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先祖を探して

Vol.350 世之主由緒書を紐解いてみよう(4)

今回見ていくところには、徳之島に逃げた子供たちについて書かれています。

原文
一、右騷動の砌、男子三歲若主一人、女子五歲之者一人、乳母真升兼(マス
  ガネ)と申すもの右両子列上、西原村あがれ百所え逃越候折柄、西原村の
  下え德之島船着船いたし居り候を頼入、徳之島え罷渡り、己後中山領島相
  成島中無異相治り候に付、島役共より王子迎として渡海いたし候二付き、
  御帰島被成候得共、幼少両子にて本城の住居難被成。古城より北二相当
  り、小高き処へ御館を構へ御直り被成候に付き、今に直城(ナオシグス
  ク)と申唱申し候。



現代文
一、そのような騒動の最中、世乃主かなしの三歳になる若主(男児)一人、五
  歳になる女児一人が、自害の惨劇を逃れて生き残りました。乳母の真升兼
  (マスガネ)と申す者がこの二人を連れて西原村あがれ百所まで逃げ落
  ち、そこで徳之島に向かう船を見つけ、なんとか頼み込んで乗せてもらい
  徳之島へと逃れていきました。その後しばらくして沖永良部島は中山王の
  領地となり、島にも平穏が戻りました。島役人たちは、徳之島に逃れた若
  主たちをお迎えするため海を渡り、無事に連れ帰ってきました。しかし、
  いくら北山王の末裔とはいえ幼少の男児と女児だけで元の城へ住まうこと
  もまた難しく、世乃主の屋敷だった古城よりも北に位置する小高い場所へ
  と新たに館を建て、若主たちの住まいとしました。これが、今に伝わる直
  城(ナオシグスク)であります。



世之主と奥方、長男が自害した時に、乳母の真升兼(マスガネ)が長女と二男を連れて徳之島に船で逃げたといいます。
そして騒動が収まった後に、島役人が二人を連れ戻すために徳之島に迎えに行ったということです。

まずこのような騒動があり、徳之島に渡ったということでしたので、徳之島に何か子供達の情報が伝承として残っていないのかを確認しました。
観光局や教育委員会の学芸員さんに確認してみましたが、約600年前に子供達が乳母と一緒にやってきて滞在していたという伝承は残念ながら1つも確認することができませんでした。
どの位の期間徳之島に滞在していたのかは分かりませんが、騒動が収まった後に島役人がとあるので、第一尚氏の統治下になり、島役人がきちんと定まって以降ということになりますので、数か月、もしくは数年後だったのかもしれません。館を新しく城の後方北側の丘に構えたということですから、建築期間も必要だったでしょう。
そして安全が確認できるまでは、生き残った子供たちがいることはきっとトップシークレットであったはずです。それが伝承として残らなかった理由かもしれません。

しかし、元の城に住むのはなぜ難しかったのでしょうか。城が山頂にあったからなのか?しかし新しく館を築いた場所は、城の二の郭と同じほどの高さで、決して平地ではありません。そもそもこの場所自体も、平地からはずっと登った場所にあります。ここでいう「幼少両子にて本城の住居難被成。」というのは、場所の問題ではなく、城は既に次の島の統治者が住んでいたので、子供達をそこに住まわせることは出来なかったという意味なのだと解釈します。そしてその場所が城を直して住んだ場所ということで直城と呼ばれるようになったということです。平安統がこの世之主由緒書を書いた1850年にはもうそう呼ばれていたということです。

この屋敷跡は、お爺さまの記録によれば後には火神殿内として祀られていたそうです。
いったいどんなお屋敷だったのでしょうか。
このお屋敷は直城の山頂にあったと思われます。その山頂に、以前記事で書いた黄金の石があったそうです。想像ですが、その石が火神として祀られていたのかもしれません。


有難いことに、今は無き幻の直城の丘の写真提供がありました。
いったいどんな丘だったのか、ずっとずっと思い描いていた場所です。
内城の古老の話では、山頂までの道は狭くかなりの急斜面であったといいます。何となくその状況を思わせる写真です。
この山頂に屋敷があったわけですね。
いろいろと想像すると、ロマンが広がります。



丘(青いラインあたり)は木々で覆われています。昭和の戦後直後あたりまでは段々畑になっていたようです。山頂にはサトウキビは植えられていなかったそうです。
こうして木々が生い茂っているということは、戦後に畑として使われなくなったからだと思います。戦後から昭和年間の客土の採取で山を崩すまでの期間の写真だと思われます。大変貴重な1枚です。



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