Vol.236 伊良部島の大世之主(1)

沖縄本島の下の方に宮古島があり、そのすぐ横に宮古市に属した伊良部島があります。

この伊良部島、沖永良部島と名前が少し似ており遠く離れた島ですが、実は古い時代に沖永良部島と関わりがある島でした。

この伊良部島に「佐和田ユークイ」と呼ばれる場所があります。

嵩平（たきびら）御嶽という男神の大世之主を祀った拝所のようですが、何とこの大世之主という人物は、1457年に沖永良部島から渡ってきた人物なのだそうです。

ちなみにユークイ(世乞)とは豊年祈願祭のことです。

10月1日には〈竈（かまど）回り〉といって，火の神をまつったかまどを掃除し，村の頭役が見まわった。伊良部島佐良浜では〈ユークイ(世乞)〉という豊年祈願祭が行われ，神女たちを中心に村の婦人たちがみな参加し，各拝所を踊りながら健康と豊漁を祈願して歩く。

この佐和田のユークイに祀られている大世之主は、島で農業指導をして島を統治したといいます。

この大世之主が伊良部島に渡った1457年というのは、琉球や沖永良部島はどんな状況だったのでしょうか。

まず沖永良部島ですが、北山王の二男であった当家のご先祖様の世之主が自害して、徳之島に避難していた次男が島に戻って大屋子をしていた時代です。世之主自害の時に3歳だったといいますから、仮に北山滅亡時の1416年に3歳だったとすると、1457年には54歳。大屋子として活動できたであろう年齢です。

もしかしたら、その息子が大屋子だった可能性もあります。

琉球の方はどうだったかというと、第一尚氏時代の六代目国王であった尚泰久王の時代です。大世之主といえば、尚泰久王の神号がこれにあたるので、もしかして尚泰久王のことなのではとも考えましたが、彼は1454年には王位に着いていますので違うようです。しかし、世之主と呼ぶ王府の役人は何人もいたようですが、大世之主と呼ばれた人は尚泰久王以外にいるのでしょうか。琉球の国王が大世之主であるのに、同時期に国王と同じ大世之主と呼ばれた別の人がいたなんていうのは少し驚きです。沖永良部島から渡ってきたという伊良部の大世之主は、やはり尚泰久王と何か関わりがあったのかもしれないと思ってしまいます。

宮古島の琉球への入貢時期については、三山統一前の察度王の時代だったようです。この入貢については、以下のエピソードを聞いたことがあります。

宮古島の豪族であった与那覇勢頭豊見親は、琉球王朝の中山に貢を始めたいとの思いから、那覇に行った時に思いがけないことが起きたといいます。
それは、宮古島の言葉が那覇の人たちに全く通じなかったのだそうです。 そのため、宮古島からやってきて琉球国王の察度に会いたかった理由を王朝に伝えることができませんでした。
そこで、与那覇勢頭豊見親は共に那覇に行った者たちの中から聡明な者20名を選び、那覇の言葉を学ばせたといいます。 そして3年後、ついに琉球国王察度に会い、那覇に来た目的について話しをすことが出来きたそうです。
話しを聞いた察度王は大いに喜び、与那覇勢頭豊見親を宮古島の主長に任命しました。
この時より、宮古島は琉球王朝に従い属する関係となり、その後も服属することになりました。

よって、王朝は変わっても尚泰久王の時代も宮古島は琉球王国に属していました。沖永良部島も当然のことながら琉球に属していましたから、大世之主として伊良部島に渡った人は、王府の命によってのことだった可能性があります。

しかし、そもそもなぜ沖永良部島から沖縄本島を超えてその下にある伊良部島に大世之主が渡っていったのか？そこは大きな疑問です。もし王府の命であれば今で言う人事異動だったとは思いますが、農業指導が目的で渡ったのか？

この大世之主は、沖永良部島からダイレクトに伊良部島に渡ったわけではなく、池間島を経て伊良部島へやってきたといいます。

ここは少しポイントかもしれません。

続きは次回に。。。