライアントは、日本人のカップルだそうだ。
そして、私の目をじっと見つめ、「ワイフもハズバンドも、あなたのコンドをみてFall in love、恋におちたのよ」という。 この言葉は私の心をくすぐった。 うれしいではないか、こんなに気に入ってもらえて。 私だって、このコンドを売るために、いっぱい努力したのだ。
このリアルターはFall in loveを何度も繰り返し、私を恍惚状態にさせた。 そして最後に、「このカップルにも小さな子供がいて、あなたのコンドミニアムのバックヤードで遊ばせたいんだって。 とっても、とっても可愛い子なのよーー」と言った。
そう、このリアルターは私たちにも小さな子供がいるのを、知っているのだ。 オープンハウスをしたとき、ぞうさんのシーソーをバックヤードに置いたままだった。
小さいバックヤードではあるが、水遊びをさせたり、私にも子育ての思い出がある。 リアルターは私の母性に訴えかけてきたのだ。
彼女が部屋から出た後、Royceは「あのリアルターのFall in loveのパートは忘れた方がいい。」と、アッサリ言った。 しかし、彼女が持ってきたオファーも、私たちの予想を上回る金額だった。
このあと3件きているオファーを開け、そうこうしているうちにFaxで6件目の駈け込みオファーが届いた。
高い金額を提示しているのは、やはりリアルターが直接持ってきている最初の2件である。 Royceは「じゃあ、二人で話し合ってね。」といって、さっさと部屋を出ていってしまった。
私は、日本人カップルに売りたかった。 Fall in loveは忘れろといわれたが、こんなに気に入ってくれているのだし、子供をかかえての家探しはストレスも多い。 さっさと決めて、引っ越して、終わりにしてしまったほうが、気持ちがすっきりする。
主人は、離婚男性のほうが、提示金額が多いのだから、当然こっちだという。
私は、この男性はまだ離婚していないのよ、と反撃した。
「もし、明日にでも“やっぱり、離婚はやーめた”といったらどうするのよ。 離婚するとカリフォルニアは慰謝料が高いし、だいたいアメリカ人なんて、いつ気が変わるがわからないでしょ。」
Royceが部屋へ戻ってきた。 私たちはそれぞれの考えを伝え、彼の意見を聞いた。
彼は、日本人カップルのContingencyが1週間というのが、気にかかるという。 シリコンバレーでは、通常2-3日だそうだ。
Contingencyは、英和辞典で引くと、“偶発事件”と書いてある。 これだとよく分からないが、不動産売買では条件期間とでもいうのだろうか。 この期間ならどんな理由でもキャンセルできる。 次の日、もっとよい物件があったとか、単に気が変わった、でもいい。 「やっぱり、やーめた。」と、ペナルティなしで、白紙に戻せる期間のことをいう。
売る側にすれば、これが一番怖い。 すごろくゲームのように“振り出しに戻れ”といわれれば、すべての予定が狂ってしまう。
Royceは「ちょっと、待っていてね」と言って、ふたたび部屋を出ていった。
<つづく>
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二人目のリアルターは、ちょっと大柄の白人女性だった。
彼女は私を見て、ニッコリ微笑んだ。
彼女のクライアントは、日本人のカップルだそうだ。
そして、私の目をじっと見つめ、「ワイフもハズバンドも、あなたのコンドをみてFall in love、恋におちたのよ」という。 この言葉は私の心をくすぐった。 うれしいではないか、こんなに気に入ってもらえて。 私だって、このコンドを売るために、いっぱい努力したのだ。
このリアルターはFall in loveを何度も繰り返し、私を恍惚状態にさせた。 そして最後に、「このカップルにも小さな子供がいて、あなたのコンドミニアムのバックヤードで遊ばせたいんだって。 とっても、とっても可愛い子なのよーー」と言った。
そう、このリアルターは私たちにも小さな子供がいるのを、知っているのだ。 オープンハウスをしたとき、ぞうさんのシーソーをバックヤードに置いたままだった。
小さいバックヤードではあるが、水遊びをさせたり、私にも子育ての思い出がある。 リアルターは私の母性に訴えかけてきたのだ。
彼女が部屋から出た後、Royceは「あのリアルターのFall in loveのパートは忘れた方がいい。」と、アッサリ言った。 しかし、彼女が持ってきたオファーも、私たちの予想を上回る金額だった。
このあと3件きているオファーを開け、そうこうしているうちにFaxで6件目の駈け込みオファーが届いた。
高い金額を提示しているのは、やはりリアルターが直接持ってきている最初の2件である。 Royceは「じゃあ、二人で話し合ってね。」といって、さっさと部屋を出ていってしまった。
私は、日本人カップルに売りたかった。 Fall in loveは忘れろといわれたが、こんなに気に入ってくれているのだし、子供をかかえての家探しはストレスも多い。 さっさと決めて、引っ越して、終わりにしてしまったほうが、気持ちがすっきりする。
主人は、離婚男性のほうが、提示金額が多いのだから、当然こっちだという。
私は、この男性はまだ離婚していないのよ、と反撃した。
「もし、明日にでも“やっぱり、離婚はやーめた”といったらどうするのよ。 離婚するとカリフォルニアは慰謝料が高いし、だいたいアメリカ人なんて、いつ気が変わるがわからないでしょ。」
Royceが部屋へ戻ってきた。 私たちはそれぞれの考えを伝え、彼の意見を聞いた。
彼は、日本人カップルのContingencyが1週間というのが、気にかかるという。 シリコンバレーでは、通常2-3日だそうだ。
Contingencyは、英和辞典で引くと、“偶発事件”と書いてある。 これだとよく分からないが、不動産売買では条件期間とでもいうのだろうか。 この期間ならどんな理由でもキャンセルできる。 次の日、もっとよい物件があったとか、単に気が変わった、でもいい。 「やっぱり、やーめた。」と、ペナルティなしで、白紙に戻せる期間のことをいう。
売る側にすれば、これが一番怖い。 すごろくゲームのように“振り出しに戻れ”といわれれば、すべての予定が狂ってしまう。
Royceは「ちょっと、待っていてね」と言って、ふたたび部屋を出ていった。
<つづく>
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