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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

南條竹則「魔法探偵」

2005-05-25 00:13:19 | Books
詩人の「吾輩」が生活のために始めた猫探しの探偵業。不思議な巡り合わせで幽霊の秘書や引きこもりの居候を抱え、奇妙なお客を相手にするようになり。。。。翻訳家にしてファンタジーノベル大賞受賞作家の長編小説。人間の幽霊だけでなく、土地の記憶を呼び起こすことで、失われた建物や場所の幽霊を幻出させるという趣向がいい。舞台が三ノ輪というのも奇妙奇天烈な登場人物達に妙なリアリティを与えるという意味でいい選択だ。最終章で幻出させるのが大阪万博なのだが、近年のノスタルジアはなぜこうも大阪万博に向かうのか。作者は1958年生で、同じく大阪万博を重要なモチーフとして描いている漫画「20世紀少年」の浦沢直樹とほぼ同世代だ(1960年生)。60年代高度経済成長期の到達点の象徴であったとか、輝く未来が夢として描かれた最後の場であったとか、いろいろと振り返り的な位置づけはなされているが、50年代後半生まれの世代の個人史に落とした影響ってどうなのでしょう。