Aさんの母方の徳之島のご先祖様である尚家ですが、現在も島にはその姓のお宅が数件あるようです。
1879（明治12）年に作成された竿次帳（さおつぎちょう）という資料によると、以下の村に尚姓の家がありました。
ちなみに竿次帳というのは、地租改正のための基礎資料として作成されたものです。全国的には1873（明治6）年から始まっていましたが、鹿児島県は西南戦争のために実施が遅れて明治12～14年に行われたそうで、徳之島の竿次帳も明治12年作成だったようです。
旧土地台帳よりも10数年前に作成されている一番古い土地関係の記録でありますが、宗門人別改帳などが存在しない奄美の島々にとっては、名前の記載がある貴重な資料といえるようです。
・阿権（あごん）村
・犬田布（いぬたぶ）村
・秋徳（あきとく：現在の亀徳）村
・兼久（かねく）村
・瀬滝（せたき）村
これら5つの村に、尚姓の家がありました。
琉球の時代には、例えば王子までは尚姓を名乗りますが、その子供の世代になると向姓を名乗っています。漢字は本家である「尚」から分家という意味で「向」になりますが、読み方は「しょう」のままだったようです。
徳之島にも向姓がありました。
・喜念（きねん）村
・佐弁（さべん）村
・轟（とどろき）村
同一の村に「尚」と「向」の家が無いのが不思議です。徳之島の尚家と向家がどんな繋がりがあるのかも興味深いです。そして、琉球本土のルールから見れば、そもそも徳之島に尚姓があるのが不思議です。
竿次帳にはフリガナがありませんので読み方は不明です。「尚」にしろ「向」にしろ、どのように呼んでいたのか。
Aさんのお話によると、叔母さんから「自分の母は徳之島の”たかし”にお嫁にいった」と聞かれさたそうで、この”たかし”というのは阿権村の尚家のことのようです。「尚」という漢字を書いて「たかし」と読むのだそうです。
他の地区の尚家も全て「たかし」と読むのか？これも興味深いですね。
Aさんの手持ちの家系図のページからご先祖のお名前を辿っていくと、徳之島に1562年に琉球からやってきた首里之主に辿り着くようです。この首里之主には西之世之主という長男と東ケ主という次男がいましたが、Aさんは次男の東ケ主の家系のようです。
徳之島の歴史では、琉球からやってきたという首里之主がいったい誰であったのか？ということは判明していないのですが、Aさんの家系図から見ればそれは尚真王の7男であった尚源道であった可能性があるということですね。
尚源道は後裔なし、葬地不詳ということですので、徳之島に眠っている可能性もあるということです。
いろいろ見ていくと、ロマンが広がってきました。現段階では全てを証明できるものは無く、決して事実ではない部分もあると思いますが、様々な情報を繋ぎ合わせてみていくと、1つの仮説ができたということです。
私の住む町から徳之島は遠すぎて、直接話を聞きに行くことは難しいのですが、1つ朗報がありました。
知人の知人が徳之島出身の方であり、その方が近々島に帰省されるとのこと。しかもどこの地区かは分かりませんが尚姓の方をご存知のようで、もしかしたら何かお話を伺えるかもしれません。
なかなか遠いご先祖様の地です。こうして協力してくださる方に出会えるのは非常に有難いです。
今後の展開に期待したいです。
