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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

佐藤卓己「八月十五日の神話ー終戦記念日のメディア学」

2005-09-02 21:25:35 | Books
今日9月2日は、60年前日本が降伏文書に調印した日だ。近代の戦争における世界標準的な概念に基づけばこの9月2日(もしくはポツダム宣言を受諾した8月14日)を終戦日ととらえるのが普通なのに、なぜ天皇によるラジオ放送が行われた8月15日が終戦記念日とされるのか。
本書ではこのずれを冷静なまでに客観的な立場から、新聞や教科書、ラジオ、テレビといったメディアを中心に緻密に調査分析し、保守派、進歩派の利害関係の一致、マスコミ・メディアの都合、周辺諸国の思惑といったものが絡み合って成立していることを明らかにしている。

いわゆる「玉音写真」が新聞社のヤラセであったとか、終戦記念日が月遅れ盆に重なっているのは偶然なのか、とか、高校野球での8月15日の黙祷は戦前より継続したものだった、とか、朝日新聞をはじめとするメディアの節操のなさとか、8月15日を断続と捉えることの虚構性とか、中学と高校の、あるいは日本史と世界史の教科書での終戦に対する記述の差、とか、興味深く、目からウロコ的な事実が次々に明るみにされている。非常にスリリングな分析は新書レベルを超えている。

思い切り客観的に書かれているだけに共感や反感といった感情移入ですいすいと読み進められる本ではないがこれはどのような立場をとる人でも非常に面白く読めると思う。

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