詩歌探究社 蓮 (SHIIKATANKYUSYA HASU)

詩歌探究社「蓮」は短歌を中心とした文学を探究してゆきます。

車椅子に父は小さく

2019-02-23 19:32:19 | 詩歌探究社「蓮」情報


車椅子に父は小さく背を見せて病室の大き窓を見ており


午前中は工場で幾つかの仕事をして
昼は何を食べようかと思っていると電話。
「社長はいますか?」としゃがれた聞き慣れぬ声。
ましてや名乗らないから、電話営業かと
訝しみつつ話をしていると、つまりは私の
父のことを言っていると認識した。

われ「いやぁ、入院しちゃったんですよ」
電話主「どうして?」っていうもんだから
かくかくしかじかで、と説明する。
電話主「社長に昔、仲人してもらってね」
「息子さんかい?」と言う。
「奥さんはどうした?」
「母は7~8年前かな、亡くなったんですよ」
と、会話しつつ、入院先を教えて電話を切った。

いかにも元職人らしく喋るのが苦手な風な方でした。
私も最後まで「どちらさんで?」と訊けなかった臆病者です。

妹にこんなことがあったとメールすると
「一緒に見舞いに行くか?」と言う。
「これから昼飯だよ」とやんわり拒絶したんですが
それからでいいと妹からメール。
仕方ないのでコンビニで昼を済ませて
妹を乗せて見舞いに行く。

その光景がこのうたです。
妹からのプレッシャーというのは相当なもので
慌てたせいか上着も羽織らず、財布も持たず。
帰りにスーパーに寄って妹に晩飯の食材を
買ってもらいました。カキフライと天ぷら。
さきほどそうめんを茹でて晩飯を済ませました。

親父が仲人をしたということは電話主は
きっと元職人なんでしょうね。
「親父ももう、79歳になったよ」と言ったら
その電話主はびっくりしていました。

おそらく昭和のころに働いていた方でしょうが
30年以上過ぎて土曜日の昼に電話してくるなんて
なんだかとても懐かしくなったのでしょうね。
そういう繋がりを想うとなんか
泣けてきますね。



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