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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

小林信彦「私説東京繁昌記」

2005-10-23 18:50:10 | Books
東京に生まれ育った筆者の個人史に沿う形で、東京の山の手と下町を探訪し、その変遷を描いた作品。同行した荒木経惟の写真も多数収録。西麻布に生まれ育った友人の薦めで読んでみた。
東京の風景は関東大震災、東京大空襲、東京オリンピック前後、そしてバブル期の4回大きく変貌しているが、(個人的にはこれに90年代末から現在にかけての大規模再開発期が加わると思う)本著の初版は1984年、バブル前の刊行であり、主に東京オリンピック~高度経済成長期に起こった「町殺し」がテーマとなっている。下町ではなく青山などの山手地区に主眼が置かれているのが独特だ。作詞家松本隆の「はっぴいえんど」」時代のテーマや、バブル期に実家周囲の風景が大きく変ったという私自身の個人史とも重なるものがあり興味深く読めた。ここに描写され撮影されている1984年の光景ですら、すでに大部分が失われていること、その光景のなかに自分も居たことがあるという事実に感慨も覚えた。例えば谷中銀座の石段で遊ぶ子供のノスタルジックな写真が載っているが、考えてみればこの子供は自分とほぼ同年齢であり、また自分自身1984年にその場所を何度も行き来しているのだ。あるいは新宿駅南口にあった古い階段や、まだ驚くほど空が広い渋谷駅ハチ公口も同様だ。
文庫版では1992年と2001年、バブルを経た1992年の追加章と、2001年のあとがき・写真があり、時間の変遷が興味深い。

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2 コメント

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Unknown (坂上)
2005-11-04 04:30:32
ほんだ君と映画を撮っていた頃、よく本郷菊坂や根津神社の辺りを巡りましたよね。当時僕はどこへ行くにも自転車で行こうとしていて、東京中を自転車で走っているうちに、この本で書かれているような町の変遷に興味が湧きました。また読み返したくなっちゃった。



この本に触発されるような人だったら、荒木経惟の「冬へ」(マガジンハウス)という写真集もおすすめです。東京の路地裏の何気ない風景げ、東京への思い入れを持って切り取っています。



「東京の水」の連載、楽しみにしています。これからもコツコツ続けていってくださいね。
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Unknown (yuduami(HONDA))
2005-11-05 22:31:22
コメントありがとう。映画のロケで歩いた麻布・六本木界隈の下町的な風景もずいぶんなくなってしまいましたね。
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