AOXOMOXOA

極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

高橋哲哉「靖国問題

2005-07-18 20:56:26 | Books
閣僚の公式参拝やA級戦犯の合祀問題、国立追悼施設の問題、近隣諸国との関係など、様々な問題それぞれに賛否両論が渦巻いていて、ややこしく複雑な靖国神社絡みの問題を、感情的な側面、宗教的な側面、政治的な側面、文化的な側面から丁寧に思考を展開していっている。
筆者の立場はやや理想論に過ぎる部分もあるし、立脚点となっている反戦平和的な思想についての掘り下げが本著では無いため、後半の議論において素朴な平和論に見えてしまう側面がなきにしもあらずであったけれど、情報の整理とそれらに対する論理的に掘り下げた思索は、筆者の立場への賛否を問わず議論の基礎となり得るものであると思う。特に遺族感情に対する思索は哲学者ならではの丁寧な分析だし、文化的側面に対する「日本固有の伝統」の虚構性の指摘についても然りだ。「右翼」だ「左翼」だといった思考停止のレッテル貼りによる感情的な賛成論・反対論では何も生まれない。
本書での筆者の主張を丸呑みにする必要はそれこそ全くないが、靖国問題を論理的に考えるためのてがかりとして一読の価値はあると思う。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿